第五話 どうも病院らしい
らしいよ?
困った…
流石に三人の嫁姫も
僕と一緒に執務室で頭を抱えている。
執政体制は、強行派の残党貴族を神剣で駆逐して
リースロット姫の戦争回避に賛同した
穏健派の家臣を集めては、なんとか形を作った。
なにせ、戦勝国の王子が自国の姫と結婚して
王座に就いたのだ。
その落とし所には流石に誰も文句は言えず
それで奴隷解放となったので、
ジキスムントの国民は歓迎した。
リーナ姫のトーデュ国も
エリン姫のジーネン国も
僕がジキスムントの王に戴冠したのに
不平不満はあったが、
自国の姫が一緒について行ったのと
戦後補償で賠償金をジキスムントが
二国に払うことになったので
このまま、ずっと隷属もマズかろうと
何とか納得してくれた。
親の仕送りのなんとやらで
当座困る食料とかは、本国が融通してくれた。
しかし最低限。
父の言葉では
国事の難易を、思い知るが良い
お前にはいい勉強だ、との事らしい。
ともあれ敗戦で荒廃したとはいえ
国の立て直しにかかる、この王国。
僕はアレキサンダー大王に習って
母国文化を押しつけるような事をせず
むしろ、この国の様式に合わせた衣装にして、
みんなの心の安心は作った。
しかし…今の緊急の問題は
”疫病”だった…。
荒廃したこの大地に、
今、困った疫病が蔓延していたのだった。
「あの、病気を治す僧侶とか…
そういうの…ないのかな?」
「いえ、居ますけど…
各国のそれは重要な医療機関…
どこの国も、僧侶は貸してくれません…
何より、僧侶になれるのは一握り
一日で治せる人数には限界が…」
そう言ってリーナ姫が頭を抱える。
「あの戦争で、戦傷兵を治す為に
前線にこの国の僧侶を出したのが
失敗なんです…
後先考えずに、国の威信にかけてとか…」
言ってリースロット姫が嘆いた。
「私、お父様に頼み込んで
食料の融通を密かにお願いしてるのですけど…
でも、病人の栄養を補っても
病気の元を絶たないと…」
言ってエリン姫も細やかな心使いで
憂いの一つをサポートしてくれてるモノの
緊急のこれには打つ手がない様だった。
『やむおえんな…
チートに頼るしかあるまい?』
その苦境に神剣がそう言ってきた。
「ハァ…
あの辞書に、また助けて貰うのか…」
そう言って僕は、
あの辞書に向かうしかないのだった。
僕は、今、
国民に起きている疫病の現象を元に
それに該当する病気は何であるかと
あの辞書に尋ねて調べるしかなかった。
あの皮膚が黒くなる致死率の高い病気…
辞書は答えた。
黒死病
ペスト菌により生じる伝染病。
罹患すると皮膚が黒くなる事から
黒死病と呼ばれ恐れられた。
腺ペストで致死率50%~70%。
肺ペストにおいては100%の場合もある。
ペスト敗血症と呼ばれる敗血症が起きると
皮膚のあちこちで黒いあざが出来
これが皮膚黒化の由来と成る。
14世紀のヨーロッパではペストの大流行により
全人口の約三割の命が失われた。
死者数はおよそ
2000万から3000万と言われる。
「は!?ヨーロッパ全人口の3割が死んだ!?
およそ、2000万から3000万!?」
感染媒介はネズミ。
ペスト菌はネズミを媒介に
ペスト菌に感染したネズミの
血を吸ったノミが人の血を吸う事で
人に感染し、そのルートで伝染する。
1943年に結核などの治療薬として
作られた抗生物質
「ストレプトマイシン」等によって
薬物対抗手段を得た。
副作用はあるが基本的に全種のペストに有効。
基本的な対抗手段は、「予防」
予めの「ワクチン」の接種が常套手段。
発病病人には「隔離」が必須。
隔離をしない場合、感染は拡大する一方と成る。
「ちょっ!
ストレプトマイシンとかワクチンとか
この世界で作れるわけねーじゃん!!」
その辞書の無慈悲な情報に
僕は絶叫するしかなかった。
辞書が最後に答える。
特記事項
薬物対抗手段が得られない時代において
衛生が悪い井戸などにペストの流行性が高いのを
統計的に調べた者が井戸の浄化を試みる。
感染媒介であるネズミの駆逐が因子であったが
因子不明なれど、検疫の効果があり
流行の拡大を防止したと言われる。
辞書が最後にそう語った。
「それだ!!」
僕はそれを知ると、急いで走って
執務室に号令をかけた。
「井戸のネズミを浄化して
病気の拡大を防ぐんだ!!
これは、放置すればこの国だけじゃない
周辺国を巻き込む大災害になる!!
病人は、惨いようでも隔離!!」
僕は執務室で頭を抱えている
三人の姫とみんなに、そう絶叫した。
「え?」
あまりに突然の事に驚くみんな。
「このままじゃ、いっぱい、いっぱい
人が死ぬんだよ!!
とにかく、井戸を綺麗にするんだ!
王命である!
ただちに実行せよ!!
それと、宮廷魔法使い!」
僕は、なけなしに父王が配備してくれていた
宮廷魔術師を呼んだ。
「は、陛下…」
「飛翔の魔法で僕を、
カールスント公国に飛ばしてくれ!!」
「カールスント公国!?
あの宗教国家にですか!」
「時間が無い!
説明してる場合じゃない!!
とにかく、僕を飛翔の魔法で連れてってくれ!」
僕は王命を使って、宮廷魔術師を連れて
飛翔の魔法でカールスント公国に飛んでいった。
そして国の警備も無視して、
公王の前に強引にでも飛び込む。
「英雄の王が、この国の待合の順序も守らず
土足で王座に来るとは、何事ですかな?」
その公王が座っている玉座で
僕は礼儀作法もなくおもむろに土下座する。
「公王、この国の僧侶を至急
私に貸して頂きたい!!
我が国で流行っている病は
我が国だけの事ではない
恐ろしい病気なのです!
無礼は承知の上。
しかし、手遅れになれば
我が国の国民だけでなく
何万という者が死ぬのです!
何卒、何卒、
私の我が儘をお聞き入れ下さい!」
そう言って僕は床に頭を擦りつけて
公王にペストを治癒できる僧侶を
貸与して貰う事を願うしかなかった。
「謝礼なら、幾らでも後で融通します!
今は時間との戦いなのです!
何卒!何卒!」
僕はしゃにむにそう土下座で頼み込んだ。
「皮膚が黒くなる病ですな?」
その時、公王がそう言ってきた。
「公王はペストを御存知なので?」
その言葉に僕は顔を上げる。
「ほう、あれはペストという名なのですか?
それは、知りませんでしたな…
黒く皮膚が変色して死ぬ病気
”黒死の悪魔”と我々は古来から呼んでおりますが…
どういう事は分かりませんが
英雄王、解放王は、
我等以上に、深淵の知識をお持ちの様だ…
流石は、神剣で、この世を守られる御方…
良いでしょう。
仰るとおり、あの病は、
放置すれば周辺国に酷い被害の出る難病…
我が国も、古来より、あの病に
国家僧侶総出で、戦って来ました。
これは他人事ではありません。
ジキスムントのした愚かな事とはいえ
戦勝国の王子で、その王である貴方が
それでも敗戦国の民を思って
私に頭を床に擦りつけてでも下げる。
とても凡俗の王族に、出来る事ではありますまい。
その王者の慈悲に感服しました。
なれば、緊急に手配しましょう…」
そう言って公王は周辺の者を呼び
手早く高位僧侶の手配を指示していく。
「公王!!」
僕はその返事に顔を明るくさせる。
「ふむ、そうですな…
この謝礼は…貴方が知り得る
ペストなる病気の知識…
それでお互いに、手を打ちませんかな?」
言ってその公王は僕にウィンクをして笑った。
その時、不意に僕の記憶が蘇る。
(「良平、泣いてばかりじゃ駄目でしょう?
ちゃんと予防注射しないと
病気になって死んでしまうのよ?」)
そう言って母さんが、予防注射の針に泣きわめく
僕を諭していた時の事を思い出したのだった。
僕は、その公王の言葉と
思い出した母のその言葉に、
思わずそこで泣き始めるしかなかった。
そして公王の緊急の英断によって
公国の高位僧侶は派遣され、隔離された病人への
魔法医療によって
なんとか起きる可能性大であった大災害に対して
事なきを得た。
僕は、公王にその知識を伝え
昔から現れては、僧侶が大わらわになる
その難病について、その性質を知らしめる。
その知識に公王も驚き、
緊急に井戸やネズミ等の
検疫を始めていく事になった。
僕は配下の者に全てを任せるのではなく
自分自身も井戸の浄化を手伝った。
何せ神剣がバリアを張ってくれる特別待遇なのだ。
検疫を行ってる検疫官が病気になったら洒落にならない。
ある一種の病気に対して無敵な僕が、一番適任であった。
周囲の人間は慌てたが、そこは適材適所だ。
公王が金髪碧眼の両お下げの女僧侶さんを手伝いにつけてくれて、
僕はその僧侶さんに知り得る限りの知識を伝えて
二人で井戸を走りまくって浄化の魔法や消毒液を
ジキスムントの首都に、まきまくった。
嫁姫達も参加したそうだったけど、こればっかりは危ない。
神剣のバリアは、流石に、せいぜい僕の半径いくらか程度
僧侶のおねーさんと二人ぐらいが限界だし
僧侶のおねーさんの浄化の魔法は、嫁達には使えないし…
って事で、二人で気さくに会話しながら
「陛下、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、これくらい!
というか、急がないと死者が増えますから!」
「ふふ、ジキスムントは羨ましいですね…
こんな懸命な王が、これから統治してくれるのですから…」
「出来る事をしてるだけですよ…」
「人類の英雄、魔王に対する切り札の陛下なのに…」
「でも治める国の民が死んだら、魔王を倒しても何の意味も無いですし」
「まぁ!」
みたいな会話を織り交ぜて…
井戸を下水を浄化してたのだった。
そんな光景を見ていたジキスムントの首都の人々は
病に苦しみながらも、カールスント公国から派遣された
高位の僧侶の治癒を受けながら、僕の雄姿に感動したらしい。
”黒死の悪魔を駆逐せし者”
検疫知識の伝授により、そんな称号を僕は公王に与えられ
僕の浄化作業を見ていたジキスムント首都の民から
そう自然に呼ばれる様になった。
僕は首都での病の治療と浄化作業をひとまず終えた後
簡易でもいいので、国立病院を建設する事を、
国務事業として指示する。
ペストの致命的拡大は防いだが、治療を受けれない民は多い。
なので、それらを一所に集め、感染拡大を防ぎながら
集中治療を同時に行ったのだった。
どうも、僕はチートによって
どんどんこの世界で英雄になっている…らしい…
『私は今回、辞書を見れば?
と助言した以外、
何にもしてないからな?
知識を得て、
これを為したのはお前自身の業績だ』
神剣はそう言って、
バリア以外は完全に役立たずだった事に
少し、腐っていたようだった。
なんかもう、5,6,7話って書いてるんだけど
だんだんシムシティみたいになってきた…
なんだコレwww
8話でもっとワカラン方向に飛ぶし…
でも5万文字が目安なら、少しうろうろしても余裕があるというか…




