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始まりの鐘

「あれ?図書館に入った時と比べると、随分と人が増えていますね」

「そうだね」

「リーリ、ホットドッグが売っていますよ」

「うん」

 ユイは素っ気ないリーリに構わずホットドッグを売っている屋台へ走った。

 ユイの言う通り中央広場は沢山の人で溢れていた。きっと、謝肉祭のスタートを今か今かと待ちわびている人たちなんだろう。

 時計台を見ると、時刻は謝肉祭の始まりの時を示していた。

 広場の真ん中には、バイオリン、トランペット、ピアノを揃えた音楽隊が楽しそうにリーリの知らない音楽を奏でていた。

 その時、広場の中心に建つ時計塔の大きな鐘が鳴らされた。

 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 大きな金属音がコーバリを包み、謝肉祭の始まりを告げた。

 鐘の音の残響に混じり、パラパラと拍手が鳴っていた。

「リーリ、おいしそうなホットドッグですよ」

「二つも買ったの?」

「リーリがショボくれているからですよ。はい、これでも食べて元気だしましょう。腹が減っては何と何とかですよ」

「お腹は減っていないし、ショボくれてもいない」

 リーリはそう言ったけれど、素直にユイが買ってくれたホットドッグを受け取った。

 ピリッとしたマスタードが少し辛く感じた。ケチャップは濃い味だけど甘かった。

 ユイの言う通り、お腹一杯になれば腹立たしさも少し紛れた。

「ユイ。今夜、ギーリク大図書館に忍び込もう」

 ユイはホットドッグを頬張りながらリーリの言葉を聴いた。

 そして、何も言い返さず、普段見ることのない屋台に並ぶ食べ物やおもちゃを珍しそうに見て回っていた。


 ユイには感情がある。

 人工的に造られた感情。

 人のそれとは違い、プログラムされた機械的な喜怒哀楽。

 与えたのはリーリ自身。

 リーリはユイに、どうして自分がマナを追い求めているのか言ったことはなかった。

 ユイもどうしてなのか尋ねはしない。

 〈ただ、自分が必要なのだろう〉

 リーリはユイがそう思っていると考えていた。

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