10話 青の森会議
「ふぁーねむー」
どうも、眠りまなこで朝メシをつくってる灯です。今日は海米と味噌汁、兎肉の照り焼きをいただきます。
土地の開発でダンジョンにあった稲の栽培に成功。そのおかげで日本人になくてはならない米を食べられるようになりました。
不思議なことに海水でも育つ品種らしく他の野菜なんかも同様らしい。
海水で育つ米、海米。安直な名前だが覚えやすい。
「それもこれもエンキのおかげだな」
日本の国級探索者が強いこと、奇物の翡翠根が植物操作出来たこと。あと食物研究者に日本人が多かったことも関係していたらしい。米の生産は割と手広くしてもらえている。
食に関しては世界随一の国、日本。
「ありがたいことだ。偉人たちに感謝」
俺たちが探索している間にも研究は進むのだろう。確か今は海の魔物を家畜化させるとかニュースでやってた気が。流石にタイラントシャークとかカジキとかは無理だろうしトビトビウオみたいなやつだろう。
「朝メシ食いながらニュースでも見るか」
いつもは見ないチャンネルにしてみよ。ダンジョンの情報も重要だが日本の世情の情報も仕入れないと時代についていけないからな。
げっ、タイミング悪い。嫌いな政治家が出てやがる。
『探索者は即刻全員捕まえた方がいいでしょうが!あんな野蛮で暴力的なのは時代遅れ!深淵の大穴?名前は立派ですがね!あんなものは軍隊を派遣すれば解決でしょう!』
この令和の時代に熱意のある政治家ってまだいるんだ。勢いは好きなんだがやってる事が毎回ズレてるんだよなぁ。
『あのですね、貴方はご自分が何を言っているかわかってますか?軍隊を派遣する?どこの国がどのくらい出すと思うんですか?』
『アメリカ、ドイツ、中国、そして日本。世界の主力が集まり軍隊を送れば簡単に魔物など処理できるでしょうが!!そんなこともわからないとは』
『政治家なのに情報を知らないんですか。ああ、だから引退されたんですか。ニュースでも結構な話題だったんですけどね。……全滅ですよ』
『はぁ?何が全滅したと?』
『だ、か、ら!!貴方の言ったことはもうやったんです!世界各国が軍隊を派遣したんです!結果は軍艦数隻を残して全滅したと言っているんです!本当に知らないんですね!』
『い、いやいや。そんなわけないだろう。だいいち魔物ごとき銃で簡単に……』
『……まさかあの映像すら見てないと?そこまで考えなしだったのか』
あ、クラーケンの映像が出て来た。いつ見てもデッケェ……。
『なんだこの化け物は!?これも魔物だと!?ありえない!』
『そのありえないことが起きたんです!そして魔物を討伐したのが今話題の英雄レフィ・ラピス・オルザリアと呼ばれる人物です』
番組の空気は元政治家のせいでキンキンに冷えてるだろうな。テレビでもネットでも英雄やらクラーケンの話題は常に出てるんだけどな。
知らないとか世間知らずは世間知らずか。
いやーなかなか見入ってしまった。少し遅れるがまあ大丈夫だろ。
◇
探索協会 大会議室
「クロセー、こっちこっちー」
「レフィおはよう」
協会に呼び出されたので念のため装備を着込んで来た。珍しく端末に緊急のお知らせが来ていたからだ。
それだけ緊急事態が起きているとレフィは言った。
「アーヴァとシルベストは?」
「もう少しで来るって、まあ急だったし他の人もまだ来てないわよ」
今日呼ばれたのは主に上級、特級、国級探索者だ。
俺はまだ中級なのだが英雄のチームに所属してるので許されている。
「魔笛」に「騎士」、「君主」、「竜狩り」までも来ているようだ。
全員が国級探索者であり英雄に一歩足を踏み入れている強者の中の強者。半分人間を辞めているせいなのか見る人によっては化け物と思うほどの圧倒的威圧感。
「なんかピリピリしてない?そんなにヤバい案件なのか?」
「んー、みんなプライド高いから牽制してるんじゃない?仲悪い国とかあるし」
……探索者の階級が上の奴らほど我が強い。つまりしぶとく生き残るってことだ。
性格に難があるといってもいい。
メリス曰く、ダンジョンはそういう奴に力を与える傾向にある、と推測している。
ろくでもねえ。
奇物は魔物から出て来ることもあるし、なんでもないその辺の土の中に埋まっていることもある。
「私に威圧しても意味ないけどね!1番強いし」
うぇ!?煽るのやめてもらえます!?
上級の人とか中級の俺にはキツいんだがこの空気!?
「オイオイ、オイ!そんなつもりは俺っちにはねぇよ?国からもアンタには敵対すんなって言われてるしヨォ?」
近くにいるヘラヘラとした探索者が話しかけてきた。歳をとっているが見ただけでわかる筋肉の厚み。
腰には明らかに場違いなカラフルな笛が身につけてる。
そして人を騙してそうな悪どい顔の探索者。
「あら、ヘルグリオじゃない。貴方がいるなら少しは楽できそうね」
「国から言われていてナァ。いくら青のボスゴブでもデカヘビより簡単だろ」
「魔笛」のヘルグリオ。
国級探索者の1人であり奇物持ち。
名前の通り笛を使い戦う。
何度か一緒に潜ることもあり仲は悪くない。
「そうかしら?まあアレに比べれば人型なぶんやりやすいかも?」
「だろ?俺っちが援護すれば楽勝ヨォ!」
実際問題そこまで悲観する事ではない。巨大で不死に近い再生能力を持つ大蛇より人と同じ大きさで腕が増えただけのゴブリン。
どちらが怖いかは明白だ。
それに今は大蛇の素材から再生能力を研究し作られた「再生剤」がある。
再生剤のおかげで死亡率は激減し、探索は進みやすくなった。
流石に胴体が真っ二つになるような重傷は治せない。でも国級探索者には強力な再生剤を持っているとか……?
ちなみにメリス・アーヴァ先生が作りました。ピースしている姿が目に浮かぶ。
「すまない、遅れた。最近研究が立て込んでいてね」
「無理矢理連れてきたぞー」
2人も合流したようだ。
他の探索者も集まってきているしそろそろか。
「メリー遅い」
「ごめんレフィ。でもようやく完成しそうなんだ。魔鉄熊との戦闘データで改良したグローブが!まあ冷却機構に難があったが何とかクリアできそうだし」
「博士、それ以上は」
……なかなか興味深いものを作っているようだが周りも聞き耳を立てている。
シルベストに言われようやくストップした。
「む?私としたことが浮かれていたよ。シルありがとう」
今日は自分で人体実験をしていないだと!?
いつもなら毒物を摂取しているアーヴァが!?
「えー、マイクテストーマイクテストー。よろしいですか、よろしいですね」
壇上にいつのまにか人が立っている。
白い神父服に無表情な顔、だが声色は楽しそうな声。
若めの顔だが初めて見る顔だ。
あんなやつ居たっけ?
だが他の探索者はそいつを見た途端にザワザワしだす。
「オイあいつって表に出てくんのか!?」
「……思ったよりヤバいのかしら」
「誰だあれ?」「初めて見る顔だな?」「神父?なぜ?」
国級探索者は顔をこわばらせている。
レフィが警戒するほどか。
嫌な予感は当たるなー。
「はい。これから三原色大森林青色のエリアボスについての説明を行います」
「私のことを知らない人もいるようですので簡単に自己紹介をしましょう。私はラーチェス、探索者協会所属執行官第2位、ラーチェスと申します」
「以後よろしくお願いしますね?」




