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河童様  作者: なぁ恋
河童の存在価値
11/70

 

返事を待たず、水先家へ足を進める。


必ず優星は俺の後を着いて来ると判っていた。





俺は、龍の血脈を継ぐ自身が憎い。

奴らの世界に行けたなら……。

拳を握る。まだその方法は見つからずにいた。

その中で河童と出逢えた幸運。


水先 優星との係わりから訪れた出逢い。


“河童の万能薬”


それは母を治す事が出来るだろうか?



後ろから聞こえて来る足音に物思いから目覚める。



優星は、彼女は俺の“真の姿”を見ても逃げないだろうか?


優星から感じている好意は無視出来ない程に大きく感じられる様になって来ていた。


だが、応える訳にはいかない。

……どんなに嬉しくても。



   ...

母親を壊した俺は、誰かを愛する事をしてはいけないのだ。

  


しばらく歩くと水先家が見えて来た。

同時にその上空が明るく光って、眩しさに目を瞑る。次に肌に感じた清らかな空気が、ただ事ではない出来事が起きた事を物語っていた。

   

 

*優星side*



何?

家が見えて来て、響夜くんとさよならなのだとシュンとなっていたら、うちから空に向かって眩しい光が弾けた。


響夜くんも立ち止まり顔をしかめていた。


「何が……あったの?」呟く。


次に響夜くんが駆け出した。

裏庭に続く門は空いたままでそこを抜けて河童の池の前に出た。


響夜くんの背後から見えたものは、信じられない光景だった。


ゆづが血塗れになっていて、水宝先生の腕に抱かれて居た。


「ゆづ!?」


響夜くんを越えてゆづに駆け寄る。


「どうしたの!?」


ぐったりとしたゆづは身動き一つしない。


「優星。優月を横に出来る場所を用意してくれ」


先生の言葉に体が動く。

池の傍にある離れ。おばあちゃんの特別な場所。

台所から鍵を取って来てドアを開ける。

室内に入ると、押し入れから敷布団を出し敷く。


後から入って来た先生が、ゆづをゆっくりとうつ伏せに寝かせた。


ゆづの背中一面に広がる赤色。

先生がゆづの服を破ると、肩に酷く深い傷があらわになった。


「何でこんな……大丈夫なの??」


恐怖に震える。


先生は私を一瞥して、結んでいた髪を解いた。


「大丈夫だ」

素っ気なく言われて、そして先生の次の動作に驚く。


両手の平を交互の爪で切り裂くと、緑色の液体が滴り落ちる。

そのままゆづの傷口を包む様に手の平を当てた。


ゆづが一瞬呻いた。

見ていると、流れ出た赤い血がまるで体内に戻る様に消えて、離された手の下にあった筈の傷が消えていた。


 

何が起きたのか解らないで居た。


先生は次に自分の手の平を舐める。緑色の液体は傷口と共に消えていた。


「先生は何者?」


疑問符をぶつけると、こちらに顔を向けた。


息を呑む。その瞳があまりにも綺麗で……藍色に煌めく星の様な光が見える。


神秘的で神々しい雰囲気に次の言葉も出せなかった。


「優月は大丈夫だ」


優しくほほ笑む先生は、まるでこの世の者じゃないみたいで……。


「ひゃあッ!」

足元に撫でる感覚を感じて驚いた。


見ると黒猫が私の足の間を通ってゆづの方へ向かって行く。


えっ? えぇっ!?

黒猫のしっぽが根元から二股になってる!


「化け猫よ。優月に感謝するんだな」


先生が静かに言う。

化け猫?


「ニャ~。ゆづき……と言うのか?」


喋った!!

ギョッ としてると、更に二股しっぽの黒猫が続けた言葉に驚いてその場に座り込む。


「河童よ。感謝する」


“河童”??


「妖怪??」


声がひっくり返る。


「……優月が治したのか?」


背後から響夜くんの声が響く。


「そうだ。治したと言うよりは“命を分け与えた”。と表現した方がいいかな?」


先生が言った意味が理解出来ない。


 

ゆづが治した?


響夜くんが当たり前みたいに訊いた。


解ってないのは私だけ?


「ゆづ……」


心配で傍まで行くと、猫がゆづの頭上に座り込んだ。


「治したの?」

猫をどんな風に?

「ゆづ?」


何度も呼び掛けて体を揺する。そしたら先生……河童様がゆづを抱き起こして、意識のない体が河童様にもたれた。

あれ? ゆづの体が、何だか仄かに光って見えて来た。

気のせい?


「力を使った事で身体の変化が早まった」


嬉しそうな顔をした河童様がゆづの頭から顔、喉元、胸と手の平で撫で下ろした。


そしたらぴくりと小さく反応して、ゆづが目を覚ました。


「……声が、聞こえた。女の人の泣き声が……」


呟いて、自分を支える腕を見留めて上向いて河童様を確認する。


「ろう? 黒猫は?」


今度ははっきりとした口調で訊ねた。


「助かったよ。だが、優月は問題を抱えた」


ニャ~と、二股しっぽを振りながらゆづに近付いた黒猫が、力なく投げ出されたままのゆづの手の甲を舐めた。


「あぁ。本当に助かったんだね。良かったぁ」


黒猫の頭を撫で、膝に飛び乗るのも好きにさせて、怠そうに溜め息を零した。


「―――治したのは?」


何かを確認する様に河童様を見遣る。


「優月。お前だよ。

ただ、治したとは言えない」


なぞ掛けみたいな会話。

 


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