第二十四話 啖呵 (ミラベル視点)
想像もしない人間の姿に私の思考が止まる。
しかし、そうして停止したのは一瞬のことだった。
すぐに私の胸に怒りが宿る。
「ふざけるな! 何を言っている!」
そう言いながら、私はパラディン達を、父上をにらむ。
「マリアがどれだけ王国に貢献してきたか、知らないのか!」
……自分が言うのも皮肉なことだ。
そう思いながら、私は叫ぶ。
「だから悪いのだ、ミラベル」
しかし、私の言葉が誰かの胸に刺さることはなかった。
「あの女は力を持ちすぎた。今、王国では私よりあの女の名声の方が高い」
そう告げる父の目には、何時しか怒りが宿っていた。
「そして今、あの女が反乱を起こせば。……あのことを理由に放棄すれば、私を指示するものはいない」
そう言いながら、私をにらんだ父の目には圧倒的な憎悪があった。
「あの女をどうして許せる!」
「そんなことある訳ないだろうが!」
次の瞬間、父上異常の怒りを目に私は叫んでいた。
「マリアが蜂起する? 馬鹿か!」
「貴様、誰に口を……」
「うるさい!」
私を納めようとしたカインを殴り飛ばし、私はほえる。
「あの不器用なマリアがそんなことできる訳がないだろうが! なぜ、父上はわからない! マリアの忠義を理解できない!」
「貴様に何がわかるミラベル!」
そんな私に、父上も叫び返す。
「あの女が軍の頂点にいる異常がどうしてわからない! その恐怖が、何時死ぬかもわからない恐ろしさがどうして貴様にわからない!」
「そんな未来ある訳ないだろうが!」
肩で息をしながら、それでも私は父上をにらみつける。
「確かにマリアの父は独断専行で魔王の怒りを買った! だが、マリアは違う! マリアはただ王国の未来を考えている! 自分がどうなっても、王国の為にすべてを捧げている」
叫びながら、涙が溢れる。
「だから私はマリアを婚約破棄したのだ! マリアを縛る枷を減らす為に!」
涙を拭いもせず、私は父上達をにらみつける。
怒りではなく、ただ悲しかった。
不器用でどうしようもない幼なじみについて父上がまるで知らないことが歯がゆかった。
そんな私の姿に、父上の怒りがさめたのがわかる。
しかし、その目はずっと冷たいままだった。
「……詰まらぬことを。言っておくが、今更婚約破棄を取り消すなど通ると思うな」
「うるさい。誰がそんなこと言うか! そんな覚悟で婚約破棄などしていない」
そうだ。
この期に及んでも、私は別にマリアとの婚約破棄を取り消すつもりはなかった。
ただ。
「婚約破棄は私とマリア二人の問題だ!」
そう叫びながら、私は拳を構える。
その視線の先は、二人のパラディン。
こちらをつまらなそうにみるライマーク。
無表情ながら、どこか楽しげなマイヤー。
「例え国王陛下でも、パラディンであっても。──何人たりとも婚約破棄を利用することは許さん!」
次の瞬間、私はパラディンへと走り出した。




