07「無智な小鳥」
07「無智な小鳥」
初夏から梅雨を越え、季節は真夏へと変化していく
私は、一日中降り続く雨の日以外
温室の屋根の上に欠かさず、舞い降りている
それもこれもプティラ兄が・・・
私の行動を容認する「事情を知らない姉貴達」や
私を過剰に心配する兄貴達、好奇心で訊いて来るだけの兄貴達にも
「私が何処へ行っているか」を絶対に言わず
誰にも告げず…教えずにいてくれているからである
プティラ兄は・・・
『無理強いしても無駄じゃないのか?
止めたら内緒で黙って一人で行ってしまうだけだろ?』と
付き添い役として一緒に、本来なら来てはイケナイ城へと
皆には内緒で、付き添って来てくれている
私はプティラ兄の手の中で、手に入れた自由に喜び
プティラ兄に感謝しながら、その自由を満喫していた。
そんな、自由を手に入れた私の・・・
『大好きになった王子様に会いに行って来る!』宣言の日から
私には、どうしても気になる事がある
私があの宣言をした日・・・
プティラ兄は後から私を追掛けて来て、私を押し退け…
プティラ王子様に対して『やっぱり、お前だったのか…』と
今まで見た事が無いくらい、辛そうな表情を見せたのだ
だけど今、あの日の翌日からは・・・
それを覗かせる処か、それ以来…プティラ兄は、それ以前の問題で
御城の城内の高い木の上までしか来ず
黙って静かに遠くから、私を見守ってくれているだけである
プティラ王子様もプティラ兄を見て
あの時だけは、同じくらい辛そうな表情をしていた。
プティラ兄とプティラ王子様は・・・
明らかに、ずっと以前から面識があるみたいだけど
プティラ兄もプティラ王子様も…私に何も教えてはくれない
謎だし…不思議だし…すっごく気にもなるけど
無理に訊き出そうとして・・・
プティラ兄に「もう、来ちゃ駄目!」って、言われるのも
プティラ王子様に「もう、来るな!」って、言われるのも嫌で
私は訊ねる事ができないままだった。
訊ねる事が出来ないまま…
茹だる様な暑さが、夜にも続く時期に突入し
何時の頃からか、森の中で仲間が消える事件が多発し出していた
時を同じくして、同じ種族同士の違う一座同士・・・
仲間を護る為、皆を護る為の巡回を持ち回りでするようになり
プティラ兄が、私を城へと送り迎えはしても…
プティラ兄が、ずっと一緒にいる事が少なくなっていく
私はプティラ兄に『うろうろすると、逆に危険だから』と
プティラ王子様の仕事の時間も温室の上で過ごす様になった。
その日は、たまたま
プティラ兄が見回りと、その事件についての一族会議に出る為
私は一人で、何時もの様にプティラ王子様の所に来ていた
何か特別な事がある訳ではないのに、ゆったりとした幸せな時間
プティラ王子様が仕事で、王様に呼び出された後も
私は温室の屋根の上で、今の幸せに浸り
小さな声で今の小さな幸せをメロディーに乗せて歌っていた。
但し今日は、プティラ王子様が王様の所に行ったのに
ルスキニア王子様とタルシゲル王子様が戻って来ない
私はその事を深く考える事無く、歌い続ける
私が1人で歌っていると・・・
光の加減で緑にも見える群青色を身に纏う大柄な者が
温室の中から私に声を掛けてきた
プティラ王子様・ルスキニア王子様・タルシゲル王子様以外の
王子様登場に私は心底驚いたけど、私は何も考えずに受け入れ
会話を弾ませる。
この城で、一番年上の王子だと言う「エウリュストムス」は
物知りで、城の中の事だけでなく外の事も何でも良く知っていた
『湖の近くの廃村の奥に
美味しい木の実が生る果樹園があるのは知っているかい?』
私が首を横に振ると、エウリュストムス王子様は微笑む
『私達は此処から出る事はできないんだ
良かったら、その果樹園から木の実を取って来てくれないかな?
私は勿論、プティラもルスキニアもタルシゲルも…
皆、そこにある木の実が大好物なんだよ』
一瞬、プティラ兄の・・・
『大人しく、そこにいろよ』と、言う言葉を思い出したけど
丁度、私も咽喉が渇いていたし…断る大きな理由も無かったので
私は迷う事無く『それじゃ、今から取りに行って来るよ!』と
何時も通りのルートを通って城を後にする。
私はエウリュストムス王子様に言われた通り、桟橋を探し
湖に架けられた古い桟橋を背にして、森に分け入り
意外と簡単に、廃村を見付ける事に成功した
『毎年、この近くまで来てるのに知らなかったぁ~…
こんな場所に、人間が住んでた場所があったんだ』と
私は独り言を言って、物見遊山で廃村を散策する
重さで倒壊したのであろう瓦屋根の家
屋根の落ち崩れた藁葺や茅葺の家はまだ、家の輪郭が残り
場所によっては、家の中を見て回れる物件もあった。
一頻り好奇心を満たした私は
廃村の奥にあると言う果樹園へ向かう事にする
廃村の中では、草木が生い茂っていて少し迷ったけど
プティラ王子様に似た歌声に導かれて、目印を見付け
エウリュストムス王子様に言われた通り
崩れていない瓦屋根の倉の横を通り抜け、果樹園に入る事ができた。
廃村の中とは打って変わり、果樹園は綺麗だった
下草は柔かく、木陰で御昼寝するのに良さ気で
木から収穫し、私が口にした木の実は本当に美味しい
私は木の実で咽喉を潤し
「急ぐ事もないだろう」と、好奇心のままに・・・
先程から聞こえてきている歌声の在処を探して回る
遠くから『そっちに行っては駄目だ!キャノメラナ!』と
兄貴達の声が聞こえた気がした
『来るな!』と、言うプティラ王子様の声も聞えた気がしたけど
時、既に遅く・・・
私の体は空中に縫い付けられ、逃れる術を失ってしまっていた。
私のモノでない、叫びが木霊する
『逃げろ!逃げてくれ!』と、悲痛な叫びが複数
罠に掛かった私に向けて、何処からともなく聞こえて来ていた
それとは別に、私に向かって踏締める様な足音が近付く
『大瑠璃の何処が絶滅危惧種だ?
確かに昔より捕れにくくはなった気がするけど…まだ、こんなに
簡単に捕れるじゃないか…
鳥獣保護法の愛玩飼育禁止での値上がり大歓迎!
でも、大瑠璃の御嬢ちゃん…家の王子様が君を気に入ったみたいだ
君は若くて活きが良さそうだし
我が家のキャノプティラ王子の御姫様にしてあげようね』
私は生まれて初めて見た「人間」に恐怖し暴れる
『嫌だ!怖い!誰か助けて!』
私の抵抗も空しく、私の体は簡単に人間の手に掴まれ
四角い小さな箱に詰められてしまった。
大瑠璃は夏に飛来する野鳥ですw
幾ら綺麗な青い鳥だからって捕まえたり飼ったりしちゃ駄目ですよw
マジで、保護動物ですからw




