04「肌寒い朝」
04「肌寒い朝」
王子様達に出会った昨日は・・・
初日で即効、約束を複数破ってしまった後ろめたさから
「御城に行った事」が、絶対にバレてしまわない様にと
出来るだけ大きく遠回りして、日が完全に暮れてしまって…
私は焦りに焦り…急ぎに急いで…息絶え絶えの状態・・・
湖の近くで「私を捜しに来た親戚の兄さん達」と、出会い…
途中から、兄貴達も次々に合流して来て…
やっぱり、思った通り…想像していた通りに…
『どんだけ遠くに遊びに行ってたんだ!このバカ娘ぇ~!』と…
兄貴達だけでなく、親戚の兄さん達にまで
本気でこっぴどく叱られてしまった。
但し、今年は去年と違って・・・
集合場所に辿り着いてからもずっと、それが義務であるかの様に
私に小言を言い続ける兄貴達に対して
『そろそろ、妹離れしなさいよ
来年には、この娘も嫁に行ける年頃になるんだから』と…
珍しく、婆様達や親戚の御母さん達が私の味方になってくれて
姉貴達と親戚に姉さん達も挙って、味方に付いてくれたので
兄貴達には悪いけど「本当に助かったなぁ~」と、こっそり思った。
と、言った「昨日の事」を教訓に・・・
「今日は、時間に気を付けなくちゃなぁ~…
日暮れ前には、帰って来なくちゃだよね」とは、思う
勿論、思っただけに終わる可能性は否めない…
私は、夜明け前の明るくなってきた空の下で顔を洗い…
軽く食事をとってから、身支度を整えて出掛ける準備をしてから
姉貴達と親戚の姉さん達の様子を窺う
昨日の今日で「行ってはイケナイ」と、言われている場所に
一緒に来てくれそうな姉貴は、いない様な気がした・・・
それ以前に姉貴に「目的地」を伝えた時点で、怒鳴られ
兄貴と姉貴による家族会議に掛けられ、その結果…
今年の自由行動を禁止されてしまう公算の方が高い
私は昨日の事の熱りが冷めるまで、単独行動する事にした。
だって私は…昨日、兄貴達に物凄く怒られたけど
昨日の事を後悔なんて、全くしていない
而も『行っては駄目だ』と、言われれば言われる程に
そんな場所に行ってみたくなるのは仕方の無い事だとは思いませんか?
っと、言う事で…私、反省だってしてません!
だから、今日も行ってみましょう!
森の中に隠されてるみたいに存在している
「美麗な御城」の「芸術的に素晴らしいデザインの温室」へ!
私は毎度の事ながら、兄貴達の目を盗んで…
婆様達と親戚の御母さん達、姉貴や姉さん達に朝の挨拶をして
兄貴や兄さん達には「遊びに行ってきます!」との
書き置きだけを残し
兄・姉・親戚一同に見付からない様に森へ分け入り
昨日、出会った王子様達に会いに行った。
こっそり隠れて行動するのは、とってもワクワクして楽しい
「昨日、会った私の事…王子様達は覚えてくれてるかな?
誰?って訊かれたらどうしよう…」
ちょっぴりだけ私は不安を抱えながら
御城の塀に添って生える木を出来るだけ静かに登り…
塀を越え、大きな音を立てない様に塀の中の木に飛び移り…
昨日…安全に下りる事に成功した、ステンドグラスの枠に向かい
躊躇しないで飛び降りた。
大きな音のしない場内に、少し大きな音が響く
ちょっぴり肝を冷やした…が、しかし…
この城のある場所は、標高が高い場所にある森の中
早朝で、初夏だと言うのに少し肌寒い今日は・・・
外に人がいなかったらしい…
小さくボイラーの音が響いている事から考えて
扉も窓も閉まっていて、誰も音に気付かなかったのかもしれない
私は胸を撫で下ろし…昨日、中を見る為に使った
彫刻が比較的少なくて、中が見えやすい硝子に顔を近づけて
「あの王子様達が近くに居ないかな?」と、覗き込んだ。
でも、残念な事に窓は少し曇り…中を見る事は、叶わなかった
それでも必死になって、目を細め見てみたけど…
動く者の姿を見付ける事は出来ない
常識的に考えたら・・・
朝の早い日の出の時間、御城に住む王子様の様な存在の姿が
何も無い場所、温室の屋根付近に有る訳がないのかもしれない
私から溜息が零れ
『だよねぇ~…そんな都合良く、会える訳が無いんだよね
それ以前にちょっと私、来るのが早過ぎ?
まだ、寝てる時間だったりする?』
独り言も自然に零れ落ちる。
ルスキニア王子様とタタルスゲル王子様は
『またおいでね!』って、社交事例か何かで言ってくれたけど…
「そもそも、私…王子様と会う約束なんてしてないし」
此処に来たら…「また、会えるかもしれない」なんて
私は、安易な思い込みしてる自分が恥ずかしくなる
夜なかなか寝付けなくて、早起きしてしまった私は
気が抜けてしまい眠気に襲われ…
柔かい朝日の温もりを浴びながら、欠伸をする。
『朝日が気持ちいいなぁ~』
だが、しかし…此処は、位置的に危険かもしれない
「何処か身を隠せて、休める場所ないかな?」
私は周囲を見渡すが、良さ気な場所は見当たらない
皆のいる場所に帰れば、安全に休む場所を
兄貴達がちゃんと与えてくれる事は分かっていたのだけれど…
此処で待ってればまた、あの王子様に会える気がして
正直、帰りたくは無かった…
それ以前に、この眠気を抱えたまま帰れる気がしなかった。
木の上に戻れば、少しは安全かもしれないけど…
温室の屋根からボイラー室の屋根に降りて
そこから地上に降りて、高い木の上の方まで登れる程の力は…
今、出ないかもしれない
それだけ、強い眠気に襲われている自覚がある
高い木の上まで行く事ができないから…と、言って
ボイラー室の屋根の上や、地上に
身を隠す場所は存在しない
同じく身を隠す場所が無くてもまだ、温室の上の方が安全そうだった
でも温室の屋根の上は・・・
寝るには危険な傾斜があり、更に身を隠せない為の危険で極まりない。
「失敗したな…旅の疲れがこんなに溜っていたなんて」
私はこの眠気を一旦、やり過ごす為…気を紛らわせる為に…
眠い目を擦りながら、硝子張りの温室の屋根の上にある
硝子を支えるフレームの上を歩いては
中が綺麗に見える場所を見付けて覗き込み
何時の間にか力尽きて、暖かい風を送るボイラーの配管の上
屋根の外周、ギリギリの場所で頭痛を抱えて座り込む
そこは昨日、王子様達と楽しく会話をしていた場所で・・・
何故だかとっても安心できて、私はすっかり眠り込んでしまった。




