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マイルリレー【シンクロ】―4人が繋がるとき0.1秒世界が遅れてついてくる―  作者: スドタケ
Season1|ライバル対峙編

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第21話 三歩

その日から、潮見の練習は少し変わった。


量が急に増えたわけではない。


メニューが別物になったわけでもない。


ただ、一本一本の意味が前よりずっとはっきりした。


真壁は一走のスタートから二百まで。


瀬川は受けてからのリズム作り。


蓮は、三走で受けた直後の三歩。


神崎は最後に失わない形。


相沢は走れない代わりに、グラウンドの端に立つ時間が増えた。


「朝倉」


「はい」


「もう一回」


蓮が待機位置に立つ。


瀬川が近づいてきて、バトンを出す。


受ける。


一歩、二歩、三歩。


「違う」


相沢の声が飛ぶ。


蓮が振り返る。


「……どこですか」


「一歩目で、自分の四百に入りすぎてる」


相沢は腕を組んだまま言う。


「受けた瞬間に、お前はもう“朝倉蓮の走り”を始めようとする。でもマイルの三走は、受けた瞬間はまだ前の走りの続きなんだよ」


瀬川が補足する。


「最初の切り替えが早すぎると、受けた流れがそこで一回切れます」


真壁が少し離れた場所から言う。


「じゃあ、どうすりゃいいんすか」


相沢は蓮の足元を指した。


「最初の三歩は、自分の速さじゃなくて“持ってきた速さ”で入れ」


「持ってきた速さ」


蓮が繰り返す。


「そう。お前が作るな。乗れ」


それは神崎の言う


「流れを切るな」


と似ていた。


だが、もっと具体的だった。


受けてからの三歩。


最初の加速。


切り替えの角度。


相沢はそこだけを、何度も見た。


「もう一回」


受ける。


一歩、二歩、三歩。


「まだ早い」


もう一回。


「今のは悪くない」


さらにもう一回。


「朝倉、お前、受けたあとに肩で急ぐ癖あるな」


蓮は息を整えながら答える。


「個人の四百だと、そこから自分で上げるので」


「だからだよ」


相沢の目が鋭くなる。


「一人で勝つ走りと、誰かの続きとして走る走りは違う」


その言葉に、蓮は返事ができなかった。


グラウンドの向こうでは、神崎がハードル間の歩数確認をしている。


真壁は一走のスタートを反復し、瀬川はペース走のあとでも受け渡し位置を見直している。


みんな、自分の走りをしている。


でも、それだけではない。


相沢は最後に、少しだけ声を落とした。


「本当は、そこ、俺もやりたかった」


蓮は顔を上げる。


相沢は前を向いたままだった。


「受けて、流れ乗せて、最後に持ってく形。百の人間にはきついけど、だからこそ面白かったんだよ」


そしてすぐに、いつもの声音に戻る。


「だから半端にやるな」


「……はい」


「預かってるなら、ちゃんと預かれ」


蓮はその言葉に、今までより深くうなずいた。


三歩。


たった三歩。


でもそこに、前の二区間と次の一区間が全部かかっている。


そう思うと、マイルはますます一人では走れない競技に見えた。

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