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8話 白覇家と皇家


「あーあ、行っちゃった」

 

 一緒にご飯を食べる仲にせっかくなったのになー。食べたらすぐいなくなるんだもん。

 自分のやりたいことを即行動。そこがあの人のいいところでもあるんだけど。昔から変わらないなぁ。


「お嬢様、お迎えに上がりました。すでに先方はお待ちしております」


「もう?はやいね」


 もう少し待ってくれてもよかったのに。当主ってやりたくないことが多くて困るなぁ。

 

 先代当主がお爺様で今の当主は私。父様は当主になれなかった。

 まあ?単純に闘う才能がなかっただけで父様は商売の才能があったから今の白覇家はお金に困らないんだけども。

 父様は気にしてるようだけど私はあまり気にしてないしありがたい気持ちでいっぱい。


「たしか(すめらぎ)さんだよね?」

 

「はい。皇 (すめらぎ)(みこと)様がお待ちです」


 あの人かー。幼い頃から定期的に会ってるけどいまだに性格が掴みきれないんだよね。

 この時期なら海都祭の護衛依頼とかでしょ。お抱えの特級探索者とかエンキさんに依頼すればいいのになんで私?まあ付き合いは長いけども……。

 

 そんな時間あるなら先輩と屋台で食べ歩きした方が楽しいのに。

 まあわがまま言っても仕方ないか。先輩との話題作りだと思えばやる気も出るでしょ、私。


「あといい加減お嬢様はやめて、もう私は当主だから」

 

「かしこまりました御当主様」


 車はすでに用意されているし準備万端。アトランティスでの交通手段は多くなくほとんどは装甲列車。

 だから道路はいつも空いている。中央街から島の出港場所の港町、富裕層しか入れないエリア。30分ほどで着く。


 日本の家だと一目見てわかる和風の一軒家。立派な瓦の門構えに桜の庭園、枯山水まで拵えてある。

 たまにしか来ないはずなのにこんな家を建ててるんだ。流石支配する側の人間。


「尊さん、いるー?」


「もちろんいるさ、八重」


 黒髪のポニーテール、男性と思うほどの筋肉量、腰には古い見た目の刀を差している。

 女傑、そう呼ばれるだろう人がそこにいた。

 

「いつ見ても凄いですね。探索者になったらどうです?」


「ふ、私も家に進言したのだがな。海都祭が終わればいいと言われたよ」


 珍しい。あの頑固な家が許可を出すなんて。

 白羅家よりも古い歴史を持つ(すめらぎ)家。

 代々政治に進出し絶大な権力を持っている名家。

 白覇家とも仲良くしている。


「それで白覇家当主の私を呼んだ理由は?」


「ああ。思っている通り海都祭で私の護衛だ」


「お抱えの特級探索者でいいのでは?」


「それでも戦力に不安がある。我が家によると祭りで襲撃があるかもとな」


 ……海都祭でテロが?


 ありえないことはないか。世界中が注目するお祭りだし有名人が大勢集まるし。注目度的には確かに効果は見込める。


 でもわざわざこの島でやる必要ある?

 周りは凶暴な海の魔物、島には超人の探索者が何人、何百人もいる。

 こんなところでしないといけないテロってなんだろ?


「いつもより15倍ほど積ませてもらった。嫌とは言わせんよ」


 私の思考を遮るように目の前でお金を積んでいく。純金の山は流石に見た事なくてびっくり!


「え、そんなに。わかりましたよ。引き受けます」


 でも英雄含む国級探索者もいるのにするかなぁ?


「時に八重よ。先ほど隣にいた男はなんだ?」


「え、見てたんですか?」


「島を()ていたら目についてな。ずいぶん気に入っているようだがあの男のどこがいい?」


「え?かっこいいじゃないですか?」


 どこからどうみても普通の一般人。常識もある。なのになぜかブレーキが壊れてこの島にいる。止めても止まらない、強引に進むその理由が気になる。……ただそれだけ。


「ふむ。お前は優秀だが男を見る目だけはないな」


「喧嘩売ってます?買いますよ、今ここで」


「そう剣で威嚇するな。私は一般人だぞ」


「知りませんよそんなこと。護衛の皆さんもいるくせに」


 気配がそこらじゅうにひしめいている。それも特級クラス。姿が見えないなら奇物の能力だ。


「私が言いたいのはだな八重。自分に合った男を見つけろと言っているんだ。例えばそう、エンキとか」


「それは貴方の願望でしょう?美男美女で周りを固めたい尊さん」


 顔面偏差値でしか人を区別しない異端。権力に物を言わせやりたい放題する。と思えば顔にケガをした人を身内に引き込んだり。何をしたいのかよくわからない。


「ふ、それは少し前の私だ。今の私はこの島に来た目的がある。ひとまず海都祭の護衛は頼んだぞ」


「ちゃんとそこはやりますから安心してください」


 気に入らないが依頼はこなす。

 あーあ、先輩と海都祭行きたかったなぁ。



 


「……尊様、お戯れもほどほどに願います」


「ああ、君たちもすまないね」


 上級探索者と特級探索者には壁がある。

 才能、努力、そして運。

 奇物を手に入れるか身体能力が並外れるかで決まる。


「我々では白覇八重を抑えきれないので本当に頼みますからね」


「わかってるよ。でもあの子は軽率に行動しないから大丈夫」


 仮にも当主。怒ったところで出来る事は精々威圧程度しか出来ないからね。


 かわいいかわいい妹分。目に入れても気にならない。あの子に相応しい男は私が選ぶ、私が決める。


「だからお前は邪魔だ、凡夫」


 八重がご熱心になる前に消えてもらうぞ。

 

 ◇


 日本街マンション 自宅

 


「ぶぇっくしょん!!誰か俺を噂してるのか?」


 そんなわけないか。気のせい気のせい。

 ふぅ。流石に食べすぎたな。張り切ってラーメン2杯食べたが腹がはち切れそうなくらいだ。

 しかも八重のやつ自分が食った分も俺に払わせやがって、ラーメン大盛りとトッピングはいい値段するのによ。

 

「にしてもよくあいつ食えたよな」


 白覇家は白八闘法という独自の武術を使い、のし上がってきた武闘派集団だ。

 齢18にして上級探索者になったことからもその強さが窺える。八重は刀を使うがそれは俺の祖父が教えた。


「教えてもらったけど俺は使えなかったしなー」

 

 白八闘法の初歩を八重様直々に指導してもらったけど俺には才能がないらしく苦笑いしていたな。


「まあ使えないならそれは仕方ないよな。他にできる事をやればいいし」


 初歩の技『白纏(はくてん)

 

 これが出来ないと他の技は扱うことが出来ないらしく、目を閉じ自分の周りにオーラを纏わせるという抽象的な技でよくわからなかった。

 

 八重?父親から説明聞く前から出来たって。

 栄八の爺様と同じ天才だと。当主は全ての技を修めないといけないが苦も無く出来たんだと。すごいね。


「にしても青の森のゴブリンねぇ。絶対面倒だよなぁ」


 それよりも問題のゴブリンだ。四腕かつ巨体なら異常個体じゃなく特殊個体だろう。

 わざわざエリアボスに認定されたなら確定と見ていい。能力もおそらく身体強化か森の操作とかだろ。

 

 流石に超越個体ではないだろう。もしそうなら討伐は無理だ。テレビで見た事がある。

 この島が浮上した時に存在していた魔物、水蛸『クラーケン』

 

 アレレベルの相手は奇物持ち、それも国級探索者複数人でギリギリなはず。世界中の戦艦と戦って勝つやつとたかだか森のゴブリンが同じ強さは考えられない。


「となると俺は通常ゴブリンの討伐かな?」

 

 いくら英雄チームに所属しているはいえ俺は弱い。1年間鍛えられたとはいえ技術が身についたとも思えない。

 実際エンキに助けてもらわなかったら巨大魔猪に踏み潰されていたし。

 

 一応『黄金眼』の他の能力もあるが攻撃に使える物は少ないというか無い。全部防御寄りだし。

 次の段階を待って攻撃できる能力に期待するなら良いが。


「そこんところどうなの?」

 

〈ふむ、なんとも言えんな。それより不壊と不変を扱えるようにした方が有益であろう〉


「それもそっか」


 考えても仕方ない。暇な時間があるうちに探索の用意をしておこう。

 いざって時に油断するのはもうごめんだからな。必要な物は探索服に装着しておいて武器には油を塗っておく。


「あ、刃こぼれしてる。最近使いっぱなしだったからな」


 ナタがいくら頑丈とはいえ使い続ければ摩耗するのは当然か。久しぶりにあれやるか。

 

「ナタの厚みよ、増せ」


 手をかざすと傷ついた箇所が修復されていく。

 エルの協力で金属に限り少しだけ修復できるようになった。これのおかげで装備が長持ちするので助かる。


「いつもありがとな」

 

 〈アカリには頑張ってもらわねばいけんからな。この程度は些事よ〉


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