14話 進め!我らの棍棒
「あークソ痛ぇ。少しは加減してくれ」
「ごめんなさい。はしゃいじゃった。壊れないから思いっきり振っていたわ」
でもおかげで緑の森は抜けることが出来たのでヨシ!
アシュラがいるとされる青の森に着いたがゴブリンは目視できる範囲にはいないな。
やっぱりさっきの轟音で警戒しているのか?動物や植物も心なしか減っている気もする。
あ、森の植物は二足歩行します。
「えい」
指を銃のように見立てて撃つ動作をレフィがしている。木の上?に狙いを定めている。
それを何回か繰り返している。
「なにかいたのか?」
「ええ、ちゃんと見られているわね。落ちてくるわよ」
ぼとっ。ゴブリンが落ちてきた!?
眉間に穴が空いていて死んでいる。こいつ……
「探索者の装備を着てやがる。まじかよ」
「情報通りね。つまりここからが本番ってこと」
『黄金眼』発動
木の上をよく見るとあちこちにゴブリンがいる。その全てが弓で狙いを定めている。気づくのが遅かったら蜂の巣にされていたな。
「レフィ、俺の後ろに」
「少し準備するわ。防御よろしく!」
水をうねうね動かして何かしている。
とりあえず守って耐えるか。
小盾を装備して体を大きく広げる。
「不壊ッ!」
動けない代わりに絶大な防御力を誇る能力。痛みは気合いでカバーする。
直後に矢が四方八方から飛んでくる。矢には紫色の液体やら黄色の液体が塗られており、見た目からして毒か麻痺だとわかる。
いてぇ。針が刺さるような感覚だ。
気持ち悪い。
不壊で刺さらないからよかったもののこれだから森のゴブリンは嫌なんだ。狡賢く厄介なくせに素材は利用しづらい。しかも複数で行動するから驕るとすぐにやられる。
「OKよ、クロセ。生成、水弾」
レフィの準備が出来たようだ。見ると水で出来た銃弾が宙に浮いている。それも無数にある。
「標敵固定、発射!!!」
無数の水弾がいたるところに発射され矢を放ったゴブリンの心臓、頭に命中する。そこらへんの草や木にも貫通した穴が出来ていく。周辺一帯はひどい有様だ。
即死したのかボトボトとゴブリンが木から落ちてきた。
すげぇこんなこともできたのか。
〈おい、急がなくていいのか?〉
「レフィ急ごう!またアレでいいから!」
「わかったわ!もう少し耐えてて!」
また俺が武器になる。手をクロスにし目を閉じて足を掴まれる。
「あは、あはは、あはははは!!!」
英雄がちょっとおかしくなった気がするが大丈夫だろうか。神秘に触れすぎたか?
まあいいか。今行くぞ!エンキ!
◇
「ぐっ……はぁはぁ……」
「エンキさん!もういいです貴方なら逃げれますよね?私のことはいいですから!」
「それだと灯が悲しむだろう?僕も後輩が死ぬのは許せないよ」
青の森の奥に探索者はいた。白覇八重は足に矢が刺さっていて動けない。土御門エンキは八重を守るように剣で結界を張っているがそれも限界。
アシュラは敢えて八重を狙いエンキを消耗させようとしていた。エンキの手にある剣を手に入れるため。
「神秘剣、と言ったカ。オレ、ソレホシイ」
「は、君には無理だよ。それにあげる気もない」
「オマエ死ねば使える。それまで待てばイイ」
まいったな。神秘剣はもう少ししか持たないし、翡翠根を使おうにもこの状況では使えない。
「困ったね。打つ手がなくなった」
「私がこのゴブリンを殺すので時間稼ぎをお願いします。白纏!!!」
八重ちゃんが覚悟を決めて戦おうとしている。足に矢が刺さって動けないはずなのに無理やり動かしている。一歩進むたびに激痛が走るはずなのに。
……僕も覚悟を決めるか。
「神秘の剣よ!今一度僕に力を」
ここで解放する。時間はまだある。ならこいつだけでも倒さないと。体を神秘で強化、力が漲っていく。
「翡翠根よ、絡み付け!」
部下ゴブリン程度では解けない木の根。出力が上がっている今なら付近全ては僕の範囲内だ。
「八重ちゃん、援護する!」
「助か、りま、すっ!」
大鬼と白姫が殺し合っている。大鬼は4本の腕に大剣のような大きい武器を振り回し周囲を破壊しながら攻撃を繰り出していく。白姫は武器の軌道を読み、時には拳で時には刀で受け流し最小限の動きで躱しながら近づいていく。
「そこ!!」
大鬼の全身に木の根が絡みつく。さっきとは違い強靭でしなやかで濃い緑色の根。確実に動きを封じれるように僕の力をかなり込めた。
が、大鬼は僕の予想よりも強くあと数秒で拘束が解ける。だが足りる。
「いきます!白八闘法」
大鬼の目の前に彼女が着いた。嵐のような剣戟を縫い進み躍り出た。
刀を仕舞い体を低い体勢、目を閉じ無防備のように見える。そう見えるほど集中し確実に放つつもりだ。
「奥義『神威』」
すぐに目を開け、同時に刀を抜刀し腰から肩にかけて切り結んだ。上級探索者とは思えない身体能力と技術。日本を代表する武闘家の当主。
大鬼の体はザックリと斬り裂かれ血が噴き出している。肉が断ち切られ骨が見えるほどの大切断。失血多量ででそのまま死ぬだろう。
「ふぅぅー、やっば!きつー!!」
「八重ちゃん、おつかれさま」
「エンキさん、おつか…れ、いたた……」
どさっと倒れる。無理もない。脚を怪我しながらの戦闘、白覇家の技を使ったとはいえ限度がある。
とはいえ無事に倒せたし十分だろう。
今回でこの子は特級に昇格するだろうし国級もそのうちなれるだろう。強者特有の感覚がこの子にはある。
僕もあまり動けない。少し休息を取ってから昇降機に向かおう。
「少しここで休んでから出口に向かおうか。大穴に異常事態が起きている。協会に報告しないと」
「そうですね。先輩にも会いたいです……し……」
どうしたんだ?言葉に詰まるような事でもないはずだけど……。
おかしい。大鬼の気配が、ある?いや生きている筈がない。
「……え?」
「まさか……うそだよね?」
傷が治っている。ザックリ斬られた傷跡がジュウジュウ音を立てながら再生している。特殊個体だとしてもそこまでの再生力があるわけない。
青ゴブリンの特殊個体だとしても図体がデカいことから能力は全身強化で間違いない。まさか……2つ持ち?
緑の森のエリアボス「オロチ」に近しい再生力だ。………まて、探索者の服、傷の再生、武器の利用?
「まさか再生剤をッ!わかるのか!」
「ギギ、何度もオレミタ。使い方覚えタ。ギヒャ!!」
最悪だ。魔物がそれも使える知能があるなんて。分が悪すぎる。消耗した今、勝つのは難しい。こちらの再生剤はすでに他の探索者に使ってしまった。
「オマエから!ギヒャヒャ!!」
「神秘よ、我らを……っ」
守りたまえ。さっきよりも弱々しい結界が展開される。今にも壊れそうで頼りない。人1人守るので精一杯、何が国級探索者だ。
「……大丈夫ですよ。エンキさん聞こえませんか?」
「ん、この音は」
遠くからボンッボンッ吹き飛ばす音が聞こえる。間違いなく此処に進んでいるようだ。
魔物か?探索者か?
「ナンダ!?ギギギ……」
少なくとも大鬼の味方ではないようだ。ならまだ機はある。できれば探索者だとありがたい。
「まだ追いつけませんが今は頼みます。英雄」
「わかるのかい?」
「はい。忌々しいですが英雄と一緒に先輩の匂いがします。……チッ」
…………八重ちゃんって、もしかして性格が悪い子だったりするのかい?




