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河童様  作者: なぁ恋
愛と想いの代償
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花から誕生する閻魔が最初に目にするのは、父母ではなく河童だ。


河童は産まれた閻魔を甲斐甲斐しく世話をやく。


私にもそうした河童が傍に居た。


そいつは他の河童と違って色んな事を教えてくれた。


人間や妖怪の生態。

沢山の言葉や意味。


“閻魔”は知らなくて良い知識を。


何故私の河童は私を特別扱いするのか、疑問にも思わなかった。


だが、知識は疑問を生む。だから仲間の考えに賛同出来ず、今に至って来た。


仮死状態の魂も他の閻魔なら有無を言わせず冥界へ連れて行くだろう。


冥界へ行けば、ゆうつきは浄化され、閻魔で在る自分には手が届かなくなる。


目の前に居るゆうつきを改めて見る。

彼女を見ると熱く燃え立つ心と体。

初めての感情に戸惑う反面、河童に聞いて居た通りだと感心した。

 

 

閻魔には芽生える事の無い想い。

 

 

 

ゆうつきを促し、この場所を離れる。


向かうは私の河童が住まう所。

冥界の手前にある“三途の川”


ゆうつきの手を取って黙々と歩く。

ゆうつきは黙して語らず、無くした記憶に思いを馳せて居るのだと判る。


突然歩みを留めたゆうつきが顔を上げて真っ直ぐに私を見据え、口を開く。


「私は死んでない。それは確か。でも、どうすれば助かるの?

こんな所まで来て居るのに」


最もな意見。


「河童に訊くのさ」

彼ならば判る筈だ。


「河童?」と不思議そうに首を傾げる。


「冥界を無条件で出入り出来る者だ。

それに、誰よりも知識を持っている」


また暫く歩くと、積み上げられた石の小山が並ぶ三途の川へ辿り着いた。


穏やかな川の流れに声を掛ける。


「河童!」


すぐに頭の皿が水面に覗き、緑色の肌を持つ河童が現れた。



ゆっくりと地上に上がり、私に笑みを寄越す。


「朗。どうされたのですか?」


訊きながら視線はゆうつきに向けられ、何度か頷く。


「ゆうつきと言う。

仮死状態の魂だ。助ける事が出来るか?」


「可能ですよ。けれども、難しいですね」


目を細めた河童が、ゆうつきの瞳を覗く。


「貴女は類い稀なる霊力の持ち主だ。

だから、“人柱”にされたのでしょうね」


さらりと河童が答えた真実に、ゆうつきの表情が変わる。

 

 

*ゆうつきside*



“人柱”河童に言われた言葉に驚いた。

途端に生き苦しさを覚え、目眩がした。


「私……私は、新しい神社を造る為に、鳥居の足元に埋められた。……人柱」


私は、そこの神主になる者の娘で、他の誰かが人柱になるのが耐えられなくて志願した。


自分から、成った。




赤い鳥居の根元に目隠しをされ、縛り付けられ、土をかけられた。



最後に強く思ったのは青い空を見たかった。って事。


「まだ、私は……生きてる」


「その様だね。強い霊力は強い生命力と比例している」


河童が言った。


立ち眩み、倒れそうになった私を支えてくれたのは、閻魔と名乗った朗。


赤い髪が綺麗で、澄んだ黒い瞳は美しかった。


「助けたい」


朗は言ってくれた。

けれど、私が助かる事は即ち、また他の誰かが犠牲になると言う事。


「私は、助かってはダメなのよ」


「そうだね。

このまま浄化され、輪廻する方が正しい考えだと思う」


河童は何度も頷いて居た。


「……私は、嫌だ。

ゆうつきと出逢えたんだ。河童が言っていた意味が解ったんだよ」


朗が必死に訴える。

嬉しかった。けれども、どうしてそんなに必死になってくれるのか理解出来ない。


「朗。体の変化の兆しを感じて居るのか?」


河童が表情を変えた。


「散々聞かされて来た事だ。変化と言えばそうかもしれない。体が熱いんだ」


朗が嬉しそうに微笑んだ。


「ならば、人間界に行こう。朗、お前も共に来るのだ」


河童は私を見て訊く。


「神社の名は?」


「龍羽神社」

諦めないと。と判って居るのに、助かりたい気持ちが答えて居た。


私は……。

私を支える優しい手を持つ閻魔の朗を、もう少し見ていたいと思った。




叶うならば、青い空も。

 

 

河童が先を歩き私が居る人界を目指す。

私は、助かっても良いの?


迷いながらも足は前へ進む。

後ろには私を元気付ける様に朗が居る。


緩やかな川を登る。

此処を下ると妖界に続いているらしい。


暫くすると、淡い白い霧が体を撫でて視界を悪くした。


真っ白な霧。それをみていると、思い出すのは村の事。



私は確かに霊力が強くて、誰にも見えないものが視えた。


どの土地に住んでも、幾らかの“物の(もののけ)”に必ず出会った。


それがこの瑞雲村に着いた途端に身体中に鳥肌が立った。


空気が違ったから。

驚いた。


とても綺麗な山林や、池に湖、川の豊かな村に、似つかわない空気。


どこか浮世離れしたこの雰囲気。


山には鬼が。

湖には龍が。

池や川には河童が棲むと語り継がれていた。



どこか懐かしい。

そんな村。


 

 

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