大きい人
大きな足音がゴツゴツ近づいてくる。パタパタと軽い足音も混じっている。
早足ではなく、落ち着いた足取りで向かってくる。通路からこの部屋への道のりはいくつもあったけれども、迷わずこちらに来ているようだった。
人数も増えていた。
「ゴーリッキ団長」
「装置が解除されているな。電磁錠も開いている」
「無理矢理こじ開けられた痕跡はありません」
「部屋の中に人はいるか?」
「お待ちください」
ゴーリッキに命令されると白装束の一人が扉を押した。そして、手持ちのランプで部屋全体を照らした。
「・・・人影は見当たりません。古文書も無事です」
「そうか。お前たちはこの部屋の近くを調べてくれ」
「はっ」
白装束の男が散らばった。
部屋に残ったのはゴーリッキと数人だけになった。
「ゴーリッキ。困ったことになったな」
「レイル市長。我々以外に装置を解除できる輩がいるといことです」
「狙いは何だと思う?古文書に触れた痕跡はない。レプリカもそのまま。この部屋に侵入した者はここで何をしたのだろう?」
「それは捕まえれば分かることです」
「そうだな」
市長と呼ばれた男はゴーリッキの返事を聞くと笑った。
市長?コーバリの市長がどうして?
リーリたちは部屋を出ると一目散に離れた部屋へ身を隠した。
そのまま逃げるには目立ちすぎる上に場所を選ぶ余裕もなく、小部屋に潜むしかなかった。
彼らの声はよく響いていた。
そのため、離れた場所からでも会話を聞き取ることができた。
(リーリ、もう少し詰めてください。本が崩れ落ちてきそうです)
(無理だよ。体を寄せるスペースがもうない。一杯一杯だよ)
(でも、本が落ちてきそうです。そうなったら、ここにいるのがバレちゃいますよ)
(動かなければ大丈夫)
そしていると、プーミが落ちてきそうな本を束ねてくれた。
「二人とも、ゴソゴソしていると見つかってしまうわ」
「そ、そうですね」
「彼らは侵入者を探している。長居はできないわ」
「分かっています。ユイ、出口までの最短ルートを計算できる?隙を見て抜け出そう」
「はい、分かりました」
リーリはゴーリッキたちの動きを注視した。
影がゴーリッキの姿をより大きく見せていた。
リーリはギーリク大図書館を訪れる前に見たゴーリッキの演舞を忘れていない。演舞について何も知らないリーリが引き込まれるほどゴーリッキのそれは凄かった。ゴーリッキが自分たちを捕まえようとすれば逃げられないだろう。
「リーリ君はあの大きい人を知っているの?」
「いいえ。謝肉祭が始まる前に行った彼の演舞を見ただけです。見ただけですが、自分にも分かるくらい見事な演舞でした」
「そうなの。それなら、〈魔法使い〉と〈機械技師〉と〈機械人形〉とが彼と戦ってもどうしようもなさそうね」
冗談じゃない。
ユイがゴーリッキと戦ったら粉々にされてしまうだろう。自分だって骨があちこち折れるぐらい吹っ飛ばされるかもしれない。
ユイが自分の前から消えてしまう。
もしそうなれば、自分は耐えられないだろう。
「プーミさん」
「待って、静かに」
そのとき、プーミの魔法(?)と同じ光が古文書を保管していた部屋の扉から発せられた。




