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ピッカピカ

「ユイ、どう?」

 ユイは目を閉じると聴覚と触覚を拡張した。

「周辺に仕掛けのようなものは見当たりません。それに、監視されている気配も感じられません」

「扉自体に仕掛けはない?」

「特別変な感じはありません。普通の扉だと思います」

 リーリはユイの返事を聞くと扉に触れようとした。


「待って、リーリ君!」

「!?」


 リーリは腕に力を込めて扉を押し開けようとした。

 その瞬間、扉全体から淡い光が溢れだした。

「何だ?」

 光はリーリの腕にまとわりつき、リーリの体を包んだ。

 リーリは驚いて扉から手を離した。


「リーリ、大丈夫ですか?」

「うん、何ともなさそう」

「リーリ、ピッカピカですよ」

「ピッカピカかだね」

 ユイは笑っていた。

 リーリも光輝く自分が何だか可笑しかった。


「魔法装置ね」

「魔法装置?」

「あらかじめ魔法が仕込まれてあるハコのことよ。《星集め》の遺産を守るために使われていることが時々あるのよ。悪戯みたいなものもあれば、大掛かりなモノが仕掛けられてある場合もある。それらのほとんどは、時が過ぎると本来の役割を果たす前に朽ちてしまうわ。けれども、この扉にかかっている魔法のように、今でも現役のままのものも稀にある。きっと、ギーリク大図書館の人達がメンテナンスをしているのね」

「初めて聴きました」

「魔法装置は作動する前に壊れてしまうことが多いのよ。だから、人目に触れることがほとんどないの」

「その魔法装置が作動するとどうなんですか?」

「扉が閉じてしまったんじゃないかしら?」

 ユイはその言葉を聞くと扉を押したり引いたりした。

「本当です。ビクともしません。ユイが見た限り錠は掛かっていませんでした。それなのに、ガタガタと動くこともないです。不思議です」

「リーリ君もユイちゃんも下がっていて。私がなんとかするわ」

 リーリとユイは素直に後ろに下がった。

「リーリ君、体に痛みとか変なところはない?」

 リーリにまとわりついていた光は少しずつ弱まっていた。

「ありません。ただ光が体全体を覆っただけのようです」

「それなら、この扉に施されていた魔法はただの鍵だったということね。魔法装置を解除しなければ扉は開きません、と言うメッセージよ。侵入者対策なら体が光るぐらいじゃ済まないわ」

 プーミは扉に施された何かの模様を調べていた。


 複雑な模様が施されている。

 鳥、蛇、猿。

 それらが混じった生き物のようだった。


 リーリはその模様をマナに関する情報を漁っていたときに見た気がした。

 確か、マナを食らう邪悪な生き物だった気がする。

 鳥は警戒を示し、蛇は狡猾さを示し、猿は卑怯を示す。

 マナを説明した絵本に載っていたと思う。

 名前はリビル


 反対側の扉にはリビルを倒す勇者が描かれていた。

 盾、鎧、剣。

 よくある勇者の姿だった。

 盾は連携を示し、鎧は愚直を示し、剣は勇気を示す。

 名前はテイン。


 マナに関わる模様が描かれている。

 この扉の向こうに古文書があるということだろうか。

 リーリには何もできることがなく、プーミを見守るぐらいしかできなかった。

 プーミは例の輝く文字を何度か空中に走らせた。すると、扉全体が仄かに輝始めたと思うと、パッと光が弾けた。


「今度はリーリ君の番よ」

「??」

「魔法装置は解除したけれど、まだ扉が開いたわけじゃないわ」

「プーミの言う通りです。電磁錠が使われています。光が弾け飛んだ瞬間、ユイの触覚に反応がありました」


 もう一度扉に触れると先ほどの岩のような重さが外れていた。

 リーリにはプーミが何をしたのか分からなかった。

 プーミ一人だけ納得したようで、リーリは狐につままれたような気持ちになった。

 何をしたのか詳しく聞きたい。

 しかし、今度は自分の番だという視線がユイとプーミとから感じられた。

 電磁錠を外せるのは自分だけだ。

 

「リーリ君。私も一緒にいれば役に立つこともあるでしょ?」

 プーミは満面の笑みでパンパンとリーリの肩を叩いた。

 リーリはプーミの言葉にため息をついた。

「ユイ。手伝ってくれる?」

 ユイは笑顔でうなずいた。


 部屋は真っ暗闇だった。

 真っ暗闇、という言い方がピッタリの窓もない、明かりもない、空気の流れも感じられない部屋だった。リーリはカバンの中をゴソゴソ探り、念のために用意しておいた携帯ランプを取り出した。

 手探りで探すとスイッチを入れた。

 その瞬間、オレンジ色の光が部屋一面に広がった。

「暗い穴から脱出したって感じね」

 プーミはまぶしそうに携帯ランプを見つめた。

「眩しいですか?」

「大丈夫。私の線香文字より便利よね」

 明かりを灯して広がった視界には古びた部屋が映った。

 中世風のギーリク大図書館の中にあって、さらに古めかしい雰囲気が待っていた。

 いつ頃の部屋なんだろう。時間が閉じ込められたまま眠りについてしまった感じだ。訪れる人も疎らで世間から忘れ去られた場所になってしまっているのだろうか。


 どうしてギーリク大図書館の地下にこのような部屋が設けられているのだろう?


「リーリ、見てください。部屋の真ん中に何かあります」


 部屋の中心にガラスケース。

 そして、一冊の本が展示されていた。


 その側には展示物である本の写本が置かれていた。

 小さなプレートに文字が彫られていた。


《古文書》


 と、彫られていた。

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