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描いて読んで  作者: ネコ雲


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7/13

私の勝ちっす

「今日も暑いっすね」


 美心がTシャツに短パン姿で、ソファにだらりと身体を預けている。


 その隣では、咲希も同じような格好をしている。


 ただ、こちらは姿勢が良いせいか、同じ服装でも妙に品があった。


「美心ちゃん、そんな格好してたら愛しの彼氏に振られちゃうよ」


 春香がからかうように声をかける。


「大丈夫っす。彼氏、私のこと大好きなんで」


「…………」


 春香の眉がピクリと動いた。


 そして――


「チッ」


 小さな舌打ち。


「春香さん、今舌打ちしたっすよね?」


「さぁ~? 仕事しよっと」


「絶対したっす!」


 美心の抗議を無視して、春香はパソコンへ向き直った。


 咲希はそんな二人を見ながら、小さく笑っている。


◇◇◇◇◇


 あの夜。


 三人は孤児院へ戻ると、シスターにたっぷりと叱られた。


 家出したココはもちろん、夜に無断で外へ出たスズとクルミも同罪だった。


 ただ、最後にはシスターが三人を強く抱きしめた。


「無事でよかった……」


 その声は震えていた。


 三人がいなくなったことが、それだけ心配だったのだろう。


 スズはシスターの腕の中で、胸の奥が温かくなるのを感じていた。


 それから一週間。


 孤児院に、三人の冒険者がやってきた。


「おーい、シスター! 肉持ってきたぞ!」


 大きな声が外から響く。


「まあ!」


 シスターと子供達が外へ出る。


 そこには、大きな猪を担いだ男の冒険者が立っていた。


「わあ!」


「でっかい!」


「今日は肉だ!」


 子供達が一斉に歓声を上げる。


 冒険者たちも嬉しそうに笑っている。


「あらあら、こんなに大きな猪を……」


「みんなに食べてもらおうと思ってな」


 ちょうど昼食前だったため、三人の冒険者も一緒に昼ご飯を食べることになった。


「久しぶりのシスターの料理だ!」


「やっぱりこれだよな」


「懐かしい……」


 三人とも嬉しそうに料理を口に運んでいる。


(……肉は口実なんじゃないかな)


 スズはそんなことを思った。


 特に――


 一人の男性冒険者が、何度もシスターを見ている。


 スズとクルミの視線がぶつかる。


 二人は同時にニヤリと笑った。


 ちなみにココは、そんなことなど一切気にせず料理を食べている。


 昼食が終わると、冒険者たちが猪の解体を教えてくれることになった。


「こうやって刃を入れていくんだ」


 冒険者が丁寧に説明する。


 子供達も真剣に見ている。


 ……一部を除いて。


「ねえクルミ」


「何?」


「やっぱりあの人、シスターのこと見てるよね」


「うん」


「猪を持ってきたのも、シスターの料理が食べたかったからじゃない?」


「たぶんね」


「シスターも罪な女だね」


「……そうかも」


 二人は顔を見合わせ、ニヤニヤする。


 その時だった。


 ゴツン!


「痛っ!」


 突然、二人の頭に拳骨が落ちてきた。


「……え?」


 スズが頭を押さえながら振り返る。


 そこには――


 鬼のような顔をしたシスターが立っていた。


 いや。


 スズには、シスターの頭から二本の角が生えているように見えた。


「シスター……」


「何かしら?」


「いつから角を生やしたんですか?」


「生えてません」


 即答だった。


「でも見えます」


「見えなくていいです」


 ゴツン!


「痛い!」


 もう一度、拳骨が落ちた。


「そんなことより、しっかり解体の仕方を見ていなさい」


「はい……」


「クルミもですよ」


「はい」


 二人は素直に前を向く。


 しかし、しばらくするとスズがクルミへ小声で話しかける。


「ねえ」


「何?」


「シスター、ちょっと顔赤くない?」


「……私もそう思う」


「やっぱりあの人のこと――」


「スズちゃん?」


「はい」


「聞こえてますよ」


「すみません!」


 シスターの笑顔が怖い。


 クルミも慌てて口を閉じた。


◇◇◇◇◇


 七話目のネームを読み終えた美心が、原稿を机へ置く。


「…………」


 そして、春香を見る。


「春香さん」


「何?」


「恋したいんすね」


「…………」


 春香の動きが止まった。


「漫画に願望が出てるっすよ」


「出てない」


「出てるっす」


「出てない」


「出てるっす」


「出てない!」


 春香がムキになる。


 美心は勝ち誇ったような笑顔を浮かべた。


「珍しく私の勝ちっすね」


「何の勝負よ」


「春香さんをからかう勝負っす」


「そんな勝負してたの?」


「今決めたっす!」


 美心が胸を張る。


「たまには私が勝ってもいいじゃないっすか!」


「…………」


 春香は悔しそうに美心を見る。


「……じゃあ、次は負けないから」


「望むところっす!」


 二人の間に火花が散る。


 そんな二人を見ながら、咲希が小さく笑った。


「二人とも、仕事してください」


「はーい」


「了解っす!」


 美心は上機嫌で自分の席へ戻っていく。


 今日は珍しく、美心の勝ちだった。

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