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【連載版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした  作者: 影茸


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第二十話 婚約破棄の理由

「……え」


 サイフォンの言葉に、私とキャロリアが思わず目をあわせる。

 普段のサイフォンならあり得ない言葉に、驚きを隠せない。


「何ですか、その失礼な対応は」


「お前は普段の行いを省みられないのか?」


「……驚くか辛辣に返すか、統一していただけませんか?」


 そうサイフォンは深々と息を吐く。


「ですが、私は別に今までも間違ったことを言ったつもりはありませんよ」


「……あれ程、マリア様の名誉を下げようとしてきたのに、ですか?」


「ええ。むしろ、その行動を責められるいわれなどありませんね」


 まっすぐとサイフォンが私に向き直る。

 その目には、一切の後ろめたさも存在しなかった。


「紅蓮の魔術師、その名前は大きすぎるんですよ」


「……貴方に誉められると虫唾が走るな」


「そう褒めないで大丈夫ですよ。私も誉めてませんから」


 私とサイフォンのやりとりに、満足げに胸を張っていたキャロリアの額の青筋が復活する。

 そんなキャロリアを面白そうに見ながら、サイフォンは続ける。


「ここは王国ですよ? 国王陛下という絶対の象徴が存在する。そんな国王陛下の名誉に匹敵する魔術師が現れるなど、国家として不健全きわまりないでしょうに」


「だから今まで私の名誉を下げにきたと?」


「はい。感謝してください。貴方にもメリットがあったでしょう?」


 無言で拳を構えるキャロリアを押さえつつも、私は内心うなずく。

 確かに、今まで会話してきたサイフォンと、その言葉は一致する。

 それなら一つ、疑問があった。


「……だったら、どうして今私に味方するような意見を言う? 今の状況なら私の名誉が落ちるだろうに?」


「名誉が落ちる? そんなことあるわけないでしょうに」


 そう言いながら、サイフォンは皮肉げな笑みを浮かべる。


「今マリアベル嬢を貶めているのは、貴方の後釜でミラベル殿下の婚約者をねらっている人間だけですよ? まともな人間であればミラベル殿下の方の評価を下げます」


 そのサイフォンの言葉に、少し迷った後にキャロリアが拳をおろす。

 この二人は相性が悪く、キャロリアはサイフォンの前だと感情的になりやすい気がする。

 一方のサイフォンは一切キャロリアに注意を向けないまま続ける。


「確かに紅蓮の魔術師という名前が大きくなるのは不健全な状態ではあります。ただ、もう名前が大きいという事実は無視できない。それを強引に貶めようとしても逆効果です」


「殿下はそんなことは考えない方だ」


「そうですね。あの方には知能がない」


「殿下への不敬は許さんぞ」


「婚約破棄されたのに律儀なことだ」


 その言葉に私の動きが一瞬とまり、キャロリアの顔に怒りがうかぶ。

 だが、意に介さずサイフォンは告げる。


「ただ、国王陛下はよく理解されてました。むしろ過度にマリアベル嬢を恐れていたといっていい。……おかしいとは思いませんか?」


「おかしい?」


「ええ。国王陛下がどうして婚約破棄を認めたのか」


 そう告げる時、サイフォンの目には理知的な輝きが浮かんでいた。


「普段の国王陛下でしたら、今の状況を招くことを絶対によしとはしないでしょう。しかし、婚約破棄は起きた」


「……サイフォン様は何がいいたいのですか?」


 警戒を隠さないキャロリアをまっすぐ見つめ、サイフォンは告げる。


「警告ですよ。貴方方は警戒した方がいい。今、婚約破棄は認められた。──即ち、国王陛下が婚約破棄を認める何かが起きています」


 ようやく私は理解する。

 この男が来た本題はこれなのだと。

 事実、それだけを告げるとサイフォンはすぐに去ろうとする。


「別段肩入れする気もないですが、無用な混乱はごめんです。警告はしましたよ」


 そう言いながらサイフォンは私達を追い抜いて去ろうとして……その足が止まる。

 直後、背後から私達へと声がかけられた。


「……公爵閣下、少しよろしいでしょうか」


 声に反応し、振り向くとそこにいたのは顔見知りの衛兵長とその部下達だった。

 魔法の腕もよく、誠実な男。

 なんなら彼を宮殿に召し上げるように言ったのは私だ。

 そんな彼は私を見る度に挨拶と礼を忘れない男で。


 ……しかし、その彼の実直な顔には険しい表情が浮かんでいた。


「──公爵閣下に国家反逆罪の疑いがもたれております。ご同行お願いしてもよろしいでしょうか」

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