表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/92

第22話 真壁の二百

真壁は、県大会のあとから少しだけ口数が増えた。


機嫌がいいわけではない。


むしろ逆だった。


悔しさがうまく消化できず、黙っていると余計に煮えるから喋っている、そんな感じだった。


放課後、二百メートルのスタート位置から流し終えた真壁が、タオルを肩にかけたまま言う。


「やっぱムカつく」


蓮が隣を歩きながら聞く。


「何がですか」


「全部だよ」


真壁は前を見たままだった。


「県で個人行けなかったのもムカつくし、南関の一覧見たら知らねえ学校が山ほどあるのもムカつくし、そこに東陵が普通にあるのもムカつく」


「……それは分かります」


「で、お前が個人でも行くのもムカつく」


蓮は思わず足を止めた。


真壁はそれを見て、少しだけ笑う。


「勘違いすんなよ。今さらお前が嫌いって話じゃねえ」


「じゃあ、何なんですか」


「置いてかれんのが嫌なんだよ」


真壁の言葉は、いつもまっすぐだった。


「最初は、お前が急に入ってきて、なんでこいつだけって思ってた。でも今は違う。お前が速いのは分かる。分かった上で、こっちが足りてねえのが腹立つ」


蓮は少しだけ答えに困った。


「……すみません」


「だから謝るなって」


真壁が乱暴にタオルを首へ巻き直す。


「謝られると余計ムカつく」


「じゃあ、何て言えばいいんですか」


「何も言わなくていいよ」


真壁はそこでようやく蓮を見る。


「その代わり、南関でちゃんと走れ」


「はい」


「個人でも、マイルでもだ」


その目は怒っているようでいて、怒り切ってはいなかった。


悔しさと焦りと、それでも同じところへ行きたい気持ちが混ざっている。


「一走で押し出すから、お前は三走でちゃんと伸ばせ」


その言い方が、少しだけ嬉しかった。


「……はい」


その横を、西野が用具を抱えて小走りで抜けていく。


その少し後ろから、遥が二人を見て言った。


「なんか、真壁先輩と蓮、ちゃんと先輩後輩っぽくなってきたね」


「どこがだよ」


真壁が即座に返す。


瀬川も後ろから来て、さらっと言った。


「言い方は荒いですけど、前よりずっと分かりやすいと思います」


「お前まで何なんだよ」


「事実です」


真壁が天を仰ぐ。


その横で、蓮は少しだけ笑った。


県を越えても、いきなり強豪校にはなれない。


でも、こういうやり取りが少しずつ噛み合っていくなら、まだ伸びる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ