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【連載版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした  作者: 影茸


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第七話 激怒 (ミラベル視点)

 激怒した父から向けられる険しい視線。

 それを見ながら、私は未だその怒りの因が自分だと理解できなかった。


「わ、私はただマリアと婚約破棄をしようとして……」


 それでも、父の怒りに気圧された私は何とか言葉を重ねる。


「貴様は王国を滅ぼす気か……!」


 父の怒りが爆発したのはその瞬間だった。

 呆然となにが起きているのか分からない私の頬を、父がはたく。


 想像もしない怒りに、私はただ自分の頬を押さえて後ろに下がることしかできない。


「お前は……! 子供の頃から愚かだと思っていたが、未だ理解できていないのか! 自分がどうして王太子に選ばれているのかも!」


「父上、なにを……」


「貴様はマリアベルがいなければ、王太子になれなかったと言っておるのだ!」


「……っ!」


 実の父から怒声とともに放たれた言葉。

 それに私は大きく衝撃を受ける。

 しかし、認められる訳がなかった。


「そんな……! 私は王太子です! あんなマリアベルの力など借りません!」


「お前は、本当になにも理解できていないのか……」


 どうしようもなく、そんな様子で父が額を押さえたのはそのときだった。


「どうしてこんな愚かな子供に貴様は……! 次男のカインはあれほど優秀だと言うのに!」


 そう言いながら、私をにらみつけ父は叫ぶ。


「どうして貴様は分からない! ──マリアベルはたやすく王国を滅ぼせる存在なのだぞ!」


「は?」


 一瞬、私は父がなにを言っているのか理解できなかった。


「おかしな冗談を! そんなことをマリアがどうしてするのですか? そもそも、そんな力をどうして魔王やパラディンでもないただの魔術師がどうしてもてるのですか!」


 とうていあり得ない話だと思いこんで、私は笑う。


 ……しかし、その笑い声は途中で止まった。


 ただ無言でこちらをみる、父の視線はどうしようもなく真剣だったが故に。


「……本当にお前はなにも理解していないのか」


「なにを言っているのですか、父上」


「マリアベルはお前の口にした魔王が好敵手と認め、神聖帝国のパラディンの称号を与えようとした存在だ」


 その言葉に私は思わず言葉を失う。

 確かに、そんな話を私は聞いたことがあった。

 しかし、それはただマリアベルが話を盛る為に作っただけのものだと私は確信していた。

 幼い頃からずっと見ているマリアがそんな存在と並び立つなど、私は一切信じていなかった。

 確かにあいつは傲慢になったが、ずっと抜けているのもずっと変わらない。

 ただの私の幼なじみだ。


「それはマリアの言っているでたらめで……」


「正式に各国から私にその通達がきた、そう言ってもまだそう言い張るか」


 淡々とした父の言葉。

 ……しかし、それが何より父の本気を物語っていて、私は思わず口を閉じる。

 そんな私をにらみながら、父は続ける。


「覚えておけ、マリアベルは本当に一人で国をひっくり返せる力を持つ人材だ」


 その言葉に私はなにも言えなかった。

 ……なにも、言葉にならなかったと言うべきか。


 そんなことあり得ない。

 その言葉が私の喉元までせり上がってくる。

 しかし、私をにらみつける父の目がその言葉を告げることを許さなかった。


「私はマリアベルに謝罪にいく。……もう、余計なことをするのだけは絶対に許さない」


 その言葉を最後に、父は自室から出ていく。



 父の背中を、私はただ黙って見送ることしかできなかった。

明日は三話投稿になります!

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