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サードゲート

0522

桜は女に向けて銃を構え、瞬きすらせず女を睨みつける。

傍らにいたぼく君は初めて見るであろう来訪者に嬉々としている。

女は引き寄せられた勢いで尻もちをつき、そのまま腰を抑えながら怯えた表情で桜を見る。

「動いたらどうなるか解っとる?ゴム弾でもこの距離なら骨折だけでは済まんとよ」

桜は威嚇するかのようにワザと銃口を顔の前で上下に振る。

「あの、落ち着いてください、私強盗とかじゃありません」

女は必死に両手を上げながら弁解するが桜の警戒心は収まることは無い。

「きゃっ、ききゃっ」

「駄目よぼく君、向こうにいってなさいって!」

見知らぬ来訪者にぼく君は高ぶりを抑えきれず走り回りだす。

「こ、こども?」

「あんたはそこで動いたらいかんね!こっちむいちょりってちょっと待つバイ!」

桜は女の持っていたあるものに目が留まり、思わず目が点になる。

「・・・それ、どげんしたと?」

銃口で女の手に持っているそれを指す。

「これ・・・ですか?」

女が桜の眼前に差し出したそれは。


0320

いつもは二人だけ囲むダイニングテーブル、しかし今は突然の来訪者を迎え三人になっている。

「世界がおかしくなって間もない時、ぼく君と会ったんよ。その時よ、ぼく君もそれを持ってたんよ。

ああ、それよりも自己紹介よね。俺は桜ったい、普通苗字は桜井さんだとか桜田さんけんども

俺の苗字は一文字で桜ったい、おかしかろう?ところでおねーさんは何者ね?」

テーブルにコップに入れた水を置くと桜は疲れたように猟銃を傍の壁に立てかけて言った。

「私、千景と言います・・・一応私も苗字なんですが、かわってますよ・・・ね?」

女は申し訳なさそうに口にするが桜は疲れたように顔を伏せ、特別興味もなさそうだった。

「別にいいっちゃ。どうせ、ホントかどうかも確認の使用もなか。それよりもさ、どうやってここに来たと?

今どういう時間かわかっちょるよね?ゲートはほとんどクローズタイムよ」

「そ、そうです。その緑の、ゲートって奴一体何ですか?仕事でここまで来たときに急に道路に現れて、

戻ろうとしてUターンしたら通った道にもいつの間にか同じ奴が道路ふさいでて、それで立ち往生して・・・

電波もないし人はいないしで・・・こんな時間に申し訳ないってーーー」

「嘘たい」

桜は話を間髪入れずに遮った。

「えっ」

「ゲートが出来てから一体もう何年経ってると思ってると?日本中、世界中がこんなのになっちょるっていうのに

何馬鹿なこと言っとるーーー」

「いえ、違いますよ!私、昨日まで普通に仕事してましたもの!ここに来てからですよ、こんな奇妙なもの!」

「じゃあそれは何ね!それを持ってるのはどう説明するとね?!」

桜は千景の持っているものを指差す。

千景はバツの悪そうな顔をしながらも特別弁解することもなく、続ける。

「これは、”これ”です。そ、それよりも電話か何かありませんか?ネット使わせてくれたら・・・」

「そんなもんゲートの時から動きもせんね・・・ああ、もういいたい。明日、貴方の事は毛木さんと会って相談するけん。

とりあえずはソファに座って朝になるの待っててくださーーー」

グゥウウウウウ。

「あ・・・」女の腹が威勢よく鳴った。

「・・・缶詰クッキーがあるけん、食べんしゃい。ぼく君も食べる?たまには夜食でもせんとやっとれんね」

「クッキー発進!ウォオりやーーー!」

ぼく君は満面の笑みで缶詰を持って千景に満面の笑みをこぼすのであった。


1125

「難儀やな、桜。これは難儀やわ」

毛木は桜、ぼく君、千景を嘗め回すように見て一言短くそう答えた。

翌日、夜が明けてゲートがオープンタイムなったと同時にいつもの調達屋アジトの農機具場へと

一目散にやって来た三人。

ただでさえ桜とぼく君は少し”難有”とグループから見られている。

そこに新たな”難”が加わったことで一同は更に”難色”を示した。

「それはこっちの台詞やき。夜中にゲートを通って来たんよ!?信じられると?」

「安全なゲートが閉まってからどこかに潜んでいたとか?」

「いいかげんにしてよ。これで配給品が減ったら大変よ」

皆口々に千景の件の話で持ち切りなる。

それもそのはずだった、日々変わり映えのない”ギリギリ”な生活を送る一団にとって良くも悪くも

ニュースは数少ない刺激になる。

「まあ、とりあえずは岡村が来るまでこの話は預かりだな。千景さんだっけ?とりあえず事情はよく分からんが

1週間に一回お国の人間がやってくるからそれから相談、ええな?桜、お前んとこで面倒見たって」

毛木の足早な決断に千景は焦り、そして昨日からとばっちりを喰らっている桜は度肝を抜かれた。

「い、いえあの車がゲートを通ることが出来ればすぐに帰ります。何なら徒歩でも構いませんよっ!

それに皆さんがおっしゃられる”何か”っていうのがよくわかりませんよ、ホントに人が風化するんですか?」

「解らんのはこっちの台詞やき、千景さんが住んでるところはいたってまともって言うのも、ここだけが

変だっていうのも。それにうちに寝泊まりするってとんだとばっちりやけん」

桜はぼく君を抱いたまま大きくため息をついた。

「まあ事情がなんにせよ千景さんが決めたらいい話なんじゃないのかな?私達はただの調達屋だし、千景さんに対して

何か指図できるような立場でもないし、自分で決めればいい事だよ」

同じ近い年齢かつ女性である田中は千景を思いやってか比較的優しめの意見を述べた。

「さ、話は終わった終わった。時間がないから急ぐで、今日は前に話した通りこの間行った商店街にもう一度トライや。

奥の方はまだ調べてないから物品が残っている可能性があるしな」

一同は各々持っている時計を確認しながらとぼとぼと歩き出す。

残された桜、ぼく君、千景の三人は途方に暮れていた。

「で、どうすんね?このままじゃ埒もアカンし、ついてくるだけついてきんしゃったらよかね。

田中さんの言う通り、それから自分で決めたらいいけん。

でもゲートは時間制限があるからね、自分が来たところ良く思い出し」

「はい・・・」

力なく返事をする千景の手をぼく君は元気よく引っ張り、三人は遅まき最後尾を歩き出した。


0234

「いったいどうなってるの・・・昨日はここまでゲートは無かったのに!」

結局、仕事の後に千景の車には行くことが出来たが既に四方八方ゲートに囲まれていた。

「確かに真新しいゲートっちゃね、でもさすがに半日でできる訳なかよ」

三人は社用車の前にそびえたつゲートを見上げながら言った。

「それよりも、早く戻らんと。ほら見てみいさっき通った後ろのゲートの表示」

三人が振り返るとそこには自分たちが通って来た深緑のゲートが0230の緑色点灯、

そしてその数は徐々に減っていっている。

そしてまた振り戻ると目の前には千景が通って来たと言われる国道を塞ぐゲートが0229の赤点灯。

「つまりな、こういうことよね」桜はしゃがんで地面をなぞり始める。

「これぼく君、邪魔しちゃいかんと」

「かきかきかきかき」

ぼく君の茶々をやんわり止めて、時間が惜しいように桜はゲートの時間関係を描いた。


□←オープンタイム(通過可)■←クローズタイム(通過不可)

更に前の門(0353)□□□□□□門(0230)□□□□三人と車□□□門(0229)■■■■■■

  2時間半の経過後

更に前の門(0121)□□□□三人□□門(1158)■■■■車■■■門(1159)□□□□□□


「こういうことよ」「うーん??」

千景は理解はしたようだが何か腑に落ちないように見受けられた。

「良い?千景さんが国道を戻るには残念ながらほかの道を探すしかなかよ。

今この場所は時間が経てばクローズタイム、居ったらたちまち風化よ?」

「それはまあ、そうなんですけど・・・」

「解ったらほらさっさと戻る、ぼく君もゲートにおしっこ掛けたらいかんよ。帰ろう」

踵を返す桜に千景も続くが先ほど桜がしてくれた説明を思い起こす。

(さっきの説明・・・いや説明よりもあのデジタル表示。あの説明の通りなら・・・)


更に前の門(0123)□□□□三人□□門(0001)□□□□三人と車□□□門(0000)□□□□□□


(一分だけ・・・すべて通れるようになるのでは?!)

「あの桜さ・・・え、もういない?!ちょっと閉めないでくださいよ、置いていかないでっ!」

門を見て思案する千景を他所に二人はいそいそと元来た道を戻るべくゲートを通るのであった。


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