第十一話 勧誘
殿下にも幼少の頃にしかして貰っていない愛の告白。
それに、私は思わず唇をかみしめる。
これこそが私が魔王相手をやりにくいと感じる理由の一因だった。
「お前も分かっているだろ。俺が今回手を出した理由も一つだ」
私の殺気を前にして、一切物怖じすることなく笑いながら魔王は告げる。
「──俺がお前を欲しいだけだ」
あまりにもまっすぐな言葉。
それに私は自分が一切何も感じない訳ではないことを知っている。
ただ、その上で私は決めていた。
「もう断った話だ。私は殿下に全てを尽くすともう決めている」
そう言いながら、私は精霊に魔力を与えることをやめた。
私の纏っていた炎のドレスは消え去る。
「私は殿下に恩がある。だから、その決断は揺るがない」
私は殿下に恩がある。
それが恋なのか、実のところ私は理解していない。
けれど、私には決めていることがあった。
自分の恋心などどうだっていい。
そんなことを捨てて私は殿下に尽くすと。
「マリア、お前は本当にいい女だよ」
そんな私に、魔王はいつもの様に笑う。
少し悲しげに、けれど絶対にあきらめないとその獰猛な笑みを描きながら。
「だが、お前はもう王国に尽くしただろう?」
しかし、今回はいつものようにそこで引くことは無かった。
「……妻になれとは言わない。だが、俺の国に来い」
その言葉に内心、驚く。
魔王がこうして私を強引に誘うことが初めてだった故に。
「何を驚いた顔をしていやがる。その価値がお前にはあるだろう?」
「それは知っているが……」
そう、私は自分の国際的な価値を知っているし、こうした勧誘は魔王だけではない。
それでも、魔王は一度断られるとその日の内にさらに誘うことがないと
知っていたが故に驚きを隠せない。
「言っておくが、俺が誰よりお前を評価していることを忘れるな」
そんな私にいつもより強引に距離を詰めながら魔王は続ける。
「何せ、俺はお前の父と戦ったときからお前を見初めていたんだからな」
私の父、アランバルト。
それは王国のかつての将軍で……今は逆賊と名高い存在。
「そういえば、お前の父も有能な将軍だったな」
そういって、魔王はかつて自国に攻め込んだ将軍の名前をだして獰猛に笑った。




