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ポラリディア - Polaridia  作者: 甲斐田 翔


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002 裏人(ウラリア)

この世界に存在する敵とは一体……

第二話 裏人(ウラリア)


戦闘が始まった。とはいっても猫耳の人物は飛びかかり電気を纏った拳の連打、黒蓮は左の前腕のみですべて受けているだけだが。


(稲妻…?ていうか、触れられてる…!なんでだ!?)


蓮は地面に突っ伏しながら疑問を抱いた。


なぜ触れただけで弾かれる黒蓮の体に攻撃を当てられているのか。


そして攻撃の着弾面から飛び散る青い稲妻は何なのか。


(この世界には、特定のルールがあるのか…?)


蓮はそう思っていた。



「お前ハ今、関係ないダロ!!」


黒蓮は猫耳の人物の猛攻に生まれた一瞬の隙に大きく口を開ける。


途端、巨大な黒い稲妻の咆哮が放たれた。


「に゛やっ!」


両腕でガードしようとしたが間に合わない。


顔面に直撃した猫耳の人物はまるで猫という鳴き声を発して蓮の後方まで飛ばされた。


「一体いくつ攻撃法があるんだよっ!」


蓮は声を荒げて言う。


技が何個あるか計り知れたものではない。


「これハ、こっちの問題ダ!」


そう言いながら黒蓮は変化自在なのか、指先を鋭いナイフのように尖らせてから、超高速でその腕を射出する。


「ケホッ…お前、まだ弱いな」


どこか余裕のある声色だった。


片膝をついていた猫耳の人物は黒蓮の攻撃を低い姿勢で躱し、間合いを詰めながら手を前に合わせるように出す。


すると手と手の間から青い電気が発生し、その電気が一点に集中して次第に形を成してきた。


「長い、槍?」


蓮はたじろぐ。稲妻も放って、なおかつ武器生成もできるときた。


猫耳の人物は腕をかいくぐって黒蓮の前までたどり着くと、頸めがけて槍を突き刺した。


「ガッ」


伸びていた腕は間に合わなかったが、もう片方の腕でガードされた。だが腕もお構いなしに頸ごと貫通して地面に突き刺した。


「とどめだ」


猫耳の人物は左手をグーにして電気を発すると、今度は手のひらから瞬時に鋭い曲線の短剣が生成された。


その短剣を持ち替えて刃を下にし、黒蓮の心臓部を突き刺そうとしたその時。


猫耳の人物は突然振りかざす手を止め、上を見上げた。


「…………。!!!」


すると真上からまたもや真っ黒の何かが猫耳の人物めがけて大剣を振りかざす。猫耳の人物は咄嗟に地面を蹴り、蓮の目の前まで下がって攻撃を回避した。


石畳に振り下ろされたその大剣は地面が爆破したかのような勢いで石が周囲に飛び散る。


「初対面だな。赤葉凛(あかばりん)!!」


長身で右目以外が黒く染まった黒い男は立ち上がり、すかさず凛と呼ばれた猫耳の人物に連続で刃を叩き込む。


「お前にウォレは倒せねぇ!!」


「ぐっ……!」


凛は凄まじいスピードに追いつけず、槍を捨てて電気を纏った拳で軌道を逸らしてどうにか受けている。


一瞬、大剣を殴り当て、地面に大剣が刺さったことにより隙が生まれた。


(いける!)


その間に凛は両拳に鋼鉄のナックルを纏わせ、黒い男の顔めがけて拳を振りかざす。


「……お前、今能力(ちから)使ったな」


黒い男は不敵な笑みを浮かべた。


ドォン!!


次の瞬間、体から波動が放たれた。


「う……!」


またたく間に凛と蓮含め周囲の物体が吹き飛ばされた。


気がつけばそこは動物園の入場門だった。


「がっ。…何だ?あいつは一体何をしたんだ!?」


蓮は状況に追いつけなかった。目視できず、電気でもない。新たな技に余計混乱した。


蓮は痛みながらも顔を上げ、周囲を見渡す。


「あ…」


凛を見つけたが、蓮の左前方、入場門の受付がある建物の壁を突き破って倒れている。


「ま、お前も所詮こんなもんだ」


黒い男は体から黒い電気を放電しながら後方に槍が刺さったままの黒蓮を連れ、凛のもとへ歩いていく。


(まずい!あの人が殺される…!くそっ!オレを守ろうとしなければ…)


蓮は立ち上がれない。負傷の痛みと多大なる絶望感のせいだろう。


「ま、待て…」


手を伸ばして黒い男に呼びかけるが止まらない。



「……ナゼ、他人とアラソウ」


後ろにいた黒蓮は黒い男に問いかける。


「なぜかだって?こいつは一度このフェンシス様の目的を阻害し、()に楯突いたからだ。小童の分際でな」


凛に向かって言い放ち、指を指す。


「なぁてめぇ、ウォレら側につけよ。こういう反抗的なやつを全員駆除するだけさ」


黒い男、フェンシスは一度立ち止まって刺さった槍をひっこ抜きながら言う。


「ガッ……用ガあるのハ、(本体)ダケだ…」


「だと思ったよ。……だが、てめぇはこっち側に必要だ」


少しばかし食い気味でいった直後。


「………!!」


フェンシスは黒蓮に触れる。すると黒蓮はフェンシスのつけていた指輪にみるみる吸い込まれていった。


「………」


少し黙り込んだ後、凛の下へ到着した。


「あとは凛を殺して終いだ。死ね」


フェンシスはゆっくりと大剣を持ち上げ、凛に振りかざす。


(ダメだ、嫌だ。死んだら…!ダメだ!!また目の前で人が死ぬ!無力にただ見ているだけの…)


蓮は地面を殴り、あの日の事故を思い出す。目の前でいなくなる二人、何もわからずただ見ていた赤ん坊の蓮。もうあんなことは経験したくなかった。


「クソ雑魚がぁぁ!」


ビカッ!!!


すると蓮の思いに答えたのか、全身から青白い光が体を包み込む。


「うわっ!何だこれ?」


バチッ、バチバチッと腕から大量の電気が溢れ出る。その電気は次第に両腕を包み、蓮を立ち上がらせることができた。


「チッ。もう覚醒しやがった。……!!てめぇ、この雰囲気……まさか!!」


フェンシスは何かに驚き、凛を仕留めるのを中断して蓮の方へ強歩で向かう。



「オレの腕、どうなって……」


蓮はそう言いつつ腕を上に上げた瞬間。


バァァン!!!


「うわっ!」


指先から眩い光線が飛び出し、フェンシスの左腕に直撃した。


「この感覚……ふっ」


何かを思い出したのか、笑みをこぼしたフェンシスは突然禍々しいオーラを引っ込めた。


領域指定(エリア) 筋力減少(パワーダウン)


瞬間、足元から走った電気が、彼を囲うように半径約十メートルほどの円を地面に描いた。


「え?」


その円の内側に入っていた蓮は途端、膝から崩れ落ち地面に倒れ込んだ。


(なんだ…これ。体に力が…入らない!意識も薄れて……)


蓮の腕の電気も次第に弱まり、気が遠のいていく。


「もう遊ぶのはやめだ。お前を連行する」


フェンシスは蓮に向かって手を伸ばす。


(まず…)


なにか抵抗する間もなく、蓮は気絶した。


ザシュッ!!


なにかモノの切れる音がした。それはフェンシスの手首だった。


「は?」


蓮の目の前には紺色のパーカーを被った小柄な人物が立っていた。


パーカーの人物は左手に持つ体のサイズに合わない大きな剣を使って、手を吹き飛ばした。


痕跡なき紅(ファントムキャ)…凛の気配が薄くなったと思ったらお前か」


「てめぇ、誰だ!」


フェンシスは反対の手で剣を持ち、振りかざす。


「悪いが、こっちは急いでるんだよ」


パーカーの人物はフェンシスの剣を弾いて、腹部に蹴りを食らわせる。


「かはっ」


蹴りを食らったフェンシスは五、六メートルほど吹き飛ばされ、着地した。


「じゃあな」


パーカーの人物はいつの間にか凛を肩に担いでいた。足元にいる蓮も合わせて担ぎ、手に持っていた青っぽくて半透明の謎の結晶を握りつぶした。


すると周囲が発光しだし、三人はその場から消失した。


「待ちやがれっ!」


フェンシスは地面を蹴って飛び込むが間に合わない。逃げるのを許してしまった。


「クソっ!なんであんなやつが転移晶石を持ってるんだよ!」


フェンシスはただ立ち尽くしていた。たった数秒で全員が逃げ切るなんて思いもしなかったからだ。


転移晶石とは、この世界の何処かで稀に見る非常にレアな石のことだ。想像するだけで見たことある場所に転移できる代物だ。


「まぁいい。どうせすぐ見つかる」


フェンシスは落ちた手首を拾い、元の場所にくっつけた。


直後、フェンシスの黒く染まった部分が次第に消えていき、本来の姿が現れた。


毛束感の多いオールバックに暗い雰囲気の目。左耳の付け根あたりに三個のほくろがある。服装もあっていかにも人間と呼べる風格になった。


フェンシスはスマホを取り出し、誰かに電話をかける。


プルルルル……ピコン


「……フェンシスか。さっきオレに似たオーラの裏人(ウラリア)が出現したようだがどうなった?」


通話相手が先に話を切り出した。


「…………その裏人は確保した」


「本体は?」


フェンシスは待ってましたと言わんばかりにその質問を受けてにやりと歯を見せた。


「あんたの弟だ」


通話相手は驚いた後、笑みをこぼしてこう言った。


「ついに来たか…」


――――


「う、うん?」


蓮は目を覚ました。割ときちんとした布団から体を起こし、辺りを見渡す。


「どこだ!?ここ?……確か、黒い男と戦ってて…」


見覚えがあるようなないような丸太が並べられて作られた木造の部屋だった。窓もなく、扉一つだけの小さな空間。明かりも枕元に一つだけ。少し薄暗い。


「痛っ」


よくない動きをしたのか、背中に激痛が走った。そういえば蓮は背中を負傷していた。


蓮は自分の腹を見る。上の服を着ていなかったが包帯で応急処置が施されていた。


「起きたか」


「うわっ!っび、びっくりしたぁ」


色々と考え込んでいたとき、突然少し薄暗くなっていたところにいつの間にか紺色のパーカーの人物が足と腕を組んで座っていた。


蓮はかなり驚いたので思わず体を震わせた。


「だ、誰?」


流石に不審すぎると思った蓮は思わず問いかける。


「……ソードだ」


「…………剣?」


蓮は首をかしげて聞き返す。


「違う。名前だ」


「は、はぁ」


蓮は状況に全く追いつけていなかった。知らない人によくわからない場所。混乱するのは必然だろう。


「……そんなことよりお前、色々と聞きたいことあるだろ。ついてきな」


ソードは立ち上がり、ドアの方へ歩き出す。すると全身とフードの中の物が見えた。


(仮面?)


ソードは大体百五十センチメートルほどの小柄な体格に、左目にバツ、右目に丸の目と横一本の口が描かれた真っ白の仮面を付けていた。


だが感情の整理もできていないので、なんで仮面を付けてるんだろうという疑問を置き去りにして、蓮はまだかすかに痛みを覚える背中をさすりながらソードについていく。


――――


この個室の扉を出るとそこは廊下だった。そのままのらりくらりソードについていき、この大きな建物の大広間に出た。


そこの中心には丸形のテーブルと椅子、暖炉が設置してあり、亜麻色の髪の女性と一本の剣を携えた白髪の老人、そして座ったまま幸せそうに眠っている凛がテーブルを囲むように座っていた。


「あっ起きた?おはよー!」


亜麻色の女性は嬉しそうに微笑み、蓮の元へ来た。


彼女は蓮より少し身長が低く、肩下辺りまである髪を持っていた。ただ、寝起きだったのか髪はクシャクシャだった。


「お、おはようございます(?)」


(誰だよ!しかもどこだよここ!)


蓮はずっと疑問続きだ。


「あ、あのー、ここは一体…」


「まぁ座りなさい。わしが説明しよう」


そう名乗りを上げたのは白髪の老人だった。老人は手でこちらに呼びかける仕草をしていた。


「ん?私たちもう知ってるし聞く必要ある?これ」


「いいからいいから」


興味なさげな亜麻色の女性を抑止するように老人が言う。


蓮は疑問という疑問を一旦押し殺した。そして蓮含め全員は静かに席に腰を下ろす。


「ここにいる者は全員集まったな」


ソードが言う。ソードは足と手を組んでじっとどこか遠くを見つめている。


(……全員癖が強いなー。しっかし、悪い人たちではなさそうだ)


蓮は少し呆れていたが、不思議とこの人たちを信用できそうだと思った。


「コ、コホン。じゃあまず、君は日本人じゃな?」


そう言って蓮を見る。


「そ、そうですけど…じゃあここは日本じゃないってことですか?」


「そうだ。ここは裏層界(りそうかい)といってな、地球とは全くの別世界なんじゃよ」


「………」


蓮は数々の疑問を見た後にしっかりと全て別世界だからという理屈で納得できた。


転移、黒蓮、電気、黒い男。今までの出来事が全部つながったような気がした。


「そうか。オレは転移して……」


(じゃあ正輝も碧もこっちにいる可能性が高い)


この人の言うことが正しければ雷に打たれ、どういうわけか裏層界とやらに転移した。ってことか。


「……わしにも親友がおった。蓮くんと同じように。一緒にこっちに転移したんじゃがやつは裏人(ウラリア)に支配されてしまった…」


老人は自然にまだ聞いたこともない蓮の名前を言い、親友がいることさえも当てた。


「なんで名前……!!」


ひどく驚いた。老人がまるで自分の心の中を読んだような。


「あぁ。心を読んだのもわしの能力じゃ」


(…………追いつけないって!!心を読む!?)


蓮は目を大きく見開いて思わず立ち上がった。


「まぁ、驚くのもわけないな」


ソードが言う。


「…………えっと、じゃあ、その裏人ってやつは何なんですか?」


蓮は二十秒くらい時間を置いてある程度落ち着いた後、質問をする。


「簡潔に言えば人間の裏の感情の実体化で……」


「つまり俺らの()だ」


老人が説明していたところを割って、ソードが言った。




第三話へ続く……!


ご覧いただき誠にありがとうございます。

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