ダイヤモンド
「リーリ、古文書の閲覧許可を得られたのですか?」
「ダメだった」
リーリはどかっとユイの側の椅子に体を放り出すと、腹を立て言った。
「どうしてですか?」
「閲覧の申請には推薦が必要です。マナ教徒以外の人には公開することは出来ません、って受付の女性に恐い顔で言われたよ。どこにもそんなこと書いてないじゃないか、って文句を言ったけれど梨の礫だった」
古文書は世界にその名を誇るギーリク大図書館の中でも特別な本だ。
ただ単に、古い本というだけ人々を惹きつけるわけではない。
古文書に書かれている中身が大切だ。
マナ。
マナ教とマナ教徒にとってはダイヤモンドより大切なもの。
他の人々にとっては怪しげで意味のない言葉。
命。星。サイクル。
自然の成り立ちを説明するための言葉として重宝される。
例えば、人の死後の世界をマナの世界と呼ぶ。
例えば、寿命が尽きることをマナが消えるという。
例えば、人が生まれることをマナが宿るという。
便利な言葉だ。
命という難しいことについてはぐらかすにはもってこいの言葉だ。
でも、マナとは何か。
リーリは納得出来る答えを見つけられずにいる。
そして、古文書にはマナについて《何か》が記されているとされていた。
その古文書に手が届かない。
リーリは絶対に引き下がることが出来なかった。
「一旦、図書館を出よう」
「・・・はい」
ユイの視線が、古文書を諦めるのですか、と背中に問いかけていた。
ユイは素直に応じるだけで、特に何も言わなかった。
ユイも自分の古文書を読みたいという思いを感じているはずだろう。
「古文書は必ず手に入れる」
リーリはユイの何も尋ねない雰囲気を察して先回りして言った。




