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17.二人の三日間

こうして、二人の出発の日付が決まり、あとはその日を酒場で過ごして待つだけとなった。

その間、ユートはエルミナとアズモから戦いの手解きを何度か受け、飯を食って寝る生活を繰り返していた。


トレース技能による上位技術者の戦闘技術のラーニングは、相手の癖を読むことは可能だが、引き出しの数で勝る相手の攻撃をすべて防ぐことが前提の戦法となるため、彼らのような"掠め手"も含めた戦術を持った者との戦いには、単純な技量がユートには圧倒的に足りなかった。


そのため、二人に教えを請うたところ、快諾してくれたため、この三日間を"ユート強化日間"とした。


もともとの戦闘センスはエルミナとアズモが言ったとおりよかったらしく、トレースに頼らない戦いで、初見となる攻撃への防御技能・逆に相手の精神的・肉体的死角からの攻撃といった、"そもそも異能を扱うために認識する必要がある行動"に対する錬度は見違えるものとなった。


神であるユートは実質死ぬことはないが、これから来る者への異能の使い方や、自分以上の相手との戦い方といった、「能力として看過できない部分 ポイント外でカバー出来る技術」についてを教えられるのではないか、と考え、この強化日間を企画したが、結果はとても良いものとなったと感じていた。


------------


そして、出発前日の昼。


エルミナの首元に剣を突きつけ、勝ち誇った顔のユートが居た。


「ありがとう、エルミナ。おかげでここまで強くなれた。」


そういいながら、ユートは剣を鞘にしまった。


「…全く、筋がいいとは言ったが、まさか三日で私と渡り合えるようになるとはな。

 今までの剣に生きていた時間を返してくれといいたくなる。」


と、少しいじけながらエルミナは言う


「エルミナ、それは違う。俺は三日間ずーっとつきっきりで、エルミナとアズモ二人の動きをトレース技能使って盗ませてもらったんだよ。そこが9.9999割って感じだから、エルミナ自体の錬度は、それがなきゃ俺ぁ100年あっても追いつけねえよ。」


ユートは、エルミナに正直な感想を告げた。


「だが、初見の奇策がきちんと奇策になっているのは見事だと思うぞ?これまでユート殿が"奇策"と思って繰り出した行動は"只の無駄"であったり"無謀なだけの策"であったりだったからな。

 そこの勘が常人より飲み込みが数倍よかった。本来なら年単位の修行と実践を経て得るようなものだからな。」


「またずいぶんはっきりと言ってくれちゃって・・・まあ世界最強の人と組み手してくれって言ってるようなもんだから、ある意味スパルタ的にそこも鍛えられたんだろうな。」


そんなやり取りを二人がしていると、アズモが割り込んできた。


「よし、では最後は我との戦いだな!今日こそ我に一撃でも届かせて見せよ!我が弟子のユートよ!」


「おう!行くぜ!」


-------------------------


「だー!負けた!」


「当たり前だ。我を誰だと思っておる。」


「エルミナのときも結構まぐれ勝ちって感じだったから、やっぱり実力はこんぐらい開いてるんだろうな。」


「と言ってもユートは本気を出していないのだろう?我らに力を合わせて戦っていると言っていたではないか。」


と、アズモはユートの"ステータス合わせ"について言及してきた。


「あのな?借り物の力で威張って"じゃあ・・・本気出すか!"とか言ってんのすっげーダセーとおもわねえ?だからこれは俺の力が及ばなくて負けたの!ほんとだったらお前らと同条件にしてることすらおかしいんだからな?」


「そう卑屈になることもあるまい。お主は初めに言ったとおり、中々に筋がいい。鍛えれば追々我をも超えるかもしれん逸材よ。自信を持つがいい。


それに、かっこよさというものさしで戦いを測るのは、それこそ力に驕った者のエゴイズムであるぞ?本来は戦いに美醜など存在せぬ。


勝者は生き、敗者は斃れる。ここに余計な感情を挟めるのは、本当に余裕のある者だけだ。」


アズモのもっともな言に、ユートは項垂れた。


「…確かにそうだな、すまん。」


「あーもう!いちいち凹むでない!筋がいいのは本当と褒めておろうに!」


アズモがそう言った後、こう提案してきた。


「、我と本気で立ち会ってみぬか?峰打ちの極意も捨て去って、本気の仕合を」


「なにいってんだよ、そんなん勝負になるわけねえだろ。」


「そうだとしても、だ。我が戦いたいのだ。これでも我は戦いに生きた身でな。目の前に強大な力を持った者が居れば心が沸くのだ。だから、貴様の本気と立ち会いたい。」


「…そうか。」


そう言ったユートは、アズモが知(・)覚(・)で(・)き(・)な(・)い(・)は(・)ず(・)の(・)速度で、後ろに回り切りかかった。


しかしその剣はアズモの背に構えた剣で止められている。


「・・・へぇ、これを止めるか。」


「バレバレだ、馬鹿者め。貴様とこの三日、何度立ち回ったと思っている。」


こうして、ほぼ"勘による読み"で攻撃を防いでいったアズモであったが、基礎能力の差というものはやはり大きいもので、だんだんとユートが戦いを圧倒していった。


そうして、倒れたアズモに剣を突きつけると、ユートはこう言った。


「お前すげえな。ここまで苦戦するとは思わなかった。」


剣を突きつけられながら、アズモはユートに返す。


「馬鹿者め、まだ力を残していることもお見通しだ。精々我の力の3か4倍程度で力を抑えたのだろう。」


アズモはそういって、少しいじけたように見えた。


「・・・ばれてたか。ほんとは6倍だけど。」


ユートはそういって頭を掻いた。


「・・・まあ、我の6倍の力まで引き出せたということで今回はよしとしてやろう。」


「おう、師匠じゃなきゃここまではいかなかったぜ。」


そんなやりとりをしていると、エルミナが後ろから話しかけてきた。


「ユート殿、そろそろ酒場に戻ろう。暗くなってきた。」


「そうだな、戻るか!」


そう言って3人は酒場へと足を向けた。



次で終わらないかも・・・

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