未来への希望
「もしよければ、今日ウチに来ますか?父が珍しく家にいるのですが...。」
「父親は普段家にいないのか?」
「はい。今日は僕の高校の入学式があったので。両親揃って参加したんです。」
千寿からすると願ってもみない申し出だった。いちはやく雅と結ばれたい。その気持ちが強いからだ。だが...。
「いきなり訪ねて迷惑ではないか?それに...」
「それに?なんです?」
千寿は急に気落ちしてしまっていた。そんな様子に雅も花香もどうしたことだろうか、と首を傾げた。
「兄さま?それに、なんですか?」
「...いきなり年上の成人男性が、息子さんを番にさせてくださいなんて言ったら反対されるだろう?」
なんとも気が早い男だ。と花香は思った。まずは交際を申し込むのが先であろう。花香は突っ込む気力も失せた。雅に目をやると...顔を真っ赤にしていた。
「まさか...雅様もですか?」
「えっ?!な、何が?」
「はぁ。...まったく。お2人とも。ようやく番になれるようになったのが嬉しいのは分かりますが、何事も順序というのがありますよ?」
2人揃って、「はい...」と返事をする。その様子に花香は"似た者同士だ"と感想を抱いた。まぁ、前世の悲恋を知っているからこそ、今世では2人で幸せになってほしいと願っている花香だ。
「まぁ、それはともかく。お2人とも、おめでとうございます。今世ではお2人の邪魔するものは何もありません。思う存分幸せになってください。」
「ありがとう。花香...さん?」
「ふふっ。花香でいいですよ雅様。」
あぁ、こんな風になる日が来るなんて...。思ってもみなかった幸福に花香は胸がいっぱいになる。
「そ、それじゃあ、両親に紹介したい人がいるって連絡してくるよ。...いいですか?千寿様。」
「あぁ、構わない。それと、"様"はよせ。もう時代が違うんだから。花香、お前もだ。」
「わ、分かりました...千寿、さん。」
...身長差故上目遣いになってしまった雅に、千寿は胸を押さえて、「オレの番が可愛すぎる!!」と天を仰いだ。厳密にいえばまだ番ではないのだが。雅は「それじゃあ電話してくるよ。」と言い廊下へと出て行った。
「...花香。もうオレは天に召されるのか?」
「…せっかく雅さんと再会できたのになんてことを言うんですか。番になるのでしょう?」
「もちろんだ!...地獄で逢おうと約束したと言うのに、神様はいたずら好きみたいだな。」
「違いますよ。神様はお2人に幸せになってほしくて生まれ変わらせてくれたのです。」
花香の言葉に千寿は、「神様も捨てたものではないな」と呟いた。しばらくすると電話を終えた雅が戻ってきた。その頬は紅潮していた。
「あ、あのね、両親が早く番に会わせなさいって...。」
...この親も気が早いようである。




