ファンクラブ
雅は自室のベッドの上でうつ伏せになりながら、足をパタパタとさせて、スマホを見つめる。その画面には"天城 千寿"の文字が。
「ど、同棲してもらえるか聞かないと...だよね...?」
雅は頬を紅潮させながら通話ボタンを押し渋っていた。するとその時、スマホが着信を告げた。相手はもちろん、千寿である。
「も、もしもし...!」
「もしもし。雅か?...なんか声が上ずっているが大丈夫か?」
「大丈夫です!あ、あの...千寿さんに相談があって...。」
「なんだ?言ってみろ。」
雅は緊張しながらも、両親に言われた事をどもりながら伝えた。そして、千寿からの返事を待つ。すると雅が心配していたのが嘘かの様に即答で「じゃあ、ウチに来るか?」と言ってきた。
「え...、いいんですか?」
「もちろんだ。寧ろお前と住めるなら絶好のチャンスだ。...お前は嫌か?」
そんな事を言われてしまえば"No"だなんて言われるわけがない。
「...千寿さんと一緒に住みたいです。」
「なら良かった。それなら今度の土曜、デートしよう。そしてその後にご両親に挨拶をさせてくれ。」
「は、はい...!」
そして、その後はたわいもない会話をし続けた。もう、何時間話しただろうか。雅の声は段々ととろんとしてきていた。
「雅、眠くなってきたか?」
「い、え...だいじょうぶれす...。」
もう呂律が回っていない。千寿はクスリと笑うと雅に「おやすみ」という。すると、雅は反射的に「おやすみなさい」と応え通話を終わらせた。
「まったく。昔も今も、オレを振り回せるのは雅。お前だけだ。」
千寿はウイスキーの入ったグラスを傾けぽつりと呟く。その声音には愛おしさが滲み出ていた。なんて幸せな世界であろう。
「土曜が待ち遠しいな。」
そう言うと、残りのウイスキーを一気に飲み干し自身も眠りにつくのであった。
翌日、雅は学校へ登校すると、何故か注目の的になっていた。なんだなんだ?と思っていると、仲の良いクラスメイトがやってきて雅の肩をガシリと掴んだ。
「紅月!!...お前、天城ホールディングスに何しに行ったんだよ?!」
「え!何で知ってるの?!」
「お前が入って行くのを見てた奴がいるんだよ!」
まさか、見られているとは...。でも会社の中に入っただけで何でこんな騒ぎに?っそう思っているのが伝わったのか、クラスメイトは続けて言葉を発した。
「何でも、お前が出てくるのを待っていたらしいぜ?そんで、お前が高級車で乗って出てくるのを見たって。」
「...暇なの?」
「入学早々ファンクラブが出来てるからそいつ等だろ。」
「え...、何それ知らない...。」
雅は自分のあずかり知らぬところでとんでもない事が起きているのに言葉が出ないのであった。




