これから その三
世間に公表することで、僕は世間に答えを任せたのだと思っていた。でも実際は違った。僕は僕の問題を手放したのだ。もう僕の答えはとっくに出ていたから。
「それでも、何か分かったことがあるんですよね?」
僕はそう言った。今回伊東さんに会うことにしたのは、伊東さんのほうから連絡があったからだ。最近はお互いに忙しくて、月末に軽く近況報告をするくらいのやり取りしかなかった。
「分かったこと、というほどのことではないのですが。それに、タツさんが聞きたい話ではないかもしれません」
覚悟していたことだった。僕らを取り巻く世間からの情報に、聞いていて気持ちのいい話など最初からひとつもない。
それでも聞かなければならない。
「覚悟しています」
「タツさんならそう言うと思いました」
伊東さんはふと表情を緩ませたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「裏の話なので詳しく言うことはできませんが、かなりの確率で白鷺組の幹部たちは死刑になると思われます」
やはり、そうなるか。
「秘密裁判ですが、人の命を弄ぶ許されざる凶行と思われているみたいですね」
僕としても、白鷺組のやったことが正しいとは思えない。優さんのような犠牲者も出ているのだ。
「……こんなことを訊いていいのか分かりませんが。それを聞いて、伊東さんはどう思いましたか?」
しばしの沈黙。
「……私の復讐は、これで成ったんだと思います。でも……思ったよりスッキリしませんね。こんなことをしたって、優が帰ってくるわけではない……虚しいだけだ」
「……復讐は何も生まないんでしょうか」
しかしこれには伊東さんは、「そんなことはないと思います」と即座に否定した。
「もし誰か強い復讐心に駆られている人を見かけたとしたら、私はそんなことはやめなさいとは口が裂けても言わないでしょう。復讐によって救われる人もいると思います。ただ私はそうではなかった。おそらく、最も復讐したい人への復讐は成らなかったからです。きっと、この先一生」
「どういうことですか?」
「……私が最も復讐したかったのは、無責任な私に対してだったんです。私は優を救えなかった。しかもそれを、白鷺組のせいにしようとした」
「白鷺組のせいに、なんて……」
実際に白鷺組のせいだったことは間違いない。白鷺組が優さんを捨て駒にさえしなければ、伊東さんと優さんは今でも親子でいられたはずだ。和解することだってできたかもしれない。そうしたら、伊東さんには孫を抱く未来もあったかもしれないのだ。




