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第78話 耐える走り

真田は最初から速かった。


無理に飛ばしているんじゃない。


それが普通みたいに前へ出る。


鳴海はそこで置いていかれないように、


歯を食いしばった。


ついていく、ではない。


切れすぎない。


最初の百。


その時点で、真田との差はもう見える。


二百。


前との差がさらに開く。


でも、後ろにも落ちない。


鳴海は足が重くなるのを感じながら、


肩だけは上げなかった。


全国だ。


こんなものか、と言われたくなかった。


最後のコーナーで、一校に並ばれる。


踏み返す。


だが、もう一校、外から来る。


伸びが、足りない。


そのまま、わずかにかわされた。


受け渡しでは、


最後方。


鳴海は、歯を食いしばったまま戻ってくる。


倉橋が受ける。


二走で無理にひっくり返しにいけば、


その皺寄せは後ろに来る。


だから、まず崩さない。


倉橋は受けてすぐ、


重心を低くして前を追った。


焦らない。


でも、置いていかない。


前の選手の背中との距離を、


じわじわと削っていく。


派手じゃない。


けれど、全国ではそういう半歩が大きい。


バックストレートで一校との差を縮める。


コーナーでさらに寄る。


最後の直線で、ようやくひとつ拾った。


今の位置は七番手。


最下位を抜け出しただけ。


でも、その一つが、


後ろの区間には重い意味を持つ。


ベンチで西野が息を吐く。


「倉橋、えらい」


遥もうなずく。


「ちゃんとつないだ」


高梨はラップを見ながら言う。


「ここから」


その声と同時に、


井坂が走り出していた。

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