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星降る夜

 星降る夜、という言葉をリーリは思い浮かべた。

 宿屋から見上げた満天の空は天に覆いかぶさるキラキラ傘のようだった。

 街の中から見上げるそれは渾天儀の中心から覗くような丸い空だった。

 本当に星が地上に落ちる、なんて事はもちろんない。

 日が昇る時の空は雲が高い場所を漂うだけの無愛想なものだけれども、夜の空は太陽光に隠されていた星が主役となる。

 そして、星の輝きが不思議で妖しい光として迫ってくるような雰囲気を漂わせている。

 ジッと星を見つめていると、星の輝きが段々と大きくなる。そうすると、その輝きは遠くの星に住んでいるかもしれない人たちからの『こんにちは』という挨拶のような気がしてくる。

 リーリは、そんな夜空を単に《綺麗》と陳腐な言葉で片付けてしまうのをもったいないと思った。

 流れ行く星空、と言う方がピッタリだ。

「夜になると冷えるね」

 リーリは自分の吐く白い息を見てつぶやいた。

「もうすぐ冬がやって来ますから。暖かい冬なんてあったら気持ちが悪いです、リーリ」

 ユイは手足が冷えないように、分厚い靴下と、手先まで覆う袖の長いジャケットに着替えていた。軽い上着とマフラーを羽織っているだけのリーリは、準備の良いユイの姿が微笑ましかった。

 リーリ自身は、ギーリク大図書館に忍び込むために必要な道具はなんだろ、電子スキャナ、電子解読コード、ドライバー、あれやこれやと頭を悩ませる事に一所懸命だった。

 リーリは夜の冷えた空気を吸い込んだ瞬間、ブルブルと体を震わせた。

「そうだけれど、実際に冬が近づくと暖い季節が恋しくなってしまうものだよ。冷たい風の吹く中を歩きたくないからね」

「仕方ないですよ、ここは南国ではないのですから。叶わないわがままを口にしたって仕様がないです」

 ユイの口調はやれやれといった感じだった。

 重たいカバンを背負いながらリーリは『暖かい格好に身を包んでいるからそう思うんだよ』と心の中で愚痴った。

「そのカバンには図書館へ入るための道具が入っているのですよね?」

「うん。図書館を去る前に調べておいたんだ。さすがに、正面玄関から忍び込むこむことは出来ないからね。ギーリク大図書館へ入るための裏口は電子ロック錠だった。そこからならば入ることが出来ると思う」

「そう・・・ですか」

 ユイはゆっくりとリーリの側を歩いていた。

 夜の風がユイの短めのスカートをほのかに揺らした。

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