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共犯

「ノリに会うことは、今は難しいでしょう。ですが、会える人ならいます。まだ僕たちが知らない情報を握っているはずの……」

「……北神悠次、ですね?」

 伊東さんは察しよく言った。

「そのとおりです。だから僕は、今伊東さんから聞いた情報を、直接、キタガミさんに伝えてみようと思います」

「あなた一人で、ですか?」

 伊東さんの目が真っ直ぐに僕を見ている。伊東さんとしては、自らキタガミさんと会って話をしたいだろう。だが伊東さんにとってキタガミさんは、憎むべき宿敵だ。少なくとも伊東さんはそう思っている。ならば会わないほうがいいと思う。

「あなたは、私が激情的になるのではないかと疑っていらっしゃるのですね」

「正直なところ、そうです。僕も、もしノリの身に何か危害が加えられて、その犯人かもしれない人と会うとなったとしたら、平静ではいられません。頭で分かっていても、実際に会うと、たぶん無理でしょう。分かるでしょう。伊東さんなら」

 伊東さんは瞑目し、しばし考え込んだ。やがて、諦めたようにため息をつく。

「そう言われては、返す言葉がありませんね。私も似たようなことをあなたに言いましたから。分かりました。それでは北神との会話は、あなたにお任せしましょう。ただし、得た情報は必ず共有してください。ひとつも漏らさず」

「分かりました。約束します。ただ、今日はもう遅いので、明日になるかと思いますが」

「仕方ありませんね。私も仕事がありますから。それでは明後日の同じ時刻、またここで落ち合いましょう。いかがです?」

「それで大丈夫です。ただ、伊東さんの身が心配なので、もう白鷺組に危害を加える心配はないとだけ、説明しておきますね」

 僕がそう言うと、伊東さんは苦笑した。

「そうですね。真相を暴くというのは、白鷺組に仇なす行為であることは間違いないでしょうが、もう記事にするとか、警察に告げ口するとか、そういうことはないですよ。少なくとも、片がつくまではね」

 片がつくまでは、という言葉を、僕はよくよく考えた。

 片がつくとは、どういう状況を指すのだろう? ノリが見つかること? 犯人が見つかること? この先どうするか、決めること?

 一寸先も見えないのに、そんな日が果たして来るのだろうか――。

 いや、そんなことを考えるのは後だ。今はともかく、やるべきことをやらないと。

「それでは、私はこれを飲んだら失礼しますね」

 伊東さんがすっかりぬるくなってしまったお茶を啜った。僕も苦笑してお茶を啜る。つい数十分前までは、こうして向かい合ってお茶を飲めるようになるとは思っていなかった。

 打ち解けたと言っていいのかは分からないが、ともかく、僕と伊東さんは今や協力関係にある。ノリのことを隠蔽しているという点では、共犯関係ともいえるが。

 お茶を飲み干した伊東さんが、「それでは」と言いおいて家を出て行った。玄関先まで見送ってから、ドアを閉め鍵を掛ける。

 それから僕はすぐ、キタガミさんに電話をかけた。

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