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ポラリディア - Polaridia  作者: 甲斐田 翔


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003 電力のちから

この世界特有の能力…その名は電力!!

第三話 電力のちから


「敵……」


蓮はまだどちらが善なのか悪なのかはっきりしていなかった。


「君はどうしたい?現状は表層界(げんじつ)に戻れる方法は見つかってないが……」


蓮は少し沈黙した後、口を開く。


「オレの親友を探します」


強い眼差しできっぱり言った。


「そうじゃな。分かった」


老人はそう言うと思っていたのか、強く頷く。


「ちょうど明日ここを発つ。ついてくるか?」


少し間を開けて老人は言った。


(置いていったらオレ野垂れ死んじゃいますよ?)


「わっはっはっは!それもそうじゃな」


老人は心を読み取ったのか、高らかに笑った。


「自己紹介しよう。わしは覚楼(さぶろう)。このチームの現副代表じゃ。で、隣のこいつはカルザ。一応のここの代表でわしの昔からの知り合いじゃ」


そう言って覚楼は、飽きたからなのか立ち上がってストレッチをしていた亜麻色の女性を指さした。


「一応って、何?全員まとめ役としてはダメダメだから私が担っただけなのにぃ」


カルザはニヤリと笑みをこぼし、腕を組んで覚楼達を見る。


「うぐ…」


「………」


覚楼もソードも図星だった。


「コホン…実はここにいるメンバーはわしの直感任せの寄せ集めなんじゃよ」


「え?」


そう聞いた蓮は驚いて目が点になった。


「目的は違うけど、皆()()()()関連の問題抱えてるみたいだし、丁度いいかなって」


言いながらカルザはストレッチを続ける。


「えーっと、じゃあこのチームで裏人っていう存在をどうするんです?」


「……容赦なくいたぶるのだ。ムフフフ…」


「おい待て怖い怖い」


蓮はそう聞いたがカルザは一言、不気味に不敵な笑みを浮かべて言った。それに覚楼も驚いた。


「容赦なくいたぶる……」


「ちょっと蓮くんまで!」


覚楼はあたふたしている。


「非合理的だな。即キルしろ」


ずっと黙り込んでいたソードもこの話に反応した。


「はぁ……話を戻そう。わしたちの目的はとある組織を見つけ出すことじゃ」


「組織?」


蓮はまた新たな情報に驚く。


「人間と裏人が手を組んで悪事を働いているらしいけど、詳しくは分からない。私たちまだ捜索中でさ」


カルザがため息をついて言った。


(組織…裏人……??)


やはり蓮は首を傾げた。


(裏人、組織、善悪……あの黒い男とオレに似たやつもその組織だったのか?)


そんなこんなで話していたら、凛の耳がピクリと動いた。


「ん。ふわぁ〜」


凛は突然目が覚め、テーブルから体を起こし、腕を伸ばす。


(本当に猫っぽい…)


蓮は心の中で静かに思った。


凛は赤い髪をしていて付け根は黒のメッシュ。頭頂部の左右に柔い三角の猫耳を生やしている。


さらに猫らしい特徴として、鋭い爪、丸っこい手、猫特有の八重歯、瞳孔があった。


顔立ちは男前、というよりどちらかと言うと中性風で性別は分からない。


「じゃあこれ以上話してもキリがない。今日は一旦ゆっくりするといい。その負傷は完治に三日はかかるぞ」


だが蓮は三日と聞いて少し安心した。もし骨にヒビが入っていたり折れていたら一ヶ月以上ここで寝込むかもしれなかったからだ。


覚楼はそう言って席を立った。同じく、蓮も立ち上がる。


「早く元気になりなよー!」


「が、頑張ります…」


そう言うとカルザはニコっと笑ってそそくさとこの場を後にした。


ソードも席を立ち、「じゃあな。俺は基本馴れ合いはしないタイプだ」と蓮に言った後、大広間の正面玄関らしき場所に向かうと思いきや途中でソードは消えた。


(この人無口だったな…。 !?!?なんで!?)


またもや蓮の目が点になった。


(電気?…瞬間移動なのかこれは?)


ソードがさっき立っていた場所の地面には少し電気が滞留していた。


と、考えていたら蓮の頭から白い電波のようなものが覚楼の頭に向かって飛ぶ。それを受信した覚楼は蓮の思考が頭の中に流れてきた。


「ん?…あぁ!そうじゃった。まだ電力(でんりょく)について教えていなかったわい」


「電力…!」


蓮はよく分かっていないが、内心ワクワクしていた。


(オレの出したあのビームもそれか!)


覚楼は蓮の下へ近寄った。


「凛ー!穴蔵へ行くぞ!蓮もついてくるんじゃ」


――――


蓮達は歩いた。迷宮みたいなおしゃれでありつつ少し古臭い廊下、階段を下っては歩いている。


(ここ来たことあるような…名古屋城か?)


「お、正解じゃ。よく分かったな」


覚楼は蓮の少しの疑問も見逃さないらしい。ちょっとムッとした。


「ねぇ、君。名前は?」


覚楼の少し前を歩いていた凛は後ろの蓮の下へ来る。


「蓮…」


「ふぅん。俺は凛。君、ヒョロいね」


「なっ」


蓮は怒りよりも先に驚いてしまった。ほぼ初めて会話した人(?)にこんなことを言われるとは思うわけがないからだ。


「こういう裏に秘めた感情が多そうなやつほど裏人が生まれやすい。もう手遅れだけど」


蓮の頬に指を指しながらからかうように言う。


「じゃあ、なんで助けたんだよ」


蓮はその言葉を聞いて自分を卑下した。生み出す存在を活かしておく理由がないからだ。


「じっ、じいちゃん命令だ」


凛はどこか嘘っぽく顔をそらして言った。


(じいちゃん?)


――わしのことじゃ。血縁上は違うがな――


疑問を抱いた瞬間、今度は脳内から覚楼の声が聞こえた。


「うわっ!て、テレパシー!?」


思わず声を荒げる。蓮の声に反応した凛はキョトンとしている。覚楼の声は聞こえていないらしい。


――がっはっはっは!やっぱり初めてのリアクションは面白いわい――


――まぁ仲良くしてやってくれ。こいつ、見かけによらず下の方はデカ……――


「蓮。何聞いた」


覚楼が言い切る前に凛は蓮の髪を掴んで聞いた。


「いっいや何もォ!?」


蓮は思わず声が裏返った。


(何をオレに聞かせとるんだジジィ!)


覚楼にとんでもなく強い視線を送る。覚楼は声に出さないように目に手を当てて大爆笑していた。


「このジジィ、俺のろくでもないことしか言わないだろ」


凛はニヤけながら蓮の肩に手をおいて言う。


「ハハハッ。確かに」


「だから何を聞いたんだよ!笑」


蓮は久しぶりに笑ったような気がした。昨日まで絶望に浸っていたあの時を全て忘れ去る程に。


――――


穴蔵に到着した。電気はなく、少し薄暗い。城の石垣の壁に、地面はふかふかの土。どこにでもある普通の穴蔵だ。


天井まで三、四メートルはあり、思ったよりも広く感じる。


「着いたぞ」


「うぉぉ―ここが穴蔵か!」


蓮は興奮して大きな声を上げる。


「名古屋城は日本でも有数の石垣を持つ城なんじゃ。石一つ一つがかなりデカい」


興奮していた所、覚楼が語り始めた。


「四百数十年前、電力も機械もない時代に加藤清正含め多くの人員を使って築かれたと言われている。そんなわけで、この穴蔵はかなり頑丈じゃ。だから戦闘にはちょうどいい」


覚楼はそう言って蓮の後方で指をポキポキと鳴らしている。


「へぇーそんな歴史があったとは…ん?」


蓮は地元民でさえあまり知らないような覚楼の話を聞き入っていた。


「俺はそっちの世界知らないっつ―の」


「そんじゃ、始めっか。蓮も見たほうが早いだろ」


歴史話も終わり、凛が一声かけると凛と覚楼は向かい合って3メートルほど離れた。


そして凛は少し長めの剣を生成し、覚楼に投げ渡した。


覚楼はその剣を構え、凛は拳に電気を纏っていた。


「え?今から何を…」


蓮はそう聞いたが二人から一気に威圧感が増した。両者とも構えに隙がない。


ドォン!!


なぜか戦闘が始まった。凛は拳で覚楼の剣を受ける。その衝撃で穴蔵内に衝撃が広がっていく。


覚楼は凛より少し早く、連撃を繰り出す。この剣捌きはあのはぐれメタルも泣き顔になるほどの高速だった。


「は、速い!!これも電力とやらのおかげなのか?」


だが凛もそれに負けない。うまく拳で軌道をそらし、覚楼に足払いをする。


「うぉっ」


覚楼は体勢を崩し、宙に浮いた。


その間に凛は右手に短剣を生成し、腹部めがけて突き刺そうとする。


(え?それはまずいんじゃ…)


蓮は焦った。そんな事をしたら覚楼が死んでしまうと思ったからだ。


だが覚楼は避ける気はなく、手のひらを凛に近づけた。


ドォン!!


瞬間、凛は五メートル後方に吹き飛んだ。


「がっ、くそっ!」


余裕が生まれた覚楼はクルッと一回転して着地した。


凛は悔しかったのか、吹き飛ばされても懲りずにもう一度攻撃を仕掛ける。


「もう十分じゃろう」


蓮に対してなのか、一言発した覚楼は剣先を地面につけ、低い姿勢で構えを取る。


「ふん!」


「!?剣に…電気!?」


覚楼の腕に電気が伝わっていき、剣にさえも到達した。その時、剣に電気が纏われた。覚楼の放つ電気は白く、異様にきめ細かかった。


「なっ…」


凛がそのことに気づいたときにはもう覚楼に拳を振りかざしている途中だった。だが覚楼は正面から向かってくる凛にそのまま剣を振りかざさなかった。


瞬き一つの間に背後に回り、剣を横に振った。


「後ろじゃ」


「ちっ!」


またもや凛は吹き飛ばされた。今度は石垣に背中を打ち付け、地面に転がり落ちた。


覚楼の放った攻撃からは電気の飛ぶ斬撃が出てきており、石垣を貫通していた。


「…すごい」


蓮は自然に言葉が出てきた。覚楼には漫画キャラで言う、典型的な「普段おちゃらけてるけどめちゃくちゃ強い年食った剣士」という印象を強く受けた。


「くそっ。また負けた!」


凛は何事もなかったかのように普通に起き上がり、悔しそうに石垣を殴る。


「蓮くん。これで電力について大体わかったかね?」


「分かるか!!」


とは言いつつ、蓮は多少理解が深まった。(しかし、両者で共通する電気の能力がない?)


蓮は覚楼を放っておいて凛の場所へ行く。さっきの斬撃のダメージが気になった。


「大丈夫…ってあれ?傷がない?」


「あぁ。あの剣は俺の電力でできている。自分の電気で自分にダメージを与えることはできない」


凛は当然のことのように答えた。


「いや、でも、覚楼さんは電力を纏って…」


凛の電力で生み出された剣に電力を纏って攻撃したらダメージがあるのか。蓮はそう聞きたかった。


「最初から説明しよう。まず生物一体一体には電気が通っておる。そしてその電気には電性(でんせい)という電気固有の特性があるんじゃ」


覚楼は先程まで戦闘していたか分からないくらい冷静に、突然少し難しい説明をし始めた。


「わしの特性は電力で他人の脳内を自分に繋げることじゃ。そして凛は電力の形状変化と硬化。わしの電力は戦闘向きじゃないが…」


「凛はあの瞬間、わしの飛ぶ電撃を硬化で防いだ。つまりノーダメじゃ」


覚楼はさっきの状況を頭に浮かべた。凛はきっちり電力でガードをしていた。


(つまり、どんなものになろうが自分以外の電力に触れたらダメージがあるってことか?電性が違うから…)


「じゃ、じゃあ、オレの電性って…」


蓮はこの話の一連を通してふと思った。自分の特性は何でどう活かせるのか。


「能力の開花には何かしらトリガーがいるが、見た感じもうお前は電力が漏れ出てるな」


凛は普通の人間には見えないような微弱な電力を見た。


「結論から言う。今はまだわからん。そもそも電力のほとんどは口頭で教えられるようなことでもない」


「そうか…」


凛の話を聞いて蓮は少しがっかりした。開花はしているが能力が使えないというのが一番もどかしい。


「結局感覚じゃ。いずれ必ず出し方もこの世界のことも少しずつ理解するわい。今日はもう休んだらいい」


覚楼はこの話に一区切りをつけ、凛に蓮の部屋を案内するように促した。


――――


蓮は凛に案内され、()()の端っこの小部屋に到着した。


「目覚めた時と同じ見た目なんかい」


蓮は頭を手で抑えた。正直、この形の部屋は地面が固くて何かと寒かった。


凛は真っ先に入ってすぐの正面の壁に背中を当て、あぐらをかいて座った。蓮も同じく、隣に座った。


「……り、凛もこの部屋なのか?」


「そうだが、何かあるか?」


「い、いや別に…」


少々空気が悪い。あまり仲が良くない同性なのか分からない人と同じ部屋。覚楼がいたときより会話の数が減った。


時刻は十八時。蓮が目覚めて五時間ほどしか経っていない。


「なぁ、その、その猫耳について聞いてもいいか?」


蓮はずっと気になっていた。現実ではありえない要素の一つとしてずっと頭の中に残っていたからだ。


「俺は父親を探している」


凛は顔を下にして言った。


「百パーセント猫の血が入ってる父親をな」


「……猫耳、かっこいいじゃん。オレなんて何も付いていないんだぜ?」


どこか悔しそうで辛そうな苦い表情を見て、蓮は笑顔で言った。


その発言に凛は思わず顔を上げた。


「オレも目的は人探しだ。手伝うよ」


「……そうか、ありがとう」


凛は蓮の言葉を聞いてか、少し表情が明るくなった。




微弱ながら風が吹いている。窓も隙間もないこの密閉された部屋内にだ。


「!!」


凛は自前の猫肌で風を感知し、耳をピクリと動かし、辺りを見回す。


すると風の通り穴はこの部屋の扉だった。この扉には窓がついており、扉の前には…。




ドォォォン!!!




「…………!!!」




第四話へ続く……!


ご覧いただき誠にありがとうございます。

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