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二者択一

「……タツ、俺がこんなこと言えた義理じゃねえが……一旦、落ち着け」

 キタガミさんに言われ、僕は一つ深呼吸をした。それでも動悸が収まらない。こんなことは初めてだ。

「……どうだ? 話、続けられるか? それとも、今日はもうやめとくか?」

「……大丈夫です。続けます……僕には、時間がありませんから」

 僕がまだ、何かを考えていられるうちに。僕に眠る『残虐な遺伝子』が、目覚めてしまわないうちに。

 僕には成さなければならないことがある。伊東さんと、そしてノリのために。

「そうか。……じゃあ聞くが、タツ。ジャーナリストとは、どういう条件を結んだんだ?」

「ジャーナリストって……伊東さんのことですよね? 条件というのは……」

「……お前からマサルの話が出たことで、あらかた想像はできる。あいつが追っていたのはお前ではなく俺だった。そんな俺に近づくため、絶好の相手と知り合えたわけだ。大人しくしておいてやる義理はねえだろうが。息子を殺した仇なんだからな。でも、お前は言ったな、ジャーナリストはもう白鷺組に仇なすつもりはないって。お前らの間で、どういう契約が結ばれた? お前はどんな条件を飲んだんだ?」

 キタガミさんはさすがだ。それくらいのことは、お見通しということか。

 僕はどう答えたものか、本当に迷った。キタガミさんを敵に回すかもしれないと覚悟して彼を呼んだ。けれども、積み重ねた時間が僕の決意を揺るがせる。伊東さんはキタガミさんに殺意にも似た強い憎悪を抱いている。双方の味方をするという都合のいいことは、できない。

 選べ。僕はどちらの味方になる。どちらを敵に回す。

「……僕がした契約は……知ったことはすべて伊東さんに共有すると、そういうことです。隠し事はお互いになしだと」

「……なるほど。ということは、俺の普段の居場所や行動予定などを掴んだら、ジャーナリストに流すということか」

「……そうなるでしょう」

 僕は掌をぎゅっと握りしめた。汗が滲んでいる。動悸が収まらない。もう僕は、キタガミさんを敵に回してしまった。今にも襲いかかってくるかもしれない。視線は下に向けたまま、頭の中でシミュレーションをする。

 護身用にと、キタガミさんから受け取ったサバイバルナイフ。あれを置いた正確な場所を思い出す。それを掴み、反撃する自分を想像する。肉を貫く感触と、血の臭いまでもが想像できるような気がする。

 キタガミさんが、ポケットに手を突っ込んだ。

 武器を隠し持っていたのか――!?

 僕の体格では、真っ向勝負でキタガミさんに敵わない。先手を打つしかない。やられる前に、やれ――!

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