これから
そこまで話したところで、僕は一番気になっていたことを訊いた。
「あの、叔母さんと……父の研究はどうなったんですか?」
実さんは驚いたように目を丸くする。
「それは、私のほうが訊きたいことなんだけど。私はずっと刑務所だから、外のことは全然教えてもらえないのよ。刑務所とはいっても、事情が特殊だから他の囚人からは隔離されているし、刑務作業もなく毎日事情聴取だけどね。自分の研究について訊かれることはあっても、どうなったか私が聞かされることはないの。タツくんは何も知らないの?」
「僕も知りません。調べることはできても、デマや憶測があまりにも多すぎて、何が本当なのか分からなくて」
「へえ。私たちの研究、そこまで大事になったのねえ。私の知らないところで。なんだか複雑だわ」
実さんはそう言って笑った。目尻の皺が少し深くなったような気がする。
「ところで……ノリくんは、どうしてる?」
実さんが真剣な表情に戻って言った。
僕は小さく頷き、掻い摘んで現状を話した。
あれから、僕とノリはすぐに離れ離れになった。
僕は人類初のヒトクローンとして、様々な身体検査を受けることになった。一方ノリは検査は受けつつも、メインとなったのは殺人への取り調べと処罰だった。
ノリは全面的に罪を認めたが、情状酌量の余地についてや、特殊な環境による精神的な問題を抱えていないかなど、色々と調べることがあるらしい。裁判もまだまだ途中だ。僕も何度か証言台に立ったが、弁護士も検事も裁判官も、何をどうすればいいのかまったく分からない様子で、一向に進行している兆しはなかった。
ノリは今、実さんやキタガミさんとは違う地区の留置所に入れられている。
まだ面会の許可は出ず、僕ですら裁判以外ではまだノリに会えていない。かなり厳しい報道規制も敷かれているらしく、マスコミの取材もまったくないようだ。
「そう……結局のところ、タツくんにも何も知らされていないのね」
「まあ、まとめるとそういうことです」
「ノリくんは大丈夫かしら」
実さんの心配はよく分かる。ノリはほとんどずっと、外との接触を禁じられてきた。初めて一人で、「ノリ」として存在できるようになった場所が留置所なのだ。苦しい環境であることに違いはないだろう。
でも、僕には大丈夫だという確信があった。
「大丈夫ですよ」
言い切ると、実さんは不思議そうに僕を見た。




