第二十三話 パラディン (ミラベル視点)
「……は?」
情報処理をあきらめた脳が、発した言葉。
それを聞く者は誰もいなかった。
「まさかまさか。初めてミラベル殿下が役に立ちましたな」
「ははは! しかもこのタイミングでだぞ! さすが私の息子だな!」
ただ、宰相と父が歓喜を隠さずに喜ぶ声が響く。
それを私は、ただ呆然と聞くことしかできない。
この二人は何を言っているのか。
そんな考えが私の頭によぎる。
この言葉ではまるで。
「……私達の婚約破棄を喜んでいるようではないですか」
呆然とする私に、父はにやりと笑った。
私の言葉を肯定するように。
「そう言えば紹介していなかったな」
そう言いながら、父が鎧を着た二人へと目をやったのはその時だった。
その目配せに答え、鎧を身につけた二人が前にでる。
「お初にお目にかかります。ミラベル王太子殿下。私は神聖帝国パラディンが一人、ライマークです」
「同じく。帝国のパラディンが一人。マイヤー」
金髪碧眼のイケメン、ライマーク。
無口の黒髪の男、マイヤー。
……その二人の告げた、パラディンという言葉に私は唖然として言葉を失うことになった。
パラディン、それは神聖帝国の切り札にあたる魔法剣士達だった。
その強大さは畏怖と共に知られ、パラディンは誰一人例外なく一騎当千の存在と言われている。
即ち今、目の前には小国に攻め込めるだけの戦力を有した二人が存在しているのだ。
初めて目にするそのパラディン達の姿に、私は状況も忘れて見入ってしまう。
そんな私の存在を無視して、父上は口を開いた。
「ところで、本当だな。──二人であればマリアベルを取り押さえられると言った言葉は」
マリアベルを取り押さえる?
父の口にしたその言葉の意味が、最初私は理解できなかった。
「はい国王陛下。確かに、一人であればマリアベル殿が荷が重い存在であることは認めましょう。マリアベル殿は、我が国の聖騎士長にも匹敵する存在」
「ですが二人がかりであれば、必ず」
しかし、ライマーク、マイヤー二人の聖騎士の言葉を聞いて、私は理解する。
……父上の言葉は聞き間違えでも何でもないと。
「待て、何の話をしている!」
その瞬間、興奮も冷め私は叫んでいた。
周囲の注目が私に集まる。
それを睨み返しながら、私は叫ぶ。
「何の相談をしている! ……これではまるで」
そこで言葉が途絶える。
「そうですよ。マリアベル令嬢失脚の密議ですよ」
その続きを告げたのは、私の後ろの扉から響いた声だった。
私の視線の先のその人物を見て、父上が淡々と告げる。
「ようやく来たかカイン」
そこにいたのは私の弟の姿だった。




