4.復讐
「…復讐?そりゃあチャンスがあるならしたいですよ。俺のことを見ているだけで、何もしようとしなかった屑どもにも、この仕組みを知っていて、同行しながらも何も言わなかったあのゴミ共にも、僕は何も看過することは出来ない。俺は許せない。」
壊れた瞳で仁は答えた。
「そうか。では、お前の意思を尊重してこの能力を教えよう。」
時渡り:1000000ポイント
こう表示されたディスプレイを、何かにすがるように眺めている仁に、ユートはゆっくりと説明し始めた。
「この能力は文字通り、時間を渡る能力だ。タイムトラベルが出来るようになる。
この力を使えば、600年前の世界に戻れば、お前はお前を殺した奴に会えるだろう。俺が言えるのはそこまでだ。あとはお前が考えてポイントを使うか考えろ。」
「決まっています。」
そう言って、ポイントを迷いなく“時渡り”に使う仁
「自分の元いた世界に帰ることも出来るぞ?それでもこの能力を選ぶのか?」
そのユートの言葉に、仁はこう返した。
「多分ですけど、あの忌々しい転移門に、この能力を噛ませれば帰れると思うのでご心配無く。あの世界を完膚無きまでに壊して、僕と同じ人間が二度と現れないようにして、僕だけ帰りますよ。
そうすれば、全てが丸ーく収まって、僕の心は多分、元どおりになるはずですから。」
そう言いながら、「逆行:術式」という能力を指差して、効果も見ずに取得した。
この能力は、「対象のあらゆる魔術や錬金術などの結果を“逆にする”」という能力である。
石屑から金が出来る術なら、金が石屑になり
人を蘇らせる魔術なら人が死ぬ。
つまり、人を降ろす術であれば人をあげることになるのだ。
「なるほど、考えたな。で、残りの3000ポイントはどうする?」
なんだか自分まで雰囲気に飲まれつつあるユートは、淡々と告げる。
「あとはこれを下さい。」
生体保存:極
これは生きている者が“いかなる状況であっても”死なない状態に調整出来る能力だ。
一見、アズモとエルミナが持っている“峰打ちの極意”と似た能力だが、その実は異なる。
峰打ちの極意は、相手を“殺さないように殴る”能力である。
対して、この“生体保存:極”は、能力の対象になった者が、死ぬまで痛めつけても“死ななくなる”。
舌を噛み切ろうが首を狩られようが死ぬことは無くなる。
人体実験等に向いた能力である。
「そんな能力なんのために…って分かったわ、トイレで吐いて来てもいい?」
今までの状況含め限界だったユートは、そんなことを冗談交じりに言った。
「ダメです、もう少しで終わりますからちょっと待ってください。」
冗談が通じたかは分からないが、仁はそうユートに返した。
「わーったよ…これでポイントは2800、異能あと二つぐらいと能力上げでちょうどいい感じだろうな。」
その言葉を聞くなり、今度は戦闘関連の能力二つをピックする仁
鋸使い
ノコギリの扱いがとても上手になる。
薬師の極意
薬の調合技術が上がる。
拷問官の様な選択であったが、多分彼は“相手を痛めつけるのに”適した方法で、これを使うのであろう。
残った2400ポイントは全てパラメータに使うようだ。
そうして、異例の速さでステータスが決まった。
ジン:男性
境遇:村人
レベル:215
力:10750 平均能力値:2 変動影響:3
魔力:10750 平均能力値:1 変動影響:3
体力:10750 平均能力値:2 変動影響:3
素早さ:10750 平均能力値:2 変動影響:3
運:10750 平均能力値:1 変動影響:2
異能
時渡り
逆行:術式
生体保存:極
鋸使い
薬師の極意
まずユートの目を引いたのが、変動影響の極端な少なさである。
今まで気づいていた情報の中で、「レベルは世界の能力変異に対して、影響が無い。」というものがあり、当然それを仁にも伝えた。
それを聞いた仁は“にやり”と笑い、ここに来て一番嬉しそうな顔で、パラメータを弄りはじめた。
そうして、試行錯誤を繰り返した結果、「これが最良の結果である。」と言った顔で、このパラメータをユートに見せた。
多分彼は、変わらぬ彼らに絶対の絶望として君臨し、世界の望みを完全に断つことが目標なのだろう。
そのための所謂“詰み状況”を、転生の段階で彼は作ってしまった。
ちなみに、彼が倒した中で“邪神”と呼ばれる者の能力は平均で300ほど
それを考えると、過剰なまでの能力である。
もう、彼の復讐を止める人間はあの世界に誰も存在しないこととなった。
「やることがえげつねえな。」
「はい、復讐ですから。」
にこやかに仁はそう言った。
彼の復讐は、この時点でもう始まっていたのだ。
なんか暗めーな話が続きますが、実はこの章もうちょいで終わります。




