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河童様  作者: なぁ恋
河童の存在価値
12/70

 

*優月side*


気が抜けて、また背中の傷が熱を持ち始めた。

痛みに息も吐けない。


優しい手が僕を抱えた。

揺れる体。支える手の平が温かで安心出来た。




痛みが緩和されて行く。




『―――あぁぁ……あぁ―――……』



何?

女の人の声。泣き声が聞こえる。



『助……けて……』



震える恐怖の混じった声が、助けを呼んでいて。



『助けて―――朗……』



朗?

河童様の名前。


あぁ……。体が楽になって来た。


「……声が、聞こえた。女の人の泣き声が……」


呟いて、痛みが無い事に気付いた。

背後にある暖かみが、見なくても朗だと判る。

朗が、治してくれた。


冷たい腕が僕を優しく抱き締めてくれていて。

上を向いて彼を確認する。

僕を治してくれた。

治して……黒猫。


「ろう? 黒猫は?」


意識がはっきりとして、助けたかったあの小さな黒猫が気になった。

朗は優しくほほ笑んで、

「助かったよ。だが、優月は問題を抱えた」

そう言った。


ニャ~と、可愛い鳴き声と手の甲をざらつく舌が舐めて来て、安心した。


「あぁ。本当に助かったんだね。良かったぁ」


黒猫の頭を撫でると、そのまま暖かい体が膝に飛び乗って来た。

この子を、

「―――治したのは?」


「優月。お前だよ。

ただ、治したとは言えない」


あの時の手の平の熱を覚えてる。


 

「―――治してない?」


朗の言葉に不思議を感じて聞き直す。


「正確には治したとは言えない」

「なんで僕がそんな事が出来るの?」


朗に向かい合い訊く。


「判った。正直に話そう」


それから知らされた事実に僕は戸惑う事となる。



「河童の薬は死者には利かない。それは、その黒猫も同じ。

まずは優月、お前は一度完全に死した。その時点でもう助かる(すべ)はなかった。だが、私と同じものに成る事で生まれ変わったんだ」


「同じ……もの?」


「“河童”にだ。

この(じゅつ)だけが優月を助ける唯一の方法で、それに、子孫を残す手立てでもあった」


「河童―――に?」


それに“子孫”って?


「それに黒猫。こやつは死んでしまった猫が変化した妖怪。だから体は徐々に腐敗して消滅し始めていた」


「でも。こうして僕の膝の上に居る」


綺麗な艶のある黒毛を撫でる。しいて言えば細すぎる体が気になるくらいで元気そうに見える。


「お前がその黒猫に自身の生気を分け与えたんだ。

優月と少しでも離れると、途端に肉片へ変わるだろう」


「そんな事が―――」


「左目が熱を持ったろう?」


そう言った朗が右手を軽く振ると空中に水玉が現れた。

それが縦長に伸びて、それを覗く様言われて見る。

  

 

僕の左目の瞳の中に藍色に煌めく星の様な光が見えた。


「え……何?」

「“河童”に成った証拠だ」


再度言われた朗の言葉に衝撃を受ける。


「だから迎えに来たんだ」

「僕を生き返らせてくれたんじゃ……」

「河童は治す事は出来るが、死者を甦らせる術を持つのは“神”と呼ばれる者だけだ」


河童に成った?

そう言えば黒猫も僕をそんな風に言って居た。


「ほらニャ? やっぱり河童だった」


ニャーンと鳴きながら言葉を話す黒猫。

この子は僕と居る事で生き長らえた化け猫?


「それにしても、オスとメスの区別もつかニャかったのか?」


朗に話し掛ける黒猫の言葉に思い出す。

“子孫を残す術”だったと?


「優月は可愛かったからな。それに私は女性を母親しかしらない」


なっ! 可愛いと言われ熱くなる頬。


「僕は、男だ!」

「ちゃんと今は理解している」


にやりとほほ笑む朗の顔の綺麗さに益々熱くなる顔。


「そっ……だよ。メスの河童だって居る筈だし、僕を嫁にするって考えなくても」


助けてくれたのは感謝するけどさ。

そう思って命を助けられたのかと思うと何だか居心地悪い。

 

 

「いや。伴侶を見つけるのは難しい」


僕を真っ直ぐに見るその目に嘘を見付けたくて……でも真剣に話してると解って話の続きを訊いてみようと思った。

そうだ。朗は一人だと言っていた。


「何で仲間が居ないの?」


「“河童の治癒能力”を他の妖怪が欲したせいで激減した。現に、私の母は元人間。父が見初めて夫婦になったと聞いている」


あれ?


「死んだのを生き返らせたんじゃなくて、夫婦になる為に河童になったの?」


必ずしも妖怪に成らなくても子どもは出来るんじゃ?


「河童はその能力があった。

それに狙われて居る身、河童の隠れ里、暮らす場所で人間は生きられない。人間の世界で子を産めばたちまち妖怪どものえじきと成るだろう」


河童に変化していた僕をこの子が嗅ぎつけた様に?


恐怖を思い出し小さく震えが来た。


膝に座る黒猫が僕を見上げる。黄色の二つ眼が細められ、小さく呟いた。


「助けてくれてありがとニャ。……傷付けてごめんニャ」


小さな黒猫。

「良かったね」言って頭を撫でる。

 

  

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