内と外
記事が発表されると、世間は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなった。
テレビや新聞は連日同じことを取り上げ続けた。その余波は日本だけに留まらず、世界中で僕たちの顔が流れることになった。
むろん僕やノリ、キタガミさん、実さんはマスコミから追いかけ回されることになり、警察に保護――実際は事情聴取のため連行されただけだが――されるまで、騒音で物理的に眠れない夜を過ごした。
警察から話を聞かれても、僕は記事にしてもらった以外の内容で話すことなど何もなかった。しきりに警察官たちはそれは本当の話なのかと訊いてきたが、研究者ではない僕に研究のことを訊かれても、答えられるはずもない。
結局のところ、研究所や僕たちの自宅が洗いざらい漁られ、荒らされまくって、僕の書いたことは事実らしいとようやく認めてもらえたのだった。
僕が僕であり、ノリがノリであること。僕たちにとってはすんなりと受け入れられるその事実を世間が受け入れるために、多くの研究者や専門家が莫大な時間を費やし、やたらと長い論文をいくつも書いた。
不思議な感覚だった。僕たちのことを的確に、これ以上ないくらい詳細に書いてあるらしい論文さえ、読んでみてもまったくしっくりこなかった。
人は何かと名前をつけたがる。定義したがる。存在に理由を求めたがる。この広い世界に突然放り出されて、不安なのかもしれない。
その気持ちは、僕にも分かる気がした。僕もいきなり自分がクローンだと明かされ、世界に一人になったような気持ちになった。
「私、外の情報が全然入ってこないのよ。しばらく面会も禁止だったし、手紙をくれるような相手もいないし」
「すみません。出すつもりだったんですが」
「ああ、いいのよ、タツくんに言ったんじゃないから。タツくんは私なんかよりずっと大変だったでしょうし。……でも、私に会いにこれるまでになったのね」
「はい。僕の知らないところで、人権団体が動いたりもしてくれて。僕は何もしていない、生み出されただけの被害者だから、行動を制限するべきではないとかなんとか……かなり署名も集まったらしいですよ」
僕がそう言うと、実さんは笑った。
「自分のことでしょうに、まるで他人事ね」
「実際、あんまり実感がないんです。僕やノリのことで、周りがこんなに大騒ぎしていることが。ようやく人並みの暮らしはできるようになりましたけど、まだ働くわけにもいかないから父の貯金を切り崩すしかないし、色々大変ですよ」




