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河童様  作者: なぁ恋
産み女神
58/70

 

 

 

種を蒔くのは男。

育て産むのは女。


その違いが想いの違い。

愛が(たが)える要因。

  

 

 

*********

 

 

 

*朗side*


 


「いやぁっ!」


悲鳴が意識を戻すきっかけになった。


悲鳴の主は、ゆうつき?

否、優月。


「優月!」


止まらない悲鳴に、ただ抱き締める事しか出来ず。

震えて叫ぶ優月は、余りにも痛々しくて……。

 ... ...

「あれは、過去だ。大丈夫だから……」


「大丈夫な訳がない!」


強い口調で優月が断言し、私の腕を拒絶する様に押し退け逃げた。



「今のは何?」


優星の声でここがどこか思い出し、その訊き方に驚く。


「今のを視たのか?」


「視えたわ」


優星の答えに同意する様にその場の全員が頷いた。



知らず溜め息を吐く。


優月を護る様に優星が抱き締めて居た。


「優月は子どもを産んだのか?」

龍の確信をつく言葉。


「そうだと思う」

曖昧にしか答えられず、どちらにしても優月は辛さに耐えられず、私から離れた。


まだ“ゆうつき”の温もりの残る両手の平を見る。


この“想い”の答えは?

 

 

 

「その子どもが優良で……ゆうつきは、龍羽神社の娘?」


確認する様に復唱した龍が愕然とする。


「俺の血脈も優星と繋がって居ると言う事か?」


「そう言う事だね」

水先の父が答えた。

そして考える風な顔をして、

「何が生まれたのだと思う? と言うか、優良は何なのだと思う?」

と、真顔で訊いた。


突然の問いに優月さえ父を見る。


「おばあちゃん、優良は、初めての人と妖怪との混血なのよね?」

優星が確かめる様に訊く。


「そうだよ」

水先の父は再度頷いて見せた。


「僕から産まれた……おばあちゃんが?」

呟いた優月の顔色が悪い。


先程まで視て居た前世の記憶。ただの記憶にしては生々しく、優良が誕生する件は、何かに操られて居た感じがした。


そこまでを閻魔帖は視せた。それもこの場に居る者皆に。

水先の父の言葉を借りるなら、この事にも意味があると言うのか?


「今更ながら優良が何者か? と言う疑問を持った。って事かしら?」

水先の母の言い方の方がしっくり来る。


「そう。僕は何者でも彼女を愛してる。もちろん璃世もだよ」

愛しい気持ちの現れた笑顔を妻に向けて、

「今の“過去視”を通してよくよく考えてみると、“閻魔”とは特殊な存在で、“閻魔の朗”は河童の手に因って造られたらしい事は解った。

だけども、そこの始めから何者かの意思を感じるのは気のせいかな?」

 

 

自分が感じていた事を言い当てられた。

   .....

但し、結ばれた時だけに違和感を感じて居た。


「じゃあ、僕は……ゆうつきは利用された?」

蒼白な顔色の優月が更に色を失う。

「そこに“想い”は無かったの?!」


その物言いに、優月が勘違いしている事に気付いた。


「私は、閻魔の朗は、ゆうつきに惹かれて居た。

操られて居たかもしれないが、“想い”はちゃんと有った!」


ただの“河童の朗”で在った時よりも確実に“想い”がどんなものかが理解出来る。


「私は、優月を愛している!」

必死に想いを吐き出す。

が、言葉にしても伝わらないなら意味が無い。


「きっとそんなのは思い違いだよ。だって、今の僕は男なんだから」


「性別は関係ない!」


「閻魔の朗はゆうつきの性別に合わせたって言った!」


それには言葉を失った。

    .... ..

「なら、ゆうつきは閻魔をどう想ってたの?」

優星の助け船に安堵して、黙って優月を見る。


「―――判らない」

少しの期待が打ち砕かれて、身体から力が抜けて行く。

 

 

*優月side*

 


―――判らない。


そうとしか答えられない。


「だって。傍から見れば、朗は付け込んだんだよ!」

   .

―――私は愛だと勘違いして居た。


「根本には愛が有った筈だ」

先輩が言った。


―――それで産まれ出たのは私の“想い”

 ..

「私はっ!」

 ..

「優月。しっかりなさい。

....

今の貴方は“ゆうつき”ではないのよ?」


―――ゆづき? 私は優月。僕は優月。

     .

「あ……。僕?」


ゆうつきはショックだったんだ。

と言うか、僕、優月の感情が交ざって混乱してた。


「僕は、ゆうつきは、またあんな想いをするのが嫌だった。

...

だから性別を変えたんだ」


―――傷付きたくなくて。

それに。

―――朗と、離れたくなくて。



そう。

....  ....

ゆうつきは、閻魔の朗と離れたくなかった。


離れたくなかったんだ。



「もう“朗”と離れたくなかったから……」


言葉にすると、胸が痛くなった。

目尻が熱くなり、頬を涙が伝う。

だから、気付いた。


 

“想い”が言葉になる。


「だって、僕は……やっぱり、朗が好きなんだ」


言ったと同時に温かい腕に包まれた。

河童の冷たい筈の体温が、温かい熱を持って、僕を抱き締めて居た。


「私は、優月を愛してる!」


叫ぶ様に告白されて、今度は否定出来なかった。


背中に腕を回し抱き返す。



『やり直させたかった』



不意に聞こえて来た声に顔を上げる。

どこから?


皆にも聞こえたらしく、声がした方へ視線が集まる。


朗のお母さん?


違う……その腕に眠る、優良?


そう感じた次の瞬間、優良が淡い光を纏い、宙に舞い上がった。



『やり直させたかった。

なのに、物事は上手く運ばない事もある』



声が確かに聞こえる。

語るは赤子の河童。



『本当に始めたのは私。

罪深き産みの女神』



淡い光はやがて形を変えて、



『国産み、神産み、人産み、妖産み。

この世の全ての母……』



淡い光は消え、そこに立つは緑の肌を持った河童の少女。



『私は、イザナミ』

 

 

 

 

 

  

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