08「最悪な結末」
08「最悪な結末」
人間に捕らえられた私は、『寄生虫がいるかもしれないから』と
人間に薬剤を散布され・・・それが目に入り、私はその痛みで暴れ
暴れた為に、それを吸い込んで咳き込み動けなくなった
私は目を痛めて、涙を流し続け
大きく呼吸できないくらい…
咽喉の奥から肺にかけての場所に、重量感と存在感を実感できる程の
乾いていくように熱く、チリチリと焼かれるみたいな痛みと苦しみ
血の様な味のする自分の吐息を感じ、死ぬかもしれないと思った。
更に、人間は容赦なく・・・
手で薬剤を私の体に、羽の下の羽毛にまで揉み込んできた
小さく軋む音を立てて無理な方向に押し曲げられた羽の為に
痛みで私が悲鳴をあげても、人間達には伝わらなかった
私の羽が、今まで抜けた事が無いくらい抜け落ちていく。
そんな悲惨な状態の私を人間は、冷たい水で洗い
私は、羽の内側にある羽毛までびしょびしょに濡らされて
夏とは言え、乾くまで放置されて凍えさせられて…
私は体調を大きく崩す・・・
咳をしては、激痛に耐えながら震え
大きく呼吸ができない為・・・
小さく浅く呼吸をして、回数で不足分を補った。
その後…私は風邪をひき、弱った状態で・・・
そのまま「予防接種」とやらを受けさせられて、普通に病気になる
私は気付くと、鳥籠の中の金網の上で倒れていた
体中の力が抜けて「手先・足先」から痺れる様な冷たさが
ジワリジワリと広がって
私は自力で、手足を動かせなくなった事を覚えている。
人間は「何故、鳥が弱るのか」が、理解出来ない様子で
『外れを引いた!折角、手元に残してやったのに恩知らずめ!』と
私を罵り、「餌」を食べないと言っては
私を素手で掴んで「餌」とやらを水でふやかして
私の咽喉の奥へと無理に押し込んだ
それは何度も何度も繰返されて、私は吐き気を堪えて過ごし
幾日か過ぎた頃・・・
私は人間の手で造られた柔らかい素材の鳥の巣の中で目を覚まし
目がよく見えない事に首を傾げた。
病の峠を越え・・・
ギリギリの線で生き残った私は「餌」と、言うのが
食べられる物だと言う事を…偶々、健康診断とやらで
連れて来られていたルスキニア王子様から聞いて知る事ができた
嘴で少し硬い殻を割って、食べる物らしい
私はその在処を必死に頑張って捜し
殻を割り、食べ…空腹を満たせるようになって
やっと、周囲の光景に目を向ける事ができるようになった。
前より見えなくなった目で、私は知りたくなかった
知らなければまだマシだったかもしれない現実を
少しづつ目の当たりにする様になる
自分を救い出す為にやってきた身内が、幾人も捕まり同じ目に
それ以外の同族や、それ以外の他の鳥達も
目の前で、自分と同じ事をされて無抵抗のまま死んでいく
「偶然、生き残った者達」は「値段」と、言う物を付けられ
人間同士の交渉の末、紙切れや丸い金属との交換で
何処かへ連れ去られて行った
そう言うのを「売り飛ばす」と、言うらしい
私を閉じ込めた鳥籠にも「値札」と、言うのが付いていて
買い手が付けば、売り飛ばされるらしい事を知る。
死んだ者達も、見栄えのする雄だけは腹を裂かれ綿を詰められて
同じ様に、紙切れや丸い金属とかとの交換で連れて行かれる
死体に何かしらして綿を詰める事を「剥製にする」と、言うらしい
剥製にされない者達は、剥製にされたの者の中身の…
血や肉と内臓と一緒にゴミとして処分されて行く
幽閉された場所で、死んでいく者達を見詰めながら
売り飛ばされて行く者達を眺めながら
私の所為で死んだり売り飛ばされる者を見付けては
私は泣き叫び、自分を責める様になっていた。
人間は、元の様な健康状態に戻らない私を罰するかの様に
私の目の前で、人間達のルールの中でも違法だと言う
無許可な剥製を「幸せを呼ぶ青い鳥」と呼んで作り続ける
数人の職人達が、死んだ者達の嘴の中に脱脂綿を押し込み
胸から腹にかけての羽毛の無い部分を開き、生皮を剥ぎながら
防腐処理を施しながら除肉し、中身を抜いて乾かし
形を整える為に新しい化学繊維の綿を詰めていく
鳥臭さと、吐き気を誘発する「死肉の臭いと薬剤の香り」の中
少しづつではあったが戻りつつあった私の体調が
また、悪くなっていく
泣き同族の死を嘆き続けた御蔭か
私の目だけは、前の様に見える様になってきた
そんな見える様になった中で、私の眼は・・・
できあがったばかりの剥製に釘付けになる
『プティラ兄?』言葉と共に、大粒の涙がまた零れ落ちた。
そこに並べられていたのは、私の兄貴達の剥製
番いの様に飾られた兄貴達や姉貴達の剥製もあれば
親戚の者達の剥製が単品で無数に存在していた・・・
皆それぞれ、体に化学繊維でできた綿をいっぱい詰め込まれ
二度と閉じる事の出来ない目玉には、硝子やアクリルの
偽物の綺麗な目玉が無理矢理に突っ込まれている
否応ない未曾有の苦しみが、私を捕らえる様に襲って来る
言葉にできない苦しみが悲鳴となって私から迸る
「神様、コレハ…天罰デスカ?
故意ニ軽イ気持チデ、身内トノ約束ヲ違エ続ケタ
私ノ罪ヘノ当然ノ罰ナノデスカ?ソコマデスル程ニ私ハ…
愚カデ、罪深カッタノデスカ?」
アクリルの目や硝子玉の目を私に向ける兄貴達を見て
自分の浅はかさを呪い私は許しを乞う様に
私は「歌う」と、言う事を始めた。
死んだ者達を悼み弔う旋律
残された者達を慰め、寄り添うメロディー
死んだ者だけの為では無く、残された者だけの為の物でもない
誰の為の物でもなく・・・
荒ぶる魂や、苦しみと悲しみに満ちた魂
平穏と安息を失った魂を鎮める為の鎮魂歌
私が幼き頃、両親が相次いで姿を消した為
プティラ兄が私を世話しながら、子守歌代わりに
私に歌って聞かせてくれていたレクイエムを今度は私が・・・
この場所で、死んでいった者達…これから此処で死んでいく者達…
残された者達の為に歌い続ける。
私の歌を聴いて、客達がざわめきだす…
一羽の大きな鳥が私を幽閉する鳥籠の前に降り立ち
私を閉じ込めた鳥籠から値札を外した
『やっと見付けた、御姫様!
もう、死んでしまったのかと思っていたよプティラの歌姫ちゃん
地味な羽根が更にみすぼらしくなっているね、可哀相に…』
緑や青に見える群青色を纏うエウリュストムス王子様が
オレンジ色の嘴の端を上げ微笑む
『ルスキニアから此処に居るって聞いて、ずっと探していたんだよ
さあ!これからは、王様の為だけに歌おうね!メラナちゃん』
低くひび割れた様な大きな鳴き声が響き
私は鳥籠と共に運ばれて行く
『嫌だ、私は兄貴達と一緒に居たい!連れて行かないで!』
私の訴えは誰に聞いて貰える事は無く、虚しく響いただけだった。
何でもかんでも、剥製にしてはイケナイってルールがある事を
皆さんは、御存知でしょうか?
市区町村によって、それぞれルールの基準が違うそうですが・・・
無許可で作ると、バレタ時に痛い目を見ますw
許可をとっても・・・
剥製を持って行った先のルール内に収まっていなければ
チェックが入った時に、酷い目に遭いますw
飼ってたペットが死んで、それを剥製にする場合も・・・
地域にどんなルールが存在するか確認した上で
必要な書類を集めてから剥製にしましょう!
業者に頼んだからって安心してはいけません!
因みに私は・・・剥製って好きになれないタイプの人間です。




