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ピンチです

 空中に輝く文字(プーミによれば線香文字と言うらしい)や、この部屋の扉を開いた謎の光。

 プーミは魔法(?)だと言う。

 実際、この目で見たのだから手品ではない。体に何かを仕込んでいるとか、あらかじめ仕掛けを準備しておいて人を騙そうとか、そういう意図も感じられない。


 本当にプーミの持つ力なんだろう。


 プーミによれば、プーミの使う魔法(?)は《星集め》と呼ばれる人たちが残した遺産を用いたものらしい。この世の中にはロストメモリーと呼ばれる《星集め》の遺産が存在している。それらは、《星集め》がマナの神秘に迫ろうとアレコレ頑張って造られた技術や知識ということだ。


 リーリはコーバリを訪れる前にマナについてできる限り手を尽くして調べたつもりだった。でも、プーミの言う《星集め》に関する情報を耳にすることは一度もなかった。努力不足ですね、と言われるとそれまでだけれど、そんな簡単な言葉で胸の内の疑問をゴミ箱の隅に置かれるのは納得いかない。


 プーミ言うように、真実、《星集め》の知識・技術が失われたものであり、電脳空間にも存在しないのならば、どうしてプーミはそれらを知っているのだろう。反対に、それらが本当に存在するならば、自分が知らないなんてことがあるのだろうか?


 リーリは機械技師だ。山奥で一人暮らしをしているわけでない。妹のキキイがいれば、技師友達だっている。リーリは自分が世に疎いだなんて思っていない。マナは生きとし生けるもの全てに関わるものだ。そんなマナについて記された重要な記録・知識・技術があるなら有名であって不思議でない。


 そう言えば、プーミは一人だ。

 古文書までたどり着くための協力者はいない。一人で夜中にギーリク大図書館を訪れ、一人で侵入し、一人で古文書までたどり着こうとしたのだろうか? 無謀だ。プーミの言う魔法(?)については何も分からない。だけれども、リーリからすればプーミが機械について無知なのは明々白々だ。


 そんなプーミが一人で侵入?

 ありえない、いや、分からない。


 今ここで、あれこれ考えても仕方がない。

 リーリはため息をついた。


 部屋に入ってから十分が経過した。

(まだ時間が掛かるのかな?)

 同じフロアにマナ教徒がいるのは分かっている。そして、扉に施されていた魔法を解くときに光が弾け飛んだ。マナ教徒がその光に気付いているならば一刻の猶予もない。


 リーリは深呼吸した。

 そのとき、ユイは古文書の写本を読み終えよたようだった。


「これは・・・偽物?」

「ユイ?」

「矛盾?違う、足りないページがある」

 ユイは何かに気づいたようだった。

「どうした、ユイ?」

「リーリ・・・いえ勘違いかもしれません」


 更に質問を重ねようとすると、部屋の灯りがフッと寂しくなった。振り返るとプーミがそばに立っていた。

(プーミさんは終わったみたいだ)


「偽物って言葉が聞こえたけれど?」

「偽物ではなくて、この写本には欠けているページがありそうなんです。ユイの勘違いかもしれませんが・・・」

   

 そんなハズない。この写本は単なる展示用でなく、本物の古文書を守るための本物のレプリカだ。


「この写本は原本を完全に摸している。だから、偽物ということは絶対ないはずだよ」

「そうなんです。ですから困惑しているんです」

「プーミさんはどうなんですか?」

 プーミは即座に首を振った。

「私は古文書を情報として取り出しただけ。古文書の内容までは分からない」


 困った。


 原本を調べればユイの困惑を解消できる。でも、でも、そんなリスクを負うわけにいかない。

(だからと言って、中途半端な情報を手に入れたところで何になるというのだろう。この部屋に入ることはもう二度とないはずだ)


 古文書に記されたマナについての記録を手にいれる最初で最後のチャンスだ。

 決断しなければならない。


「リーリ、待って下さい。誰かがこの部屋に向かっています」

「!?」


(ゴーリッキ団長。光の明滅はこの方向から見えました)

(確かか?)

(はっ。間違いありません。この目で見ました)

(古文書が保管されている部屋があるな)

(どうされますか?)

(無論、調べる)


「ゴーリッキという名が聞こえました。地下への階段の前にいた人たちだと思います」

「リーリ君、ユイちゃん。議論は後にしましょう」

 リーリは頷いた。


 多勢に不勢。


 それに以上に、許可なく館内に居るのだから捕まったら言い訳できない。

 リーリは急いでカバンを背負うと扉を開いた。


「とにかくここから離れよう」

 ユイとプーミも頷いた。

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