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【連載版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした  作者: 影茸


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第二十二話 想定外(ミラベル視点)

 婚約破棄時に時間軸戻ります。


◇◇◇



「……くそ」


 そんな言葉が私、ミラベルの口から漏れたのは王座に向かう途中だった。

 頭の中では、婚約破棄した時のマリアの様子が何度も蘇っていた。


 まだマリアを婚約破棄して、十分も経っていない。

 その足で王座に向かう私の心は曇りきっていた。


「何を落ち込んでいるのだ、私は」


 その事実が、私は何よりも許せなかった。


「婚約破棄を伝えたのも、行ったのも私だろうが……」


 ──私がお前を守ってやる。


「約束を守れなかったのも、すべて私のせいだろうが!」


 どうしようもなく痛む胸を押さえながら、私は唇をかみしめる。

 そう、私には何も悲しむ資格などありはしない。

 全ては私のせいでしかないのだから。

 マリアにアズリアのことを手に掛けさせたのも、戦場に出してしまったのも。


「全部、私のせいだろうが」


 そして、私が最後まで婚約破棄をしなかったせいで、マリアベルには多くの負担もかけた。

 もう、これ以上マリアに負担をかける訳にはいかない。

 故に、私はどれだけ気が重くてもこの役目をマリアに押しつける気などはなかった。


「……父上は、激怒するだろうな」


 父上はマリアを恐怖している。

 そんな父は私の婚約破棄を聞けば、恐怖するに違いない。

 しかし、それを理解しながら私に止まる気などなかった。


「誰にも文句を言わせるものか。これは私とマリアの婚約だ」


 その決意と共に、私は王座の間へと急ぐ。

 ……気づけば、鈍りそうになる足に力を入れながら。



 ◇◆◇



「また厄介事か、ミラベル」


 王座の間に通された時、父上はいつにもまして不機嫌だった。

 それを感じてしまった私は、ただ頭を下げて無言になることしかできない。


「……どうしてこの時期に貴様は厄介事ばかり持ち込んでくるのか」


 話を聞きもせず、そう断言する父上に反論したくなるが、今はそんなことできる訳もなかった。

 何せ、実際に私が持ってきたのは厄介事にすぎないのだから。


「早く話せ。貴様の面倒事は放置しておくとろくなことにならん」


「……父上、少しよろしいでしょうか」


 ここで反論したら父の機嫌がさらに悪くなる。

 そう理解しながらも、私はあるところに顔を向ける。


「人払いをお願いしてよろしいでしょうか」


 その私の視線の先にいたのは、宰相。

 ……そして、王座に見合わぬ鎧を身につけた二人の男だった。


 金髪碧眼の顔の整った笑顔の男。

 黒髪でにこりともしない無愛想な男。


 その二人は私の見たことのない男で、ここで婚約破棄を話していいものか私は悩む。


「そんな無礼を行える訳ありますまい」


 しかし、そんな私の言葉を宰相がばっさりと切り裂いた。


「そうだな。早く述べよミラベル」


 その言葉を聞きながら、私は内心思う。

 この後、どうしてこんな場所で婚約破棄について言ったと怒られるのは自分なのだろうと。

 しかし、ここで黙って後でマリアの報告を待つ気など私にはなかった。


「……この度、私ミラベルと公爵家当主マリアベルとの婚約を破棄して参りました」


 瞬間、王座の間を支配したのは絶句だった。

 誰もが口を開かない圧倒的に気まずい空気の中、私は覚悟を決める。

 どれだけ叱責されようが、王太子の座を失おうが婚約破棄を取り消すことだけはしないと。


「ミラベル」


「……はい」


 故に。


「──よくやった! 」


 次の父の賞賛、その意味が私には理解できなかった。

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