華売る男、買う男
「誰ですか?!」
「!お花!この方は...」
「雅楽様!何もされていませんか?!」
「...お花と言ったな。ここの楼主に会いたい。」
「え...楼主様に、ですか?」
不審者を見るような目で千善を見ていたお花は、その千善の申し出に目を丸くした。そしてお花は雅楽へと目を向けると、雅楽は優しい笑みを浮かべながら頷いた。
「...分かりました。では、此方に。雅楽様、そういう事でよろしいんですね?」
「うん。よろしくね、お花。」
お花は千善を連れて地下から地上へと上がると楼主、和武の元へと向かった。
「失礼致します。楼主様、お花です。」
「今よろしいでしょうか?」とお花が問うと中からハスキーな男の声で返答があった。
「おう。お花か。どうした?中に入ってこい。」
「失礼致します。」
お花は障子を開けると、部屋の中は煙管の煙で充満していた。
「お花。この男はなんだ?」
和武は千善を値踏みするかのように上から下までまじまじと見たかと思うと、お花に問いかけた。すると、お花は緊張した面持ちでなかなか返事をする事が出来ずにいた。やはり端女が楼主と話しをするのは勇気のいる事のようだ。そんな二人をよそに、千善は懐から大枚を取り出し和武に投げつけた。
「...一体なんの金だァ?」
「これから毎週同じ金額を払う。だから雅楽の金曜の夜をオレに売ってはくれませんか?」
「...お花。」
「!も、申し訳ありません!...なんでも雅楽様も了承の上のようでして...」
「そうか...雅楽が...」
和武は目を細め、優しい声音で雅楽の名を呼んだ。
「そういう事なら仕方がない。お客様、お名前を。」
「皇 千善だ。」
「皇...日本きっての財閥ですかい。なるほど。通りでこれだけの大金を...。雅楽が貴方を受け入れたいと言う事なら私どもが口出しする事は出来ませんな。もし良ければ、今日このまま雅楽と遊んでいきますかい?」
「楼主様?!」
和武の言葉にお花は驚きを隠せず、思わず声を上げてしまった。しかし千善は「今日はツレがいるので。その金は交渉金として取っておいてくれ。」そう言うと和武の元を去って行った。千善はふと思った。そう言えば雅楽に逢ってから酔いが覚めたな。
「あ、あの!」
「?なんだ?」
「...これから雅楽様の事、よろしくお願い致します。」
「...反対だったんじゃ無かったのか?」
「...雅楽様のお顔が...」
「顔?」
お花の言葉に千善は疑問を持った。顔がどうかしたのだろうか?
「今までのどのお客様と逢った時と違って、なんだか...嬉しそうだったので...」
「元のお座敷までご案内致します。」お花はそう言うと千善を連れて歩き始めた。




