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河童様  作者: なぁ恋
河童の存在価値
13/70

 

本当に良かった。

体を撫でると、柔らかい毛並みに落ち着く。


「僕は河童に成ったから助かって、この子も助かったって事だね」

朗が静かに頷く。

「それに、いずれは私と共に隠れ里に帰らなければならない」

嬉しそうにほほ笑んだ朗。

嬉しいのかな?


「夏休みが終わった頃って。それは……」

「優月が“完全体”に成った時。と言う事だ」


完全体。河童に?


「ちょっと待ってよ!」

って、抱き締められた。

「姉さん?」

ぎゅうって強く抱き締められて、驚いた黒猫が膝から飛び降りた。


苦しい……。


「それってゆづを連れてっちゃうって事よね?!」


姉さんの震える体。

必死な声色。

僕を心配してくれて居るのが十分伝わって来た。


「このままこの場所に居るならば“妖怪”に捕まる。そして喰われる」

朗の言葉は真実。


「そんなのっ! 貴方が護ればいいじゃない」

負けない姉さん。


「それは無理だ」


声の主は、響夜先輩。

見ると難しい顔をして立っていた。

 

 

*響夜side*



目の前に河童が二人。

この者たちならば母を助けられるかもしれない。

いや。もしくは“喰わせれば”

……俺は。何を考えた?


よこしまな考えを振り落とすように頭を振り、会話に聞き入る。


弟を思う優星の必死さに感銘するも、

「それは無理だ」

本音が口をついて出た。


「そんなの同じ妖怪なんだから―――」

「妖怪は普段は闇に隠れて居る。が、一度(ひとたび)人前に出たなら、容赦ない。

その化け猫が良い例だろう。今はそんな可愛いなりをして居るが、実際に優月を喰おうとした」


命に関わる怪我をした妖怪ほど厄介なものはない。


「一人で護れるなど皆無。そんなに甘くない世界だ」


俺は護りたかった。


「そんな事。やってみなけりゃ判らないでしょう?」

引かない優星に苛立つ。


「護れないから一緒に隠れる。それが最善策。伴侶なら子も増える」

「―――……予定だったんだがな」


河童が継いだ言葉で口をつぐむ。


「そうよ! 別の誰か女の子を河童に変えて連れてけば」

「優月は人間には戻れない。それに伴侶も望めない。人間を河童にする術は一度しか使えない」

河童の真摯な物言いに優星が黙る。


      

妖怪に成れた人間(もの)は幸せだ。

気付いたら口端を噛んでいた。


「河童程その存在価値の高いものは居ない」

真実を、

「妖怪は生に貪欲で、人間の恐怖が好物だ。例外は河童。その者の身体を流れる体液は傷を治す薬。躰そのものは妖怪の命を救う万能薬」


ならば、人間で在るまま妖怪の寿命―――半永久的長い生を与えられた母を救うにはどうすればいい?


呪いを解くのは呪った者しか出来ない。

だから、俺は天へ行く道を探していた。


俺の父親龍を倒す為に。

 

 

 


 

 

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