第11話 婚約者さま?言ってる意味がわかりません
声のする方を向くと、そこにいたのは
「セシリア!」
セシリア・カーソン男爵令嬢だった。
レナードは嬉しそうにセシリアを迎え入れている。
彼女はキャメル色のストレートな髪をハーフアップにし、パステルイエローから徐々に緑に変わるオフショルのふわふわしたシフォンドレスを着ていた。
セシリアを見て、レナードの衣装に合点がいった。
本来は私の瞳の色である青と彼の瞳の色の黄色を基調とした洋服を着るはずなのに、黄色を基調としつつ、グラデーションで緑色になっているのだ。
セシリアの瞳の色は緑色。
つまり彼女とのペアとして考えられてもおかしくない衣装だ。
私の青はというと、胸元にある青色の花のみ。
こいつは私をどこまでバカにしたら気が済むのかしらね?
レナードの失礼さにイライラしていると『THEあざとい』という出で立ちをしているセシリアが、レナードの腕に腕を組みながら、ドレスを着ていてもわかるくらいの豊満な胸を存分に押し付けて甘えていた。
こんなに大勢の前でベタベタと……
パートナーと登場したばかりの男が別の女といちゃつくとかフツーに考えておかしいってことがわからないわけ!?
女も女で周りに見せつけるように大声で喋ってるし
ほんっっっとーにアホすぎる…
そんなことを思っているとセシリアから声をかけられた。
「あら~?ジュリエットさま、いらっしゃったんですねぇ~?
ぜぇんぜん気づきませんでしたわぁ~♡
アナウンスしてもらえてました~?
ワタクシ、レナードさまのお名前は聞けてたんですよぉ~?
だって早く来ないかなぁって思ってましたもん♡
でも一緒に来たはずのジュリエットさまのお名前は聞こえなかったんですの。不思議ですよねぇ~?」
甘えるような声と無垢ですって顔で、普通に失礼なことしか言ってこない。
一応私のほうが貴族として立場が高いってわかってんのか?この女。
別にレナードのことなんてどーでもいーけど、ジュリエットがバカにされたままで私が黙ってると思うの?
「セシリアさま、こんばんは。私もいるに決まってるじゃないですか~。私はレナードさまの『婚約者』で今宵の『パートナー』ですから」
私の言葉にピクッと眉が動き、不機嫌さをみせるセシリア。
でも私は口撃をやめない。
「アナウンスでも名前呼ばれてましたよ~。
もしかして…セシリアさま、お耳の調子が良くないんですの?
それなら主治医に診せるほうがよろしいですわ。
あ、もし頼るお医者様がいらっしゃらなければ紹介しますので言ってくださいね?
スチュワート子爵家には昔からお世話になっている主治医の先生がいらっしゃいますから。
男爵家だと…いらっしゃらないことが多いって聞きますからねぇ。あ!そーいえば、セシリアさまのパートナーの方ってどちらにいらっしゃいますか?
『わざわざ』ご挨拶にきていただいていますもの。『私たち』も挨拶を返すのが礼儀ですものねぇ?」
パートナーを聞くと、より一層不機嫌さを出すセシリア。
「ワタクシのパートナーはレナー……」
「ジュリエット!セシリアに失礼なことを言うな!お前ごときが偉そうに!!」
セシリアが怒りに任せパートナーの名前を言いかけた瞬間、レナードが口を出してきた。
言ってる意味がわからん
『レナード』って言いたかったんでしょ?
だいたいそのペアルックみたいな衣装でわかるわ
アホめが。
「おっしゃっている意味がわかりかねますわ、レナードさま」
はっきりと伝えると、私の返答が気に入らないようで、さらに怒りをみせたレナードは言い放つ。
「お前がこんなんだから婚約者の俺が恥をかくんだ!」
「私はパートナーにご挨拶がしたいと言っただけですが?それのどこが偉そうで、何がレナードさまに恥をかかせているのか。具体的かつ端的に教えていただけますか?」
笑顔を浮かべながら問い詰めてみた。
なんか苦手だった先輩の詰め方みたいだなぁ~
そんなことを思っているとぐぬぬと言わんばかりに何も言えなくなるレナード。
その様子にセシリアは少したじろいだあと、涙を浮かべ、手で顔を覆いながら言った。
「レナードさま、かわいそう!こんなにもジュリエットさまのことを心配してるのに…。ジュリエットさま!ちゃんとご自身の罪を認めてくださいませ!」
「おっしゃっている意味が分かりませんが?」
本当に意味わかんなすぎて困るんですが??
そうなふうに思っているとセシリアは目尻に涙を浮かべながら私を糾弾してくる。
「レナード様はいつもジュリエット様のワガママにお付き合いしてるんですよ!?人付き合いできないからパーティーにはパートナーとして誘えなかったんですよ?だからワタクシがジュリエット様の代わりを務めていたのです。婚約者なら相手のために何かをしてあげたいって思うのが普通なのに、レナード様に甘えて…!!」
「セシリア…!!」
なぜかよくわからないが、レナードがセシリアを抱きしめて慰めていた。
なんかよくわかんないけど盛り上がってんなぁ~
このまま婚約破棄とかしてくんないかなぁ~
出来事とか破棄までのやり取りは小説の参考になるし…。
ほんとは感情面も参考になればよかったけど、それは無理だしなぁ、絶対。
絶対。
大事なことは2回言っとかないとね
そう思う以外感情が湧いてこなかった。
しかしここが帝室が開催した夜会の会場である。
まわりの貴族たちの反応は様々だ。
「どーゆーこと?」
「レナードさまの婚約者ってセシリアさまじゃないの?いつもお茶会やパーティーに来るときはお二人でいらしてたわよね?」
「え?ワタクシはレナードさまとセシリアさまの仲をジュリエットさまが邪魔してるから相談したいって言われましたわ!」
セシリアの言ってたことを話し、おもしろがる者。そしてーー
「セシリア嬢がかわいそうだ!あんなに可憐な顔に涙を浮かべるなんて…!」
「レナードめ!俺のセシリア嬢に…!!ブツブツ……」
「ジュリエット嬢がいじめているのか!?」
セシリアに下心を抱き、彼女に同情する者。さらにーー
「お、俺はジュリエット嬢があっていると思うが。あんな想いをさせるくらいなら俺が……ゴニョゴニョ…」
「ジュリエットさまってもっと大人しい方だったような気がしてるのですけど…」
「えぇ、昔からおキレイではありましたけど、あんなにはっきり物事をおっしゃる方だったとは……」
私が以前と違うと噂する者。
誰ひとりこの状況を収めようとしていない中、ある声が聞こえてくる。
「これはどういう状況だ?」
その声の主は驚くべき人物だった。




