紅月 雅
桜舞う4月。紅月 雅は今日から高校生になる。アメリカ人でアルファの父親と近所では美人と評判のオメガの母に愛されながら、自身もオメガとして生きて来た。周りからはとても可愛がられながら育って来たがいつもどこか心にぽっかりと穴が開いたようだった。
「雅、忘れ物はない?」
「心配性だなぁ、母さんは。」
「だって今日は入学式よ?それに貴方、新入生代表のスピーチをするんでしょう?お母さんもお父さんと一緒に参加するからね。」
「なんだか恥ずかしいな...。それじゃいってきます。」
「いってらっしゃい。」
雅は学校へとつながる桜並木を歩いていた。すると、目の前にはヒートを起こしているオメガの女性が。雅は慌てて抑止剤を飲むと、女性に近づき声をかけた。
「大丈夫ですか?!抑制剤は?!」
女性は首を横に振った。
「僕のでよければ飲んでください!」
「あ、ありがとう...。」
この道に人がいなかったのが幸いだった。女性のフェロモンに当てられる様な人がいないからだ。抑制剤が効いてきたのだろう。しばらくすると女性は落ち着きを取り戻した。
「ありがとう。本当にありがとう。」
「いえ。何事もなくてよかったです。でも発情期が近くなくても抑制剤は持ち歩くようにしてくださいね?」
「えぇ。ごめんなさい。」
「それじゃあ、僕はこれで。」と言って去ろうとしたその時だった。女性が「待って!」と声をかけて来た。
「?どうかしましたか?」
「...お礼がしたいの。学校が終わってからでもいいわ。この名刺の所に来てください。」
「そんなお礼なんて...」
「お願い!」
女性がどうしてもと言うと、入学式の時間が迫ってきているのもあり、雅は「わ、分かりましたから!」と答えると、女性は安堵してその場を去って行った。雅も急がねばと学校へと向かった。結論からするとギリギリセーフで間に合った。教室へと入るとほとんどが中学からの持ち上がりだった為友人たちから「雅がギリギリなんて珍しいな」と言われる始末。そして、入学式が始まる為体育館へと移動する。そして、入学式が始まり、式は滞りなく進むと、次は新入生代表スピーチ。雅がステージへと上がると、周囲がざわめき立った。理由はわかる。この容姿であろう。父親譲りの金髪碧眼に母親似の顔立ち。昔からこの容姿で苦労したりしなかったり。そんな事を思いながらスピーチをし終えると、拍手喝采だった。雅はホッと一息つくとステージから降りる。
「紅月、やっぱり目立ったな(笑)これはまたファンクラブ出来るかな?」
「よしてよ...。もう中学の時みたいな思いはこりごり。」
「ハハッ。仕方ねぇって。紅月可愛いもんな(笑)」
同級生達から揶揄われながら雅は教室へと戻るのであった。




