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【連載版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした  作者: 影茸


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第五話 帝国の魔王

「ひっ」


 押し殺した悲鳴がアズリアの口から漏れる。

 それは隠し切れない恐怖の証で、私は内心憮然とする。


 殺気も出していないのに失礼な、と。


 まるで私が悪者のようではないか、そう思いながら私は殿下へと目を落とす。

 これでもまだ私を疑うのか、と言うために。

 そして、魔術の衝撃で意識を失った殿下に気付いたのはそのときだった。


「……どうしてこんな肝心な時に」


 後の説明がやっかいなことになりそうだと。


「まあ、今は目の前のことが最優先か」


 そう思いながら、アズリアへと目をやるとそこに浮かぶのは色濃い恐怖だった。

 まるで今すぐとって食われると言いたげな。


 ……本当に人をなんだと思っているのか。


 そう思いながらも、私は拘束の魔術を編む。

 実のところ、私にはアズリアを害する気はなかった。

 理由は複数ある。


 アズリアは確実に殿下を人質にするような動きをしていたこと。

 少なくとも、現時点では殿下を害した訳ではない。

 拘束して目的を吐かせる必要こそあるが、殿下を暗殺しにきた訳ではない。

 すぐに殺してでも止めるほどの危険度はない。


 など様々な理由はある。

 しかし一番私の頭を支配しているのは一つの予感だった。


 明らかに人間ではない。

 ……具体的に言えば、魔族としての特徴を持つアズリア。

 そして、魔族と言えば私の頭に浮かぶ存在がいた。


 つとめてそれを意識しないようにしながら、私はアズリアに魔術をかける。


「きゃっ!」


 その魔術にアズリアはろくに抵抗もできず捕まる。

 ……アズリアの頭上にあるマークが浮かんできたのはそのときだった。


「やっぱりか、あの魔王……」


 それは帝国の国旗。

 アズリアが魔王たる帝王の部下である証だった。


「そ、そんな……」


「もしかしてあの魔王がこんなところに……!」


 その国旗を見て、夜会は今までと別種の騒がしさに包まれる。


「安心しろ。魔王は今はこない。来ればこの私が分かる!」


 私のその言葉に夜会の中、安堵が広がる。

 それを感じながら、私はアズリアを差し出して告げる。


「この者を魔力封じの牢に入れておけ。陛下には私から報告する」


 正直、今すぐにもアズリアを尋問したい。

 しかし、ここに魔王を呼ぶ訳にはいかないと言う思いからその気持ちを抑える。


 ……そもそも、あの魔王ならなにも考えていない可能性さえある。

 しかし、この事態が起きてそんなことが分かる人間は王国にはいないだろう。


「あの魔王、やっかいなことを……」


 そうつぶやいた私の口には苦々しさが滲んでいた。

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