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それはナンセンスです

 リーリはプーミの言うことの半分だけ分かる気がした。

 プーミの言うように、今の世界ではコンマ何秒という間に玉石混合の情報が作られる。電脳空間には目もくらむぐらい有象無象の情報がこの瞬間にも溢れかえっている。そして、本当に役立つものはその中の本の一握りだけだ。リーリも経験としてそれを分かっている。

同じように情報や知識の宝庫であるギーリク大図書館と比べれば月とスッポンだ。ギーリク大図書館から一歩外に出れば、プーミの言うリューレの理想や夢の形と程遠い世界が広がっている。

 情報の海の中を泳ぐ今を生きる人たちからすれば、役立たない知識はガラクタ同然なんだろう。

 でも、機械技師の端くれであるリーリとしてはプーミの感じ方に違和感を憶えるところもあった。

 目的のない知識があっていい。何かの知識を必要とするかしないかは誰かに決められることではない。自分で決めることだ。

 当てのない思想の旅に出て、答えのない問題に取り組むことは楽しいし、面白いし、素敵なことだ。その結果がガラクタでも意味はある。

 好奇心に突き動かされて進み続けた先にある何かに、『役立つ』とか『役立たない』とか、そんなことを求めるのはナンセンスだ。

 結果として生まれた知識が全てではない。

 その道程を本気で辿ることが一番大切なことだ。

 目に見えるものが全てではない。

 リーリは経験からそう学んだ。

「リーリ、プーミ。マナ教の人たちは立ち去った様です」

「彼らはどこに向かった?」

「私たちが目指す部屋とは反対方向ですね。どこに行こうとしているのかまでは・・・チョット分かりません」

「今のうちに地下に行こう」

 リーリはプーミに質問したいことがあった。でも、ユイの言葉で頭を切り替えた。

 館内に人がいるのならば呑気にしていられない。

 リーリは立ち上がると静かに地下への階段を降りた。

 ユイもプーミも無言で後に続いた。


 館内に入ってからどれ位の時間が経ったのだろう。

 三十分、一時間、もしかするともっと時間は経っているのかもしれない。

 リーリは館内を長い時間歩き続けることを想像していなかった。

「ユイ、あとどれくらい掛かりそう?」

「もうすぐですよ」

 地下に降りてからも同じ景色が続いていた。

 世界最大の図書館と言う通りどこまで歩いても本の山だった。

 薄暗い通路でも、途方もない本が置かれているのが分かった。

 棚には溢れそうなほど本が揃えられている。

 ギーリク大図書館でさえ世界にある本の全ての数パーセントしか揃えられていないと言われていた。それでも、ギーリク大図書館の創立者リューレの思いは、今尚、誰かに引き継がれているんだろう。

 自分がこうしてリューレの遺産の中を歩いている。

 リーリはそれが奇跡のように思えた。

 リューレの夢は(プーミによれば)世の中の知識を集めることだったらしい。

 リューレの時代に機械人形は存在しなかった。そして、機械人形であれば知識を集めるだけでなく全てを憶えることも不可能でない。

 もし、リューレがユイを知れば何を言うだろう。

 ただの人形というのか。

 それとも別の何かだと言うのか。


「リーリ、この先です」


 ユイは落ち着いた口調で言った。


 角を曲がった先に、細かな彫刻が施された凝った扉があった。

 そして、扉の中心には五芒星が描かれていた。

 古文書が保管されているとは何処にも書かれていない。けれども、これまでと異なる雰囲気は特別な何かが保管されていることを示していた。

 古文書だろうか?

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