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第四話 どうも奴隷を解放するらしい

らしいよ?


朝だった。


僕のベッドのシーツに僅かに血が染まっていた。

そしてリースロット姫は僕に背を向けて

ボンヤリしている。


挿絵(By みてみん)


僕は彼女にかける言葉も無い。

これは計画的な犯行。

僕の中では必要なプロセスだったからだ。


「貴方…本当に甘い人なのね…

 もっと酷くされるのかと思ったけど…」


そう言って彼女は涙を溢れさせていた。


「強引に無茶苦茶するの…

 まだ慣れて無いだけだよ、きっと…」


言って僕は頭をかく。


「私の無力を貴方が咎めてくれるなら

 それでも良いって思ってたのに…

 逆に優しくされると、辛いじゃない…」


彼女は言って、そこで泣き始めた。


「君が無力かどうかは

 まだ決めつける事じゃない。

 君には立場がある。

 そして僕にも立場がある。

 なら、やってみる価値がある事も、

 あると思うんだ」


僕はぼんやりと、そう言った。


「え?」


そんな僕の言葉に驚く彼女。


「妬いて良いですか?」

「そうです!王子様!」


そんな時、2人の嫁がそこに入って来た。


「うっ!ひ、姫! 見てたの!」


怒っている顔の二人を見て、

僕は違う意味で”やっちまった事”に怯えた。

なのに次の瞬間には二人は笑った。


「何をし出すのかと思って

 最初は、ただ新しい子に

 喜んでるってだけかと

 ハラハラしましたけど…」

「王子の顔が必死過ぎなんで

 なんとなく分かっちゃいしまいました!」


「え?」「え?」


嫁姫の二人が満面の笑みでそう言う。

僕とリースロット姫は別別の意味で

驚いた顔をするしかなかった。


「まだ、夫婦になって短いですけれど

 それでもずっと王宮で一緒に過ごして来た

 私達ですもの…

 なんとなく、何がしたいのか

 わかっちゃいましたよ」

「王子、そんな馬鹿な事

 本気で考えてやろうとするから

 私、王子様の事、やっぱり大好きです!」


言って二人はやっぱり笑みを浮かべる。

しかし…


「まぁそれと嫉妬心は別です!

 やりたい事やってきたら

 今度は私達の相手をして下さいね!

 一晩もお預け食らって

 あんなのずっと聞かされたら

 その……」

「王子!早く、やりたい事してきて

 今度は私達にも…です!」


そうまた不機嫌そうな顔になって

また赤くなってモジモジしていた。

そう二人は僕の背中を押してくれた。

その声援に僕は、思わず泣きそうになる。


『私が無くても、やれる事もあるだろう?

 少なくとも、その2人の言葉は

 私がした事じゃなく、お前がした事から

 生まれた言葉だからな?』


念話で神剣がそう言ってきた。

神剣はどうも、何でも見通せるらしい。

嫌な奴だ。

でもその言葉で、

僕は”次”への思いに吹っ切れた。


「なんだかアレだけど

 リースロット姫、君を利用させて貰う

 ごめんね!」


「え!?」


彼女は驚いた声を上げたけど

僕はそんなの無視して

彼女をお姫様だっこで抱き抱えて

王座の前に突撃していった。



「父よ!」


「王子…どうし…

 なんだ…その子は!?

 そんなボロな奴隷の娘を

 そんなあられもない姿で抱えて…

 はて、しかし、

 何処かでその娘、見覚えが…」


「彼女はジキスムント王国の姫

 リースロット姫です!」


「何だと!ジキスムントの!?

 いや確かに、言われれば

 リースロット姫…

 それがどうして、お前と…」


「経緯はどうでもいいです。

 僕は彼女を第三王妃に迎え

 ジキスムントの王族と婚姻する事で

 ジキスムントの王になります!」


「なんだと!?」「え!?」


王とリースロットの二人は僕の言葉に

やはり同時に驚いた。


「父から、あの領土を僕が貰います。

 その為に彼女と契りを交わしました!」


「何!?」「ええ!?」


二人は突然の僕のその言葉にただ驚くしなかった。

しかし僕はこのテンションを止めれなかった。


「本気です!

 僕はあの領土を父から貰います!

 父がそれを止めるなら

 僕は神剣を使って、

 この国の国民を皆殺しにしてでも

 あの国の王に戴冠します!」


僕はそう息巻いた。


『無茶を言うな…

 まぁできん事もないがな…』


神剣は念話でそう笑っていた。


「王子、それは本気で言っているのか!」


「ええ、本気ですよ!

 ジキスムントの王に戴冠し

 あの国の国民の奴隷化を開放します!

 何故なら、

 今日から僕は、ジキスムントの王!

 リースロット姫を娶ったので

 正統な継承権があります!

 なれば、自分の国民を隷属させる

 馬鹿な王が居りますか!」


僕はそう言って父を睨んだ。

その目を見て父は唸る。


「もう一度尋ねる!

 それはお前の本心で言っている事なのか!

 その奴隷の姫に拐かされたのではないか?」


「そんな!!」


父の嫌疑の言葉にリースロット姫の方が震える。


「本心です!

 それとも、今、ここで貴方を切って

 僕の覚悟を知りますか!

 来い!アーデルト!」


僕はそう言って神剣を声で召喚し

それを手の中に握った。


『神剣使いが荒いな…お前は…』


神剣は律儀に僕の芝居に合わせて

その手の中に現れてくれては、そう笑う。

僕はその剣を向けて、父に迫った。

その僕を、父はじっと睨み

何かを考えているようだった。

そしてその後に、口を開いた。


「いい目をしている…

 今まで、神剣を持たお前は

 力は最強だったが

 どうしてか、目だけが死んでいた…

 だが、今のお前の目は

 男の目をしている…

 それも、王の目だ…」


そう言って父は、ふふっと笑った。


「よかろう

 ジキスムントの併合は

 私も頭痛の種だったのだ…

 やってみろ…

 やがてはお前は、

 私の王座を継がねばならんのだ。

 なれば併合した一王国の

 その王くらいはやってみせろ!」


挿絵(By みてみん)


父王は、その時、僕の目を見てそう言った。

その言葉を受けて、

思わず僕の目に涙が浮かんだ。


(まぁ、良平は、やれば出来る子なんだから

 なぁ母さん、成績が今は伸びなくても

 頑張れば、そのウチに…な? な?)


あっちの世界に居た時の、

あっちの父の言葉が不意に思い出された。


「はい、頑張るのは今です。

 だから、やらせて下さい。

 お父さん…」


僕は思わず泣きながら、そう言った。


リースロット姫は、そんなあまりの急展開に

ただただ、僕の腕の中で困惑するだけだった。





そして僕は、ジキスムント王国の王に戴冠した。

リースロット姫を王妃に娶り

ジキスムント王国の王城に居を構える事になる。


ただ…


物凄くー、怒った2人の嫁姫が

ジキスムントの王城に、一緒に付いてきた。


まぁ冷静に考えれば、そうなるか…。

そうですよねーー、ええ。


でも懸念もある。


「神剣、僕だけじゃなく

 僕の嫁の身も守ってくれないか?

 勝手な言い分なのは分かっている

 でも…」


『ふむ…リンカーンは暗殺されたからな。

 まぁ私もお前の行く末を、見て見たい。

 いいだろう…

 守る範囲が増えるだけだ。

 魔族とやるよりは

 人間なんぞを相手にするのはまだ楽だ。

 やれるだけ、やってみろ

 失敗は、成功の母だ…』


神剣はそう言ってくれた。

嫌な奴だが、それでも一番助かる相棒だ。

僕はそれに感謝した。


そして僕はジキスムントの王に戴冠し

国民の奴隷解放宣言を出した。



その後、僕は

解放王という名前をつけられた、らしい…。



『まぁリンカーンは全くの善意で

 やったわけじゃないんだがな…

 今のお前のそれは、甘ったるすぎる

 ただの子供じみた善意だな…』


神剣は、突然、王になった僕のそれを

そう言って笑ったのだった。


四話で戴冠か、なんか超速だなw

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