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【連載版】婚約破棄されたのは最強の悪役令嬢でした  作者: 影茸


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第十五話 真実

 帝国がほかの国と戦時中であるのをねらって背後をつく、卑怯とも言われるべき攻撃。

 それが父の行った攻撃で、その内容故に国王の側近しかしらない秘密裏の作戦とされていた。


 ……その攻撃に最後まで反対していたのこそ、父本人だった。


 魔王がそんなに甘いわけがない、と。

 しかし、軍人の父に命令に抗う術もなければ、国王を説得できるほどの口のうまさも持っていなかった。

 故に父は大人しく命令を受け魔王軍に攻め込み、敗北した。


 そんな父に独断専行の反逆者の汚名を国王が擦り付けたのは、私が父の死を知った日だった。

 家族である私は知っている。

 父の奇襲は歴とした命令だったことを。

 しかし、国王はその作戦が秘密裏であることを利用し、自分のしたことをすべて闇に封じ込めたのだ。


 それよりも以前に父は死んでいる。

 しかし、その日は私にとって間違いなく父が死んだ日だった。


 名将とたたえられていた父の名誉が死んだ日なのだから。


 ……軍人の厳しさを私が理解したのは、その時だろう。


 私の周りから次々に人が消えていったのはその日からだった。

 父の部下も、父に心酔していた人間も。

 多くの人間が公爵家から離れていった。


 それでもなお、この家が残っていた理由は幸運でしかないだろう。

 父とともに大勢の兵士が死にながらも、いくらかの兵が公爵家に残っていたからか。

 それとも父と旧知の間柄の人間の中に、父を哀れと思い助けてくれる人間がいたからか。

 または、私が殿下と婚約者でありすぐにとりつぶすと反発があると想像できたから。


 当時の私はそんな話を流してくれる存在もいないほどに無力で、周りにだれも残っていなかった。

 ただ、そんな中でありながらそれでも私の側に残ってくれた存在がいた。


 それがミラベル殿下だった。


 父が死に、様々な人間が離れていく状況に呆然とする私に殿下だけは私から離れなかった。

 それを私はずっと覚えている。


 その時の殿下も今と変わらない馬鹿だった。

 私の為にと暴走し、その結果騒ぎを起こしたことも一度や二度ではない。

 それどころか、独断専行が王家の捏造であることも知らなかった。

 ……仮にも王太子なのに。


 殿下は周りと同じように父が裏切ったと思いこんで。

 ……それでも、殿下は絶対に私との婚約を破棄しようとはしなかった。


 周りに何を言われても、絶対に自身の意見を変えることはなかった。


 ──安心しろ、私がお前を守ってやる。


 殿下に言われたその言葉を私はずっと覚えている。


 それが恋心であるのか私は知らない。

 ただ、私にとってそんなことはどうでもよくて。


 その日私は王国に。

 殿下に忠誠を誓うと決めた。


 今でもはっきりと思い出すことのできるその日。

 それこそ私が女の身でありながら戦場に出ると決めた日だった。

 どんな手段を採っても当家の名誉を回復するために。

 

 ……全ては父の名誉の為、そして少しでも婚約者の殿下の力となるために。


 ──それが紅蓮の魔術師と言われる、私の始まりだった。

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