表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/19

第13話 絶望を喰らう石

 地下に溜まった、どろりとした黒い泥。


それは公社が「幸せな村」を維持するために、住民の魂から削ぎ落とした絶望や苦痛の残滓――「重殻じゅうかく」だ。

フィオの手の中で、青い石がその闇を喰らい、脈動を速めていく。


「……なるほど。この石は、公社が捨てた『重殻』を糧に、支配を拒絶する聖域を再構築しているということか」


 アッシュの言葉が終わるより早く、頭上のハッチが激しい音を立てて開放された。


『不確定要素の排除を開始する。……諸君、不法侵入者から君たちの「幸福」を守りたまえ』


 ゼノスの声が響くと同時に、黄金の瞳をした村人たちが、狂ったような笑顔を浮かべて地下へとなだれ込んできた。


「おい、こいつら……数が多すぎるぞ!」


 ギルバートが可能な限り傷付けないように大斧を振るうが、痛覚を遮断された村人たちは、重なり合い、文字通りの「人の波」となってアッシュたちを押し流そうとする。


「警告します! 地下施設が物理的に隔離パーティションされます。ゼノスの狙いは我々の分断です!」


 ルシアの叫びと同時に、床が轟音と共にスライドした。


「フィオ!」


 アッシュが手を伸ばすが、村人たちの集団がその間に割り込む。

強制的な区画整理リセットにより、足場がバラバラの方向へと動き出した。


「アッシュ! ギルバート!」


 フィオの悲鳴が遠ざかる。とっさに彼女を抱えたルシアの区画は、さらに地下深くへと滑り落ちていった。


「……チッ、一人ずつ料理しようって魂胆かよ。いいぜ、受けて立ってやる!」


 ギルバートは立ち塞がる村人たちの波の向こう、闇の中でこちらを見つめる巨大な影――ゼノス直属の執行官、バレット・メイを見据えた。


「……アッシュ!」


 最後にルシアと視線が交差する。彼女の瞳には、かつてないほど複雑な演算の光が宿っていた。




 轟音が止んだとき、広大な地下施設は厚い防壁によって完全に三つに分かたれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ