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15話 え?クソ硬


 エンキは見た。木を薙ぎ倒してこちらに向かってくる存在を。

 白覇八重は見た。英雄が使っているその武器を。頭の中はハテナで埋め尽くされていた。

 アシュラは思った。餌になる下等な猿とはそこまでバカなのかと。


「「「は?」」」


 英雄の手には人の形をしたモノ。だがそれは生きている人間のようにも見える。むしろ知った顔ですらある。それが余計に頭を混乱させる。全員の思考はフリーズした。


「探索者二名とデカゴブリン発見! クロセ行くわよ!」

 

「おう、準備オーケーだ!」

 

「目標アシュラ。ぜあぁぁあ!!!」


 ボケっとしてるアシュラに向かって勢いよく放たれる黒瀬。くるくる回りながら高速で回転し風を切りながらアシュラの鳩尾のあたり、一番嫌なところにヒット。


「ギ、ギャブゥゥゥ!?」


「く、首が、イテェ……」


 突然の出来事に白目を剥きながらアシュラと黒瀬灯は一緒に後ろへ吹っ飛んでいく。勢いが止まったのは木々を数十本破壊し終わったあとだった。


「エンキにこっちは……白覇八重ね。大丈夫かしら?」

 

「僕は大丈夫だけど八重ちゃんが矢に刺された。麻痺毒もあるし撤退するよ」

 

「そんなエンキさん!私はまだ」

 

「ダメだ。今の君はわがままな足手纏い。君もわかっているだろう?」

 

「…………はい。撤退します」


 毒が全身に回ったのか体のバランスがうまくとれない。先輩の戦闘が見れるかもと思ったがそこは探索者、リスクを考え名残惜しいが帰ることに決めた。


 エンキは八重や他の探索者を救助して消耗が激しい。神秘剣は攻撃、回復、防御となんでもできる優秀な奇物だが使い過ぎれば無視できない疲労が残る。

 そんな状態でアシュラと接敵し限界まで戦闘した現在の身体状態は想像に難しくないだろう。


「援護はいる?」

 

「そこまで面倒はかけないよ。ふぅ、少し回復したから大丈夫」

 

「そ、ならいいわ。草原に他のチームがいるから私たちが来た道を頼りに合流しなさい」

 

「オルザリアさん、ありがとう」


 さて、私も行きますか。アシュラ? エリアボスにしては弱い感じがするけどどうだろ?

 まあ戦えば分かるか。

 吹っ飛んだ方向に歩いていく。英雄らしく自信満々に勇敢に。


 

 ◇


 

「おえええええええ」


 目がまだ回る。どんだけ回転させたんだあの女!二日酔いの頭が痛いのを数倍にした感じだ。

 俺がぶつかったアシュラは体を丸めてうずくまって体中から脂汗を流し苦悶の表情を浮かべている。

 見ているこっちが悪い気がする。いや同情の余地はないんだけど。


「不変。……よし、問題なし!レフィが来る前に倒すとするか」


 今がチャンスだ。

 俺よりもでかいゴブリンとか始めて見る。すげぇ強そうだが首がガラ空きだ。ナタで思いっきりやろ!

 

「せーのっ!!」

 

 ガキンッ?


 あれ? おかしいな? クソ硬い金属音がする?

 あ、動く。離れないと。お、足が掴まれ!?


「ギ、ギヒャ……ヒャー!!!」

 

「ふ、不壊!!」


 アシュラに投げられるがなんとか発動できた。レフィ程ではないがまた木に叩きつけられた。痛みで気絶しそうになるが舌を噛み、きつけにする。

 アシュラは結構痛そうにしていたがもう回復している。速すぎないか? ゴブリンの回復力にしては違和感が残る。こいつの異常個体としての特性か?


「ゲフッ、オマエコロス! クウクウクウ!!」


 ぽいっと何かを捨てている。瓶のような……再生剤か!? 俺らの道具も使えるのかー。

 これ以上成長したらマズイな。ここで止めないと。


「レフィが来るまでやるぞ! エル!」

 

〈よいぞ。サポートしてやる、アカリ〉


 青狼のナイフと腕についている盾、魔鉄のナタと黄金眼などが今使える武器だ。

 対してアシュラは特殊個体としての腕の増加に身体能力の向上、探索者から奪った大剣と再生剤。


「こい! デカゴブリンが!!」


 奴が血眼でこちらに向かってきた。何人も殺しただけのことはある。目で追うのがやっとのスピードで、もう目の前に……


「バカが!」

 

〈次、横振りからの足で目潰しだ〉


 アドバイス通りにしゃがむ。からのかかってくる土を腕でガードする。そのままナイフで腕を貫通するように全力で突く。


「ギィ……? ナンダオマエ? ヨワイのにツヨイ?」

 

「あ? マジで全然刺さらん。お前エリアボスか? ほんとは赤の森の魔物とか言わない?」

 

 同じ青の森の魔物武器ですら効かないとかマジ? 青狼の牙、魔鉄を簡単に切れる代物だぞ!?


 〈ふむ。アカリ、目を使え〉


 黄金眼を使えって?最近使わなくても問題なかったが強敵なら使ったほうがいいか。

 こっちを警戒してるっぽいしその隙にやるか。


「黄金眼、開眼」

 

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