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マイルリレー【シンクロ】―4人が繋がるとき0.1秒世界が遅れてついてくる―  作者: スドタケ
Season1|ライバル対峙編

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第20話 一覧の名前

エントリー一覧は、種目ごとに名前と学校名が並んだ簡単な紙だった。


だが、それを囲む潮見の視線は、県大会の結果掲示を見るときよりもずっと真剣だった。


神崎が一枚目をホワイトボードに留める。


「男子四百……朝倉、あるな」


真壁が指差す。


「はい」


蓮は短く返した。


自分の名前の横に、いくつもの知らない学校名が並んでいる。


その全部が、県を勝ち抜いてきた相手だ。


「四百ハードル、神崎先輩もありますね」


西野が言う。


「当たり前だ」


神崎はそれだけだった。


瀬川がマイルリレーの欄へ視線を移す。


「……東陵大附属、ありますね」


真壁もすぐに覗き込む。


「あるだろ、そりゃ」


「でも、やっぱり最初に目が行きます」


瀬川の声はいつも通りだったが、その言葉だけ少し硬かった。


蓮もマイルの欄を見る。


東陵大附属。


県大会決勝一着。


今度は、同じ一覧の中に潮見と並んでいる。


「同じ場所に名前があるな」


相沢の声がした。


振り向くと、部室の扉にもたれるようにして立っていた。


左脚のサポーターは、まだ外れていない。


「……はい」


蓮が答えると、相沢は小さくうなずいた。


「でも、同じ紙に書いてあるだけで、同じところにいるわけじゃない」


真壁が腕を組む。


「分かってますよ」


「分かってる顔じゃないから言ってる」


相沢の声は低い。


「県を抜けたくらいで満足してると、南関は一瞬で終わる」


西野が少しだけ背筋を伸ばす。


真壁も言い返さなかった。


そのとき、神崎の視線が一か所で止まった。


「……黒瀬」


「え?」


蓮が聞き返すと、神崎は四百の一覧を指した。


「東陵。一年がいる」


蓮もそこを見る。


黒瀬 東陵大附属 一年


四百にも、マイルにも名前がある。


名前だけなら、前から知っていた。


中学の県通信や記録会の結果で、何度か見たことがある。


同学年で、比較に出されたこともあった。


東陵大附属。


その黒瀬が、県で一着を取ったチームの中にいる。


「一年で、両方ですか」


瀬川が言う。


「はい。しかも東陵で、です」


真壁が舌打ちした。


「感じ悪いな」


「相手は別に、感じ悪いことしてないですよ」


蓮が言うと、真壁が顔をしかめる。


「そういう意味じゃねえよ」


「分かってます」


「分かってねえ顔だな」


そのやり取りを、瀬川が静かに聞いていた。


「でも、少しありがたいです」


「何が」


真壁が聞く。


「一年がいると、同学年だからという言い訳が使えなくなるので」


それは瀬川らしい、冷たいようで正確な言い方だった。


蓮はもう一度、黒瀬の名前を見る。


遠い名前ではなかった。


ずっと前から、どこかで同じ土俵にいた名前だ。


神崎が一覧から目を離さないまま言う。


「南関は、速いだけじゃ残らない」


県大会でも聞いた言葉だった。


だが、今はもっとはっきりした意味を持って胸に入ってくる。


「相手も速い。その上で、どれだけ崩れないかだ」


蓮は無意識に右手を開いた。


県大会決勝、神崎へ渡したときの感覚は、もう残っていない。


なのに、記憶だけが妙にはっきりしている。


一覧の中の名前は、まだ遠い。


けれど、もうただの文字ではなかった。

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